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イザベラの尋問

 客間に行き、ソファーにロングコートを腰掛け、帽子を置くと、タイミングを

見計らったようにドアをノックする音が聞えた。

「はい」と返事をすると、クラリスさんが入って来た。

「おはようございます、セレスティア様」

「おはようございます」

「朝食をお持ちしました」

「あ……ありがとうございます」

 私が何時に起きるか分からないはずなのに、余りのタイミングの良さに少し驚いてし

まった。もしかしてクラリスさんは、何かしらの訓練を受けているのではないだろうか

というタイミングだ。例えば暗殺とか諜報的な……。

 クラリスさんがキョトンとした顔で言う。

「? どうかなさいましたか?」

「い……いえ、なんでもないです」

これ以上深入りすると、やられる! 私は考えるのをやめた。

 朝食はフレンチトーストが二枚、コーンスープ、サラダ。私がいつ起きるか分からな

いのに、スープは程よく温かい。

 クラリスさんが紅茶を淹れ、「それではごゆっくり」と下がり、朝食を頂こうとする

と、アデルが昨晩と同じく、フレンチトーストに食らい付いていた。しかしこれはいつ

ものことなので、気にしない。気にしたら負けだと思ってる。

 そして私は、先程思ったことをアデルに話してみると、アデルはこう言った。

「そんなわけないだろ」


 朝食を下げに来たクラリスさんによると、イザベラ・ヨーグの尋問は九時から始める

そうだ。時間になったら呼びに来てくれるそうなので、私はそれまで、客間でのんびり

過ごすことにした。

 ――やがて九時になり、クラリスさんに案内され、アデルと共に尋問室へ向かった。

 

 「こちらが尋問室になります。エルロア様とイザベラさんは、既に中にいらっしゃい

ます」

 クラリスさんに案内された尋問室は、普通のお城の一室だった。と言うのも、尋問室

と言うからには、石造りでジメジメした地下室をイメージしていたからだ。しかし案内

された部屋は、二階の端にある、私が泊まった客間より少し狭い位の、普通の部屋だっ

た。

 クラリスさんが部屋をノックする。

「セレスティア様をお連れしました」

 部屋の中から「どうぞ」と声が聞えたので、クラリスさんがドアを開け、中に入った。

 クラリスさんがそのままドアを支えてくれたので、私も中に入る。

 部屋の中は真ん中にテーブルがあり、その周りに椅子が幾つか置いてある。そしてそ

の椅子に二人の人物が座っていた。

 一人は、アークラード王国の第一部隊隊長、エルロアさん。もう一人は、魔道具屋の

店主、魔術師のイザベラさんだ。

 エルロアさんは奥の方に座り、イザベラさんはテーブルを挟み、その対面に座ってい

た。

 エルロアさんが私に言う。

「おはよう。早速だが、こちらに座ってくれ」

エルロアさんはそう言って、自分の隣の椅子を引いた。私は「はい」と返事をして、指

定された椅子に座った。

 クラリスさんは「失礼します」と、部屋を出て行った。エルロアさんはそれを確認す

ると、「では始めよう」と言い、尋問が始まった。

 「まずは事実確認だが、私の部下が一昨日、貴女の店から召喚石を持った人物が出て

くるのを目撃したそうだ。間違いないか?」

若干緊張した面持ちのイザベラさんが、「はい」と返事をする。エルロアさんは続ける。

「魔道具屋にあった紫色の召喚石は、我が王国では所有することを禁止していることは

知っているか?」

 召喚石には主に三種類あり、精霊や妖精など人間に友好的な者が封印せれている場合

は、黄色。悪魔や魔物など、人間に危害を加える生物は紫色。それ以外の、中立の者は

青色の光を放つ。つまり安全性の問題で、一部の青色の召喚石と紫色の召喚石全般は、

売買や取引を禁止している国が多いのだ。そしてここ、アークラード王国でもそれは例

外ではない。

 それを聞いて、イザベラさんの目線が下がる。

「……はい」

「では、何でそんな物が店にあった? 何処で手に入れた?」

 エルロアさんは淡々と聞く。イザベラさんは冷や汗を浮かべ始めた。

「一週間程前、とある方に頼まれまして……。『召喚石を用意しろ。出来なければ、分

かっているな?』と、一万枚の金貨を渡されてました。その四日後、行商人と名乗る、

ハンズという方から召喚石を二つ、譲って頂きました……」

「とある方? 誰のことだ?」

「それを言ったら、私、こ、こ、殺されます」

 イザベラさんは少し怯えた表情になる。

 イザベラさんは脅されたと言っていた。おそらく、その『とある方』に脅されたのだ

ろう。その『とある方』は、何の為に召喚石を手に入れたのだろうか? そして、『と

ある方』とは、誰のことなのだろうか。しかし、昨日アークラード王国に着いたばかり

の私には、全く見当もつかない。

 エルロアさんの方を見ると「うむ……」と少し考え、言う。

「言えないということはおそらくそれなりに階級の高い貴族の誰かだろう……。して、

その召喚石は今何処に?」

 両手の人差し指をツンツンしている、イザベラさんが答える。

「ひとつは昨日割れたので、もうひとつは一昨日、黒いロングコートのフードを目深に

被った男が持って行きました」

「黒いロングコートの男?」

「……はい」

 エルロアは顎に手を当て、再び何かを考えている。

 今までのイザベラさんの話をまとめると、一週間程前、『とある方』から召喚石を二

つ用意しろと、大金を渡された。そしてその召喚石は、四日後に行商人のハンズと言う

方から買った。召喚石のひとつは、黒いフードを被った男が持って行った。

 そこで、ひとつ疑問が生まれた。

「あれ? 何で二つ渡さなかったんですか?」

私の疑問にイザベラさんが答える。

「『そっちの、大きいのだけでいい』と言われて……。実は私、召喚石には余り詳しく

なくて……」

「え? あれよりも大きいのですか?」

「不味かったですか?」

イザベラは、キョトンとした表情をした。私は説明した。

「魔道具屋にあった召喚石よりも大きいのだと、多分上級召喚石で、上級の悪魔や魔物

を召喚できます。討伐するなら、魔法師が最低でも三人はいないと討伐できませんよ」

 イザベラの顔が青ざめていく。エルロアも深刻そうな顔で言った。

「魔法師一人の戦闘力は、一個師団相当に匹敵するという。と言うことは……軍隊が

必要になるな……」

 尋問室の空気が、一気に重くなった。

 これはいち早く召喚石の在処を突き止めなければいけないようだ。それと私は、上級

召喚石についても対策を考えることにした。

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