三人の被疑者
アルクさんと一緒に警備隊本部へ。
警備隊本部へ向かいながら聞いたアルクさんの話によれば、私が事情聴取をしている
時に別の警備隊によって現場周辺の聞き取り調査があったらしい。その結果、魔人狼に
よって全壊した建物はお金を貸して不当な利息を吹っ掛ける、所謂闇金業者だったらし
い。その人達は警備隊によって捕まったんだけど、彼らが言うには誰も犯人の顔を見て
いないらしい。なぜなら、犯人の顔を見たと思われる人物は全員重症で、現在は面会す
らできない状態だからだらしい。しかし、警備隊は聞き込み調査と私の証言を基に犯人
を三人まで絞り込んだ。つまり、私に三人の顔を見てもらい、見覚えがないか確認して
ほしい、ということらしい。
警備隊本部に着き、取調室へ。
アルクさんはドアを開けて「どうぞ」と私を招き入れた。
室内の構造は昨日の取り調べ室とほぼ同じだが、広さはこちらの方が少し広い。その部
屋の奥に三つの椅子が置かれていて、そこに三人の男性が座っていた。
左から顎鬚を生やした三十代くらいの人。もう一人は髪がボサボサの同じく三十代く
らいの人。もう一人は痩せこけた顔をした二十代くらいの人だ。ちなみにもう二人、人
が居る。一人は昨日の金髪のお姉さん。もう一人は顎鬚を生やし、髪をオールバックに
した屈強そうな男性。どちらも警備隊の方となっている。
アルクさんが椅子を引き「こちらへどうぞ」としてくれたので、遠慮なく座った。
私が椅子に座りアルクさんが椅子に座ると、顎鬚を生やした警備隊の人が
「それじゃあ始めるぞ」と言った。
「まず、三人共名前を言え。左からだ」
顎鬚を生やした三十代くらいの人が言った。
「あ……はい。アドルフ・ロドンです」
次は髪がボサボサの同じく三十代くらいの人。
「ハンフリー・メイソンです」
最後に痩せこけた顔をした二十代くらいの人だ。
「……エドワード・ゴトリートです」
三人が名前を言っている時、アルクさんは私に小声で言う。
「どうです? 見覚えとかありますか?」
私も小声で返す。
「う~ん……残念ながら……」
「そうですか……何か思い出したら言ってください」
「分かりました」
三人が名前を言い終わると、再び顎鬚を生やした警備隊の人が言う。
「で、誰がやったんだ?」
彼はストレートに言った。対面に座る三人は、「私じゃないです」とか「自分はやって
いない」と返している。
私はアルクさんに小声で訊いた。
「あの屈強そうな方は?」
「あの人はうちの副隊長です。名前はエドガー・ロックウェル」
私がその名前を訊いた瞬間、机を激しく叩く音が聞こえ、私とアルクさんは驚き、そ
ちらを見た。
そちらを見ると、今名前を訊いたばかりのエドガーさんが怒声を上げる。
「そんなわけねーだろうが! 誰がやったか言わねーと、首の骨折っちまうぞッ!」
あ……この人脳筋だ。
アルクさんが宥める様に言う。
「まぁまぁ副隊長、落ち着いてください」
エドガーさんは舌打ちをし、乱暴に座った。
アルクさんが言う。
「では、犯行当時のアリバイを訊かせてもらえますか?」
アドルフさんは仕事、ハンフリーさんも仕事と答えた。しかしエドワードさんは……。
「その時間は自宅にいました……」
それを聞いたエドガーさんが立ち上がる。
「テメーか! テメーがやったんだな!」
「ち、違います! 自宅で片づけしていただけです! なんでそれだけで犯人なんです
か!」
アルクさんが再び宥める。この人達はいつもこんな感じなんだろうか。
その後も色々『アルクさんが質問してはエドガーさんが怒声を上げる』の繰り返し
だった。そして被疑者の三人は曖昧な回答や時々沈黙したりしていた。
そして私が気になったのは、三人が三人共何か焦っているというか、落ち着きがない
雰囲気だったことだ。おそらく三人共何かを知っていて、何かを隠しているのだろう。
結局その時は何も分からず、解散ということになった。しかし、私はホテルへ戻らず、
帰る前に魔人狼に会う前に立ち寄った方のホテルへ向かった。
ホテルに到着し闇金達がいた建物の方を見ると、その建物は今はなく、何人かの警備
隊と作業員らしき人が見えた。おそらく解体作業をしているのだろう。
ホテルの中に入ると、前にも会った小太りで髭の生えたおじさんが受付の椅子に
座って新聞を読んでいた。
もう来る気はなかったんだけどな~、とか思いつつ、私は受付のおじさんに話し掛け
た。
「こんにちは。ちょっと訊きたいことがあるんですが~」
おじさんは新聞紙から顔を上げ、私を確認すると再び新聞紙に目を落とした。
「……あんたか……なんの用だ?」
「昨日の事件で捕まった人、知ってます?」
「ああ、知ってるよ」
「その方達のことで知っていることを詳しく教えてくれませんか?」
私がそう言うと、おじさんは新聞紙を置いた。
「俺も詳しくは知らねーが、あの三人は同じ家で暮らしてんだよ」
「三人でですか?」
「いや、正確には四人だ」
「四人? もう一人は……」
私がそこまで言うと、おじさんは右手を差し出してきた。ここからは有料らしい。
私はショルダーバッグから小銭入れを取り出し、銀貨一枚を差し出した。おじさんは
「毎度」と言って、それを受け取った。今度こそもう来ません。
「娘だ。だが入院してる」
「どこの病院ですか?」
「ちょっと待て」
おじさんはそう言うと、受付の備え付けの紙に病院名と名前、簡単な地図を書いてくれ
た。
「ほら、ここに行ってみな」
「ありがとう、おじさん」
私は早速その病院に行ってみることにした。




