呪われた娘
受付のおじさんが書いてくれたメモによると、場所はサニードリー中央病院。私は今、
その病院の前に立っていた。
病院は二階建てで、白レンガで建てられている。
入口のドアを開けると広い空間になっていて、そこには待合用の椅子が並んでいる。
そして、左手側には受付があった。
受付とその奥には白衣を着た看護婦さん達が机に向かって何やら作業をしているのが
見える。
私は受付へ向かい、看護婦さんに話し掛けた。
「すいません、ティアラ・ロドン・メイソン・ゴトリートさんの病室はどちらでしょう
か」
看護婦さんは資料的な紙と睨めっこしていたが、私の声で顔を上げ、答えてくれた。
「それなら二階に上がって左手側の通路真っ直ぐ行った、突き当りの部屋です」
看護婦さんはそう言うと再び睨みっこに戻った。私は「ありがとうございます」とお礼
を言い、受付右手側にある階段を上った。
階段を上り、左手側へ。突き当りの右手側にある部屋のドアの横に名前が書いてある。
どうやらここで間違いないようだ。
部屋をノックして「お邪魔します」と言うと、中から女性の声で「はーい」と聞えた。
私はドアハンドルを掴み、開けた。
ドアを開けるとそこには小さな女の子がベッドに座っていた。髪は長い黒髪で、体は
不健康そうなくらいに痩せている。それと痣のような模様が見えた。
その女の子はこちらを不思議そうな顔で見る。まぁ、知らない人が急に訪ねて来たの
だから、そりゃそうか。
というわけで、私は室内に入り、自己紹介をした。
「こんにちは。私はセレスティアよ。あなたのお父さんから頼まれて来たの」
「お父さんに?」
「そう。はいこれ」
私はそう言って、手に持っていた箱を渡した。中は病院に来る直前、お見舞いの品とし
て買ったシュークリーム五個入りとなっている。
私はベッド横の椅子に座り、箱を開けてシュークリームを彼女に「どうぞ」と手渡し
た。彼女はそれを受け取り、シュークリームをまじまじと見ている。今にも涎が垂れそ
うだ。
「い、いただきます……」
彼女はそれを口にした。一口食べると彼女は「おいしいです」と言い、あっという間に
シュークリームひとつを食べて切ってしまった。これが甘味の魔力というやつか。
私は「まだあるから食べていいよ」と、シュークリーム入りの箱を渡した。彼女はそ
れを膝に置き、新しいシュークリームに手を付けた。
私は改めて彼女を見た。体は痩せ細り、頬はこけている。暫くまともな食事をしてい
ないのだろう。病院食も食べていないのだろうか?
そして体には痣のようなものが見える。しかしこれはケガなどではない。おそらくこ
の痣は呪いの類のものだろう。
私はちょっと探りを入れてみることにした。
「ティアラちゃんはお父さんのこと好き?」
「うん、大好き」
「どんなところが好き?」
「そうだな~……アドルフお父さんは力持ちで~、ハンフリーお父さんは器用で~、エ
ドワードお父さんは優しところ」
「そんなんだ」
どうやら本当に四人で暮らしいるらしい。しかしこの子はどこから? 三人の中の誰
かの子?
もうちょっと探りを入れてみよう。
「お父さん達はよくお見舞いに来る?」
「うん。でもお仕事が忙しいみたいだから、すぐ帰っちゃうけど……」
彼女はそこまで言うと、少し落ち込んだ様子で言う。
「お父さん達は気にしないでいいって言うんだけど……。
私の体がもっと丈夫だったらお父さん達にも迷惑かけなくて済むのに……。全然力入ん
ないし、食欲もあんまりないんだ……あ、でもシュークリームは食べれたね。フフッ」
彼女はそう言って笑った。私も一緒に笑う。
しかしその直後、彼女の持っていたシュークリームはベッドの上に落ち、彼女は倒れ
てしまった。
「……痛い……苦しいよ……」
「ティアラちゃん大丈夫!?」
彼女の体の痣が紫色に光っている。これは間違いなく呪いによるものだ。
「待ってて、今お医者さん呼んでくるから!」
私は慌てて病室を飛び出した。
病室の前で待っていると、ティアラちゃんの病室からお医者さんと看護婦さんが出て
来た。
「なんとか落ち着きました。今は眠っています」
「そうですか、良かった……。あの、ひとつ訊きたいのですが、彼女のあの呪いは何が
原因なんでしょうか?」
「あれはカースウルフが原因でしょう。彼女は元々捨て子で、ここから西の森で拾われ
たそうです。今は森ごと燃やされ駆逐されたそうですが、カースウルフに噛まれ、呪い
を受けた者の解呪手段がなく……」
「そうですか……」
「……ところであなたは魔女ですよね? マナを物理的に体へ取り入れる方法に心当た
りありませんか? それさえできれば解呪できるのですが……」
マナを体に取り入れる方法? そんな方法聞いたことも……ある。




