魔導列車での再会
自室に戻ってホッと一息。そんな私にアデルが言う。
「なんだったんだアイツら。まさか裏社会の奴らじゃないだろうな?」
「……そうかも」
私はソファーに腰を落としながら言った。
商いをしていると言っていたが裏の顔を持っていそうな、そんな雰囲気だった。
黒いスーツの男性は最終的に八人確認できた。その誰もがサングラスを掛け、怖そう
な面構えをしていた。おそらくひとりくらいは殺ったことがある。
そしてそのボスだが、左目の傷を見るに何人かは殺っているだろう。そして裏取引で
至福を肥やしているのだろう。恐ろしや恐ろしや……。
ここまで言っておいてなんだが、あくまでも私のイメージでフィクションである。実
在の人物、団体とは一切関係ありません。
そしてこのアタッシュケース。中には何が入っているのやら……。粉なのか? 白い
粉なのかもしかして?
……ん?
「何だろうこのマーク……」
私はアタッシュケースを改めて見て気が付いた。アタッシュケースの側面の中央に五芒
星に竜のマークが入っている。このマーク……。
「何処かで見たことあるような……アデル知らない?」
「いや、全く記憶にない」
「そう……」
んー……駄目だ。さっぱり思い出せない。
私がうんうん唸っていると、アデルが言う。
「そんな事よりいいのか? チェックアウトの時間」
「はっ! そうだった」
時間を見ると午前九時半。チェックアウトは十時だ。外に出る支度をしなければ。
急いで支度をする。魔女帽子を被り、ロングコートを着て、ショルダーバックを肩に
掛ける。
そこでアデルが言った。
「魔導列車の発車時刻は十時五十分か。ここからだと十分間に合う距離だが、宝石の換
金は無理そうだな」
そう、今日は隠れ里でいただいた宝石類を換金できる所を探す予定だった。しかし換
金所を探していると魔導列車の発車時刻には間に合いそうにない。
「別に今すぐ換金しないといけない程お金に困っている訳ではないから大丈夫よ。それ
よりも折角魔導列車の切符を頂いたんだし、乗ってみたいじゃない?」
「それもそうだな」
それに換金所はサニードリーにもあるかもしれない。だから今は保留にしておこう。
チェックアウトを済ませるついでに受付の人から抜け道を教えて貰った。ホテルに来
る時は三十分程掛かかった道のりが、僅か十分程度で町中に戻ることができた。そのま
ま私達は駅へ向かう。駅は中央の噴水広場から西に向かった先にあった。
駅前には馬車が止まりサニードリーへ向かう人を降ろしたり、サニードリーから来た
人達を待っていた。
駅はレンガ造りで正面に入口がある。そしてそれとは別の大きな入口があり、そこに
は荷台が出入りしている。大きな荷物を運ぶための入口なのだろう。
駅の中に入ると待合室になっていて、置かれている椅子には空きがなく、残りの者は
壁にもたれ掛かっているのが見える。
駅に入って左奥には売店が見え、そこにも人がひしめきあっていた。右側には『通行
止め』と書かれた看板が置いてあり、さらに柵が置かれている。柵を越えた先には先程
大きな入口へ入って行った荷台が見えた。
私は他の人達に倣い、邪魔にならない様に壁際で待つことにした。
耳元から声がする。もちろんアデルだ。
「切符はなくしていないだろうな?」
「私は別にドジっ子じゃないよ」
私はコートのポケットから切符を取り出した。……念のため切符の内容を確認しておこう。
そこには『指定席 4番 E―2』と書かれていた。
腕時計を見ると発車時刻までまだ時間があるので、壁の張り紙でも観ることにした。
張り紙によると、これから乗る魔導列車は一号車が操縦席や魔法石がある魔導機関車。
二号車から四号車が指定席。五号車はグリーン席。六号車と七号車は自由席。八号車は
貨物車と書いてある。
グリーン車両の席は普通の席よりも幅広くゆったりしていて、その周りはカーテンで
仕切られている。グリーン車というよりVIP席みたいな感じだ。ただその分値段も高
い。
乗り場の床には何号車か番号が書かれているので、それを目安に並べばいいらしい。
まぁそこはロンドベルトで慣れている。
それとサニードリーから首都ロマリオ行きの魔導列車が建築中、だそうだ。
張り紙の目ぼしい所を見終わり、違う張り紙に目を移す。するとそこには……。
「これ、エルロアさんだよね?」
「そうだな。しかしこの張り紙……」
張り紙に魔術で複製されている張り紙には『兵士募集』と『志を同じくする者よ、来た
れ!』と書かれているのだが、肝心の映し出されているエルロアさんの顔は悪戯書きさ
れている。私とアデルはその何とも言えない表情に改変されたエルロアさんを観て、頬
がゆるんでしまった。
ちなみに撮影や複写などは茶色の魔石でできる。
――暫く待っていると正面の駅員達がいる駅務室から駅員が出て来て、
「改札しまーす!」と言った。それに合わせて待合室の人達がゾロゾロと改札に並び始
める。私もそれに倣い列に並んだ。
やがて私の番になり、切符に改札鋏で切込みを入れてもらった。そのまま真っ直ぐ前
に進み、列車乗り場へ出る。
乗り場では切符を見て並んでいる人と、切符を見ずに後方へ向かう人が見えた。そし
て乗り場の地面には番号が書いている所がある。おそらく指定席の番号を見ているのだ
ろう。後方へ向かう人達は自由席なので、番号を確認する必要がないのだ。
私は4番なので、張り紙で倣った通りに『4番』と書かれている所の列に並んだ。
なんとなく辺りを見渡してみると、ひとりの人物が目に留まった。その人物は隣の5
番の列に並んでいる四十代くらいの男性で、ブラウンのスーツとシルクハット、それと
ブラウンのロングコートを着ているブラウンまみれの人物だ。そして一番気になったの
は、私と同じくアタッシュケースを持っていたことだ。
特におかしな所はないのだがなんだろう……何かが気になる……。
私が思案していると、鉄巨人が関節を鳴らす音が聞こえる。どうやら列車が来たよう
だ。




