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ヨーグ魔道具屋での出来事

 魔道具屋さんのドアを開けて、中に入った。

 紫色のローブを着た店主の女魔術師さんが、カウンター奥の椅子に座り、欠伸混じり

に言う。

「……いらっしゃい」

 店内は何処かどんよりしていて、少し歩いただけでも埃が舞い、しばらく掃除してい

ないのが、すぐに分かった。

 肩に乗っているいるアデルは、顔をしかめて言う。

「埃っぽいな……。早く用事をすませて、出ようぜ」

「その方がいいみたいだね……」

 私は店内の棚を見渡し、必要な物を探す。

「えーと……チョーク、チョーク……。あった」

私はチョークが数本入った、紙でできた箱を手に取った。

 このチョークは魔術刻印が描かれてあり、主に魔法陣を描く時に使われる物だ。

 あと、必要なものは、土の魔術石が三つ。

 この魔術石だが、自分で作成もできる。だが、正直作るのもメンドクサイので、普段

は買うことが多い。

 再び棚を見渡すが、それもすぐに見つかった。

 そして、土の魔石に手を伸ばした時、それは起こった。

ドアを開けて三人の人物が入って来た。後ろの二人は町中でも見かけた、この国の衛兵

さんだが、一番最初に入って来たのは女性だった。

 金髪の綺麗な長い髪が印象的な人だ。また、銀色のカッコイイ鎧も目を引く、凛々し

い感じの人だ。騎士なのだろうか。

 そして私は胸の辺りの、鎧に埋め込まれた金色の魔石を見逃さなかった。金色の魔石

は、ほとんどの魔法を無効化する効果がある。おそらく魔法石だろう。

 魔術石は、一回から数回使うと使えなくなるのに対し、魔法石は破壊しない限り、半

永久的に使える。ただその代わりとても高価で、市場には殆ど出回らず、貴族や王族の

ような人が持っていることが多い。つまり先頭にいる女性は、それだけ地位の高い人物

なのだろう。それと、腰に差した剣にも赤い火の魔法石が見えた。

 三人は店内に入ると、カウンターの前に立った。女騎士さんが店主さんに言う。

「すまないが、ここで、法律で禁止されている魔道具の取引があったと情報が入ったの

だが、本当か?」

店主さんはキョトンとした表情で答える。

「そんな事あるはずがないじゃないですか。何処からそんな情報を……」

「私の部下からだ。少し中を見せてもらうぞ」

 女騎士さんはそう言うと、後ろで待機していた衛兵さんに、「やれ」と指示を出し、

店内を捜索し始めた。積まれた木箱や棚の上、カウンター裏の棚まで……。

 表情が段々青くなっていく、店主さんが言う。

「え、あ、ちょっと……やめてくださいよ!」

 店主さんは女騎士さんに、後ろから掴みかかった。しかし、女騎士さんはビクともせ

ず、捜索をやめる気配もない。

「正直に話せば、すぐに帰る」

「ですから、そんな事実はないんですって!」

 そこでカウンター裏の捜索をしていた衛兵さんが、紫色に光るある物を取り出して、

女騎士さんに見せた。

「これ、なんですかね?」

女騎士さんは、それが何か気づいた様で、ハッとした表情を浮かべた。

 私もそれが何か、すぐに分かった。それは召喚石と言われている物で、紫色に光って

いる物の中には、悪魔や魔物など、闇属性のモンスターが入っている。サイズからして、

中級クラスの悪魔か魔物が入っているのだろう。ちなみに召喚石と言われてはいるが、

六角柱の上面と下面に、ピラミッド型の三角形がくっ付いた、クリスタルのみたいな形

状である。

 店主さんの顔が完全に青くなった。

「それに触れちゃ駄目! 返してええぇぇぇ!!」

店主さんがカウンター越しに、衛兵さんに飛び掛かった。しかし上手く召喚石を奪えず、

召喚石は床に落ちて、割れた。

 私は思わず「あっ」と声を漏らした。

 召喚石が割れた音と共に、煙が立ち込める。

 店主さんは膝を突き、「……あは……あはは……終わった……」と、うわ言のような

ことを言っている。

 女騎士さんは、腰の剣を握る。

「各自警戒しろ」

 煙は徐々に晴れていく。しかし晴切る前に、煙から光が発せられた。

 女騎士さんが大声を出す。

「退避いいいいぃぃぃーー!!」

 残念だが、そんな時間はない。

 私は出来るだけ早く、着ているジャケットの内側に付けていた金色の魔術石を三つ取

り出し、投げた。ひとつは衛兵さんに。もうひとつは店主さんと、その近くにいた衛兵

さんに。最後のひとつは自分とアデルに。女騎士さんは金色の魔法石が付いた鎧を着て

いたから、おそらく大丈夫だろう。

 次の瞬間、爆発が起こった。店は半壊。そして私は、金色の魔術石の効果で無事だが、

思った以上の爆発で、店の外まで吹き飛ばされてしまった。

 ――外の通りに吹き飛ばされた私は何とか立ち上がり、ケガがないか確認する。あ、

ケツが割れてる!

 辺りを見渡すと、衛兵さんと店主さんが気絶していたが、特にケガはない様だった。

そして、女騎士さんは無事な様で、立ち上がって言う。

「……チッ……まさかいきなり魔術を使うとは……」

そして、半壊した魔道具屋さんに向けて、剣を抜いた。そこには、魔道具屋さんを半壊

させた犯人がいた。まぁ、人ではないのだが……。

 大きな、全身毛むくじゃらな体。怪しく輝く目。野生的な手と足。

「グアァァァ……」

「あれは……コングですね」

 コングとは、魔力の影響で巨大化し狂暴化した猿のことである。

 私の発言に、女騎士さんが疑問を言う。

「コング!? コングが魔術を使うなんて、聞いたことがないぞ!」

「魔石を取り込んだ魔物は、魔術や魔法を使うことが稀にあると、聞いたことがありま

す。しかし今は、コングの中に流れる魔力が希薄です。おそらく連続使用はできないの

でしょう。今の内に倒してしまいましょう」

 女騎士さんは「わかった」と言うと、コングとの距離を一気に詰める。その動きは鮮

やかで、俊敏だ。どうやら私の出番はなさそうだ。

 女騎士さんはコングの間合いに入ると同時に、抜刀。首を目掛けて薙ぐ。しかし寸前

の所で、コングの手が、剣を掴んだ。

 「ほう、私の剣を受け止めるとはな。しかし……」

 私は止めた。

「あ、それだとお店が……!」

だが、コングは燃えた。女騎士さんの剣に付いている、赤い魔法石の力によって。

 そして一閃。

「グギャアアアァァァーーー!!!」

 けたたましい断末魔と共に、腹部から横に真っ二つになったコングは燃え、死に絶えた。

そしてコングの焼死体から引火し、魔道具屋さんへと燃え広がっていく。

 そこに運がいいのか悪いのか、店主さんが目を覚ました。

「……ここは……は! 私のお店……私のお店がああああああああ!」

 女店主の絶叫が、アークラード王国に響いたのだった。

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