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爆弾の在処

 私達がいる車両は重苦しい空気に包まれてた。

 『赤き星』と名乗った盗賊団は前の車両の出入口にひとり、後ろの車両の出入口にひ

とり、この車両にいる我々を外に出さないように見張っている。どうやらゼールズさん

の言う通り、この魔導列車は盗賊団にトレインジャックされてしまったらしい。

 先程まで盗賊団の二人は、乗客の中から金になりそうな物を持っている人から金品を

奪っていた。ちなみに私も財布を取られた。さて、どうしたものか……。

 「セレスティアチャン……セレスティアチャン……」

右方向から私を呼ぶ声が聞こえてくる。そちらを見ると、ゼールズさんが小さく手招き

していた。私は聞き耳を立てる。

「ワタシガシカケタラ、モウカタホウヲムリョクカシテホシイノデスガ……

デキマスカ?」

私も小声で返す。

「……やってみます」

 私は前の席の後部に掛けてあったステッキを手に取った。しかしその時。

「もしかしてえええぇぇぇぇ!!! 不意打ちですかあああぁぁぁぁ!!!」

うるさっ! 私は再び両耳を両手で塞いだ。

 前側に立っていた盗賊団の人が銃口をロドリゲスさんに向けた。

「そこのクソジジイ! 何を騒いでやがる! 撃ち殺されたいのか!!」

ロドリゲスさんはバネの様に立ち上がる。

「も……申し訳ございません……!」

「チッ!」

ロドリゲスさんは座り、「はぁ……」とため息をついた。

こうして私とゼールズさんの奇襲作戦は失敗に終わったのである。しかしロドリゲスさ

ん……明らかに怪しい……。

 私は少し冷静になって状況を整理してみることにした。


 私達が乗車した魔導列車は盗賊団『赤き星』にトレインジャックされた。そして私達

のいる車両には、二人の盗賊団の人が監視をしている。

 ここは冷静になって状況を整理してみよう。

 まず盗賊団『赤き星』の二人はフード付きのマントを着、マントの中は普通の服装だ

が、更にその上にポケットが付いた皮のベストを着ている。そして手には魔術銃を持っ

ている。その魔術銃の銃身は私が使っているものよりも長い。

 長い理由はいくつかあるが、彼らの場合はおそらく魔導宝石が付いているカスタム

パーツを銃口に付けているためだろう。そんな物が付いた魔術銃を食らったら、無事で

は済まないだろう。

 それと「爆弾がバーン!」とか言っていたのを忘れてはいけない。ブラフの可能性も

あるが、本当に爆弾が仕掛けてあると思って動いた方がいいだろう。

 ここまでが現在の状態である。人質を取られている以上下手な事はできない。慎重で

迅速な判断と行動が要求される。

 そして関係あるかないかに関わらず、妙だなと思った所もまとめてみよう。

 まずはロドリゲスさんだ。乗り場では後ろの車両の5番の乗り場に並んでいたのと、

その時持っていたアタッシュケースを今は持っていないことが気になる。今は肩から下

げるバッグしか持っていない。

 次にフード付きの長いマントを着た盗賊団と思われる人物が四人、後ろの車両から前

の車両に向かって歩いて行ったことだ。

 あんなに目立つ格好の人がいたら待合室で目に留まりそうなものだが、いったい何処

から侵入したのだろうか。単純に私が見逃した可能性も否定できないが……。

 それとここは四号車。前の車両に向かったのは四人。その内二人はこの車両にいる。

そうなると前側の三両を制圧しているのはたった二人ということになる。というかなぜ

この車両の見張りに二人を置く必要があるのだろうか。普通に考えたら一車両ごとにひ

とりじゃないの? と思ってしまう。何か理由があるのだろうか……。

 ……そういえばこの魔導列車の八号車は貨物車で、荷物の運搬をしているんだっけ。

荷物……荷物ね……。少し何かが見えてきた。

 盗賊団はおそらく積み込まれた荷物の中に紛れて侵入したのだろう。その後操縦席が

ある一号車を四人で制圧。制圧後に二人は四号車へ来たのだろう。

 そして爆弾の在処だが、爆弾を持っている人物は盗賊団が潜伏している荷物を魔導列

車に積んだ後、五号車に乗車。五号車は確かグリーン車両で普通よりも大きな一人用の

座席があり、その周りはカーテンで仕切られている。つまりその座席を予約し爆弾が

入ったアタッシュケースを置いてその場を離れても、一切疑われない訳だ。そしてそれ

を実行した人物はひとりしか考えられないし、もしそうだとするとなぜこの車両だけ二

人も見張りが付いているかの説明がつく。

 まぁ確たる証拠はないが、それは全て本人に訊けば解ることである。

「……あのロドリゲスさん」

私は小声で話し掛けた。ロドリゲスさんも「はい?」と小声で返す。

「商品の買い付けをしているって言ってましたよね?」

「え、ええ……?」

「じゃあ人が入った大きな荷物の運搬を頼んでも疑われませんよね? 本当に買い付け

業者かは別として」

「な……なんの話かな?」

……ニヤリッ。

「魔導列車に乗り込む時、五車両目の所に並んでいるのをたまたまお見掛けしたのです

が、なぜ五車両目に?」

「ま、間違えたのだよ」

「その時持っていたアタッシュケースは何処にやったのでしょうか?」

「……!」

「五号車両ってグリーン車両ですよね? まさかそこに置いてきたとか……」

ロドリゲスさんの顔が引きつり、声にならない悲鳴を上げるのが見えた。

 また大声で叫ばれ仲間に連絡されないように私はロングコートの内側の魔術銃を握り、

そのままコート越しに銃口を彼の腰に押し付けた。

「大声を出すとバーンしますよ?」

「クッ……!」

 ロドリゲスさんの額は汗で濡れ始めた。

「か、金なら出す。ここは見逃してもらえないかね……」

私はロドリゲスさんと小声で話ながら、魔術銃にマガジンを入れる。

「いえ結構です。それよりもひとつ頼まれてくれません?」

「な、何かね……?」

「まず爆弾なんですが、時限式ですか?」

「ああ……」

「遠隔操作はできますか?」

「いや、それはできない……」

それなら私が離れても爆弾が爆発することはないだろう。実に好都合だ。

「では先程みたく大声で『五号車両に忘れ物をした』と」

「……わ……分かった……」

 そして私は最後にゼールズさんに目配せをした。会話は聞えてないと思うが何かして

いるのは感じていたらしく、小さく会釈してくれた。

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