サニードリー少年魔導団
あれから一週間後。エドワードさんの裁判は終わり、後は警備隊の方から連絡を待つ
だけになった。
エドワードさんは執行猶予がついた。理由はハンズ・ブランクの情報を提供したこと
で司法取引が成立したためだ。
ティアラちゃんは呪いが解け、今は元気にしている。後一週間もすれば退院できるだ
ろう。
ガルターブさんは私がサニードリーから動けないので、先行してハンズ・ブランクの
後を追って、ベネオスへ向かった。
色々あったが、明日か明後日にはここを出発することができるだろう。しかし、私に
はひとつ気掛かりなことがあった。それはカンヤさんのことだ。
カンヤさんの体調はすっかり回復したのだが、ここ最近外に出ず、毎日本の虫になっ
ている。指名手配中だから仕方がないのだが、最近は外をジッと眺めていることが多い。
そこで私はカンヤさんを外へ連れ出すことにした。
サニードリーから南東の森、そこはサニードリーに住む人達が狩りや薬草を摘む
スポットにしているという情報を掴んだ私は、そこへカンヤさんと向かうことにした。
町の外なら警備隊の視線を気にする必要はないし、狩りや薬草摘みをしている所なら危
険も少ないだろう。
カンヤさんには目立たないようにフード付きの黒いローブを着せ、アデルと共に箒に
乗ってその森へ。森の入口で箒を降りた。
森の中は木々の香りがし、穏やかで、所々木漏れ日が差し込んでいる。
カンヤさん伸びをしながら言った。
「空気が美味しくて、いい所ですね」
私は「うん」と返事をしながら森の先を見た。私達が今立っている所の地面は草が剥が
れていて、土が見えている状態になっている。そしてそれは森の奥へと続いている。ど
うやら人が頻繁にこの森を出入りしているのは間違いないようだ。
私はカンヤさんに「奥に行ってみよう」と提案した。すると、カンヤさんから
「はい」と返事が返ってきた。その表情は笑顔で久々の外出だからか、どこか楽しそう
に見えた。
私とカンヤさんは森の奥目指して歩き出す。しかし気をつけなければならない。森の
中ではどこに危険が潜んでいるか分からないのだから。例えばあそこの木の陰から急に
魔物が……いや、あれは魔物ではなく……子ども?
足を止め、草が剥がれて道になっている方向ではなく、左の森の奥へ走って行く子ど
もを見ていた私は右側を歩いていたカンヤさんに声を掛けられた。
「どうしたんですか?」
私は子どもが走り去った方向を指差し、答えた。
「今、子どもが向こうに走って行ったんだけど……多分、男の子」
「男の子ですか……迷子でしょうか?」
その可能性もある。それにさっきの子が魔物と遭遇すると危険だ。
私はカンヤさんに言った。
「追いかけてみよう」
男の子を追い暫く森の中を歩いていると、小さな小屋を見つけた。見た目は古くあち
らこちら傷んでいるが、小屋としての機能はまだ残っているようだ。
カンヤさんが言う。
「小屋……ですか。なぜこんな所に?」
「多分休憩用や緊急時の避難用に建てたんだと思う。取り敢えず中を確認してみよう」
私とカンヤさんは小屋のドアに近付き、そっとドアを開けた。すると急に私の目の前
に木刀が急接近して来た。私は咄嗟に白刃取りをした。急なことでビックリしたが、木
刀は私の手に挟まり止まった。どうやら成功したようだ。
白刃取りをすると声が聞えてきた。声の主は木刀を持ち、私に振り下ろしてきた少年
だ。
「モンスターめ! 俺の後を付けて来やがった……あれ?」
どうやら魔物が来たと勘違いしているようだ。
「こんにちは……取り敢えず木刀をしまってくれると助かるんですが……」
私がそう言うと、目の前の少年の後方からもう二人、小さな女の子と男の子が出て来た。
女の子が言う。
「どうしたの? モンスターじゃないの?」
少年が答える。
「……違ったみたい……」
三人の子どもたちに招待され、私とカンヤさんは小屋の中へ入った。
六畳くらいの小屋の真ん中に丸テーブルが置いてあり、その周りに椅子が置いてあっ
た。私とカンヤさんはその丸テーブルの所に置いてある椅子に座るように勧められた。
小屋の中を見渡すと、人形やおもちゃも置いてある。ということは……。
「もしかして、ここを秘密基地にしているの?」
木刀を持っていた少年は、木刀を壁に立てかけながら言った。
「うん、そうだよ」
なるほど、どうやらこの子たちはこの小屋を遊び場にしているようだ。
まずは自己紹介をしておこう。
「私はセレスティア。ティアって呼んでね。こちらはお友達のカンヤさん。三人ともお
名前訊いてもいい?」
木刀を持っていた赤髪で活発そうな少年が答えた。
「俺はルード」
次に金髪でボブヘアの女の子。
「私はフーカ」
最後に眼鏡を掛けた男の子が言った。
「僕はユーリ」
「皆いくつ?」
ルード君が答える。
「俺とユーリは八歳。フーカは七歳だ」
「そうなんだ。普段どんなことして遊んでるの?」
するとルード君は人差し指を振った。
「チッチッチッ……遊び? いや違う。俺たちはサニードリーを守る正義の味方。その
名も、『サニードリー少年魔導団』だ! どーん!」
カンヤさんが私に耳打ちした。
「自分で効果音入れましたね」
「うん。きっと言いたかったんだよ」
これが私と『サニードリー少年魔導団』との出会いだった。どーん!




