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アプワンボッズ

 レストラン『プラムーゲート』のウェイトレスのお姉さんが描いた地図を頼りに、ホ

テルをへ向かう。

 一度カイラニオの外へ出て海岸の方へ向かって歩いて行くと、小高い山へ上がる階段

があった。

 足元は石畳になっていて左右に柱が立っている。それと階段のすぐ右側に看板が設置

してあった。

「ホテル アプワンボッズ……どういう意味?」

「流石に分からん」

 ウェイトレスのお姉さんが描いた地図を見ると同じホテルの名前が書かれていたので、

ここで間違いないだろう。取り敢えず階段を上ってみることにした。

 階段を上る途中アデルが言う。

「しかしこんな所にあるホテルとか大丈夫なのか?」

確かにここはカイラニオの郊外で一応道筋はあったが、森の中を歩いたり小さな橋を

渡ったりもした。普通に考えたらこんな所にホテルがあるとは思うまい。だが、だから

こその穴場スポットなのだ。

 ――階段を上り切るとまた左右に柱が立っていた。そしてその奥、真ん中の通路の

左右に噴水が設置されていて、噴水の通路側にはベンチが置かれている。その奥にホテ

ルがあった。

 ホテルは三階建てで横に広く、外壁は白い。正直雰囲気自体は悪くない。

 アデルもどうやら私と同じ感想を持った様だ。

「うむ、なかなか悪くない。しかし中はどうかな」

 ――通路を進みホテルの中のロビー入ると、正面に受付と階段があった。右側にはラ

ウンジも兼ねた結構な大きさのレストランが見え、左側にはお土産やタオルなどの雑貨

が売られている。

 床は赤い絨毯が引かれていて装飾なども煌びやか物が多い。それと港町だからか、魚

拓や魚の化石なんかも飾られている。

 アデルが何やら恐る恐る私に話掛けてきた。

「おい……ここもしかして……結構高いんじゃないのか?」

中に入って私も気付いた。ここ、結構いい所な気がする……。

「……まだ分かんないよ。値段は以外とリーズナブルかもしれないし……」

それに高くても、一泊くらいなら……。

 私は唾を飲み受付にゆっくりと近付く。すると受付の女性が笑顔で

「いらっしゃいませー」と声を掛けてきた。受付嬢は紺色のスーツを着ていて、長くて

黒い髪を後ろでまとめている。

 取り敢えず一泊いくらか訊いて、ヤバかったら退散しよう……。

「すいませーん……一泊したいのですがー……」

「はい、一泊ですね。旅人の方ですか?」

「は……はい……」

「それではこちらにお名前の記入をお願いします」

「あ……あの……宿泊費の方はおいくらに……」

「プランにもよりますが、食事抜きでレストランで済ませるのでしたら、一番安いお部

屋で金貨一枚から宿泊できますよ」

「そ、そうなんですね。それじゃあそれでお願いします」

私とアデルは胸を撫で下ろした。いや、まだだ。

「ちなみにペットは……」

「大丈夫ですよ」

どうやら問題なさそうだ。


 案内された部屋はとても綺麗で、一番安い部屋とは思えない程だった。

 部屋に入るとソファーとテーブルが置かれていて、奥はバルコニーになっている。そ

して左奥の部屋にはベッドが置かれている。ちなみに部屋はシングルのはずなのだが、

どう見てもダブルベッドにしか見えない……。

 入って右側の部屋はバスルームになっていて、バスルームの外側はガラス張りになっ

ていた。

 そして私は『プラムーゲート』のウェイトレスさんにこのホテルをお勧めされた時に、

「ホテルの奥、町側の方の部屋を選んで下さいねー」と言われたのだが、バルコニーと

バスルームから外を観ると、その理由がよく分かった。

「いい景色! カイラニオの町が一望できるよ!」

私がそう言うと、アデルも外を観る。

「なるほど、これがお勧めの理由か。こんな所に建っていても潰れない訳だ。まさに穴

場スポットだな。……おっ、あれは魔導列車の駅か」

「ホントだ。ここにもあるんだね」

 魔導列車はロンドベルト帝国で見たことがあった。それは荷物を纏めて運んだり、人

を乗せて運ぶ為に造られた、魔石の力を借りて走る機関車のことだ。

 私達は暫くその景色を楽しんだ。港を出入りする船や街を行き交う人々。レンガで建

てられた建造物。その奥に建てられた灯台。その全てをここから観ることができた。プ

ラムーゲートは……流石に観えなかった。


 カイラニオの景色を眺めながらお部屋でダラダラしていたら、いつの間にか夕方に

なっていた。

 私はアデルと一緒に夕飯を食べに一階のレストランに向かうことにした。

 ――レストランの席に着くとウェイトレスさんが水とメニュー表を持って来てくれた。

私が「昼は海鮮パスタだったし、何にしようかなー」と言うと、ウェイトレスさんが、

「今日は大きくて良い海老が揚がったんですよ」と言うので、海老のおすすめメニュー

を注文ことにした。アデルは鮪の兜焼きを注文した。

 暫くするとお代わり自由のパンと野菜スープ。そして予想より大きな海老が六尾も出

て来た。

「食べ切れるかな……」

私の心配を余所にアデルは鮪の頭にかぶり付いていた。骨ごと食べる気だろうか……私

も食べよう。

 海老はプリプリで臭みもなく美味しく食べられた。アデルが食べている鮪の兜焼きも

少しいただいたが、まるで牛肉を食べているかのような位ジューシーだった。ところで

ジューシーってどういう意味?

 肉といえば……。

「そういえば、シルフォードさんの所で普通にお肉料理を食べていたけど、エルフさん

達ってお肉食べないんじゃなかったっけ?」

アデルは食べるのをやめ、私の疑問に答えてくれた。

「それならリリが言っていたぞ。あの隠れ里に住む人達は元々違う大陸のエルフの村に

住んでいたらしい。だが戦争に巻き込まれ元居た所に住めなくなったらしい。それでエ

ルフの村を去り、エルフが隠れ住んでる迷いの森を目指したのだが、食料など持ってい

なかった。それで狩りや野草などで飢えを凌いでいたそうだ」

「それでお肉を食べるようになったってこと?」

「そうだ。最初は余りの臭みに嫌々食べていたらしいが、隠れ里に着いてからは

シルフォードが臭みを取る方法を教え、それ以降は好んでとまではいかないが普通に食

べる様にはなったそうだ」

「なるほど」

エルフの村を追われ、迷いの森を目指したエルフ達はさぞ大変な思いをしたのだろう。

 隠れ里で出会ったエルフさん達、そしてシルフォードさんとリリちゃんは今どうして

いるだろうか。

 そんな風に思いを馳せると、なぜか頭に浮かんだのはイザベラさんだった。

「私達のことは思い出してくれないの?」

そんな声が聞えてくる。そんな気がした。

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