そして洞窟へ
「ねぇねぇ、肩に乗っかってるのな~に?」
フーカちゃんが言った。
「竜のアデルよ」
そう言って私はアデルを見た。アデルは私の肩に乗るくらい体を小さくしていて、いつ
ものように無関心を貫いている。そんなアデルを見てフーカちゃんは言った。
「かわいい~。抱っこしていい?」
抱っこ? 嫌がるだろうな。しかし……。
「いいよ」
アデルは嫌そうな顔をした。やっぱり。しかし諦めてもらおう。小さい女の子の言うこ
とに私は逆らえないのだ。
私がアデルをフーカちゃんに渡すと、フーカちゃんはアデルを抱っこし、
「かわいい~」と言いながら頭を撫で始めた。頭を撫でられているアデルは何やらこち
らを睨んでいるが、私は見なかったことにした。
ユーリ君がルード君に言う。
「ところで、いつ行きます?」
「そうだな。そろそろ行くか」
三人はどこかに行く予定のようだ。
「どこかに行くの?」
ユーリ君が答えた。
「はい。これから妖怪退治に行くんです」
「妖怪退治?」
今度はルード君が答えた。
「そうさ。あれは三日前のことじゃった」
じゃった? まぁいいや。
ルード君の話によると三日前のこの時間、ここから更に森の奥へ進んだ所に小高い丘
がある。その麓辺りを散策していたルード君は怪しい人物を目撃した。その人物は麓の
所にある岩陰へ消えていったと言う。その岩陰をよく見てみると、そこには洞窟への小
さな入口があったそうだ。
ルード君は右手を握りながら言った。
「きっと妖怪の隠れ家に違いない」
しかし、カンヤさんが言う。
「それって坑道の作業員とかだったのでは?」
「そんな訳ないよ。だってその人赤色と黒色のドレスを着てて、長い銀髪の女の人
だったんだよ。あれはきっと妖怪に違いないよ。それになんか変な仮面してたし」
確かに、そんな所でそんな恰好をしている人は作業員ではないだろう。
本当に妖怪なら、そんな所に子どもを向かわせるのは危険だ。私は子どもたちに言っ
た。
「ちょっと危険じゃないかな。誰か大人の人に相談した方が……」
しかし、子どもたちはもうそこにはいなかった。
子どもたちは各々バッグを身に着け、小屋の入口にいた。
木刀をかざしたルード君が言う。
「よし! 行くぞお前たち!」
フーカちゃんとユーリ君は拳を上げる。
「おおーっ!」
そして、子どもたちは出て行った。しかもアデルを連れて。
カンヤさんが言う。
「どうしますか?」
「もちろん追いかけます」
子どもたちにはすぐに追いついた。
子どもたちに声をかけると、フーカちゃんが言う。
「ねぇねぇティアお姉ちゃん、このドラゴンさん喋ったの!」
アデルが喋った? いつもなら関わり合いにならないように、喋ったりしないのに……。
「アデルは神龍だから喋れるんだよ。それより危険だから帰らない?」
私がそう言うと、フーカちゃんが抱っこしているアデルが言った。
「よし! 行くぞお前ら!」
子どもたちは再び拳を上げる。
「おおーっ!!」
ええっ……。
カンヤさんが言う。
「……どうしますか?」
「……仕方がないです。付いて行きましょう……」
こうして私たちは謎の洞窟探索に向かうことになった。
子どもたちが歌うサニードリー少年魔導団のテーマを聴きながら森の中を暫く歩いて
いると、小高い丘が見えてきた。そのままルード君に付いて行くと、その麓の岩陰に大
人一人が通れそうな横穴が開いている。どうやら目的地に到着したようだ。
先頭を歩いていたルード君が後ろを振り返り、言う。
「とうちゃーく! よし皆、例の物を用意!」
「はーい!」
子どもたちは各々バックに手を入れ何かを取り出した。取り出したのは魔術石。あれは
淡黄蘗という色で、白に少し黄色を混ぜたような色だ。効果は魔力を流
すと、一定時間光る。よく街灯などに使われている物だ。
そして、ルード君が「行くぞ!」と言うと三人の子どもたちとアデルは洞窟の中へと
入って行った。
カンヤさんが言う。
「アデルさんがいるから大丈夫だと思いますけど……このまま行かせて大丈夫なんで
しょうか?」
「う~ん、大丈夫だと思うけど、本当に危険そうなら無理矢理にでも引き返そう」
「そうですね。分かりました」
そして、私とカンヤさんも子どもたちの後に続いて洞窟の中へ入って行った。




