表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/94

マナカズラーとの戦い

 黒い森をひた走り、中心へ辿り着いた。

 中心部はすぐに分かった。何故ならアデルとリリちゃんがいたからだ。しかしアデル

とリリちゃんは黒いツルに掴まり、宙吊りにされて自由を奪われていた。

 ここで冷静さを欠いてはいけない。私はまず、辺りを観察することにした。

 アデルとリリちゃんがいなくなった時は見なかったが、黒い森の上部は黒いツルやツ

タや根が蠢いて、正直気持ち悪い。おそらく二人はこの黒いツルに捕まったのだろう。

 宙吊りにされているアデルとリリちゃんの更に奥、大きな黒い木が見え、その手前に

黒くて大きな壺型の袋が見える。あれがマナカズラーの本体だろう。

 一番有力な情報は、リリちゃんが話してくれた。

「な……何これ、力がはいらない……」

私はアデルなら簡単に黒いツルを引き千切れると思っていた。しかしアデルは黒いツル

にグルグル巻きにされ、暴れる様子も見られない。そうしないのはリリちゃんと同じく、

力が入らないからなのだろう。

 私は取り敢えずアデルとリリちゃんの救出を最優先に考えることにした。

 私に向かって黒いツルが伸びてくる。私はロングコートの内側から魔銃を取り出し、

ツルを目掛けて撃った。ツルは魔術銃から発せられた風の刃に切られ、地に落ちた。

 黒いツル自体はそんなに固くなく、難なく倒せそうだ。

 私は次にアデルを捕まえている黒いツル目掛けて銃口を構えた。しかしその矢先、先

程魔術銃で打った黒いツルが再生を始めた。どうやらアデルとリリちゃんの救出を急ぐ

必要がある様だ。

 私は再生する黒いツルに構わずアデルを捕まえている黒いツルを打った。ここで気を

付けないといけないのが、後ろのマナカズラー本体に攻撃しないことである。

 私の撃った風の魔術弾はアデルを拘束している黒いツルを切り裂き、アデルはツルご

と地面に落ちた。

「すまん。助かった」

 私はそのまま銃口をリリちゃんを拘束しているツルに移し、引き金を引く。ツルは切

れ、リリちゃんはアデルと同じく地面に落ちた。

「痛ッ……た、助かりました……」

 マナカズラーはツルに加え、根やツタまでもが伸び、頭上や地面からも私達に襲い掛

かってくる。

 アデルは体制を立て直すと飛び上がった。

「奴に触れると力が入らん。掴まらないように注意しろ」

彼はそう言うと、口から白い火の玉を出し迎撃していく。

 リリちゃんは懐から杖を取り出した。三十センチ程のタクトタイプの杖だ。そして杖

を振り、「風よ! 切り裂け!」と唱え、ツルやツタや根を迎撃した。

 同じく私も魔術銃を打ち、迎撃する。しかしツルやツタや根の数は増え始め、徐々に

私達を包囲していく。このままだとやがて追い詰められていくだろう。

 私は更にステッキを構え、風の刃を出して迎撃する。そして何か策はないものかと私

は思案した。

 私がそれに気が付いたのは、『アデルの放つ白い火の玉がマナカズラーに燃え移り、

マナ暴走を起こすのでは?』と頭を過った時だった。

 アデルが放つ白い火の玉は『白炎弾』といい、触れたモノは焼け、溶ける。そしてそ

の後のツルやツタや根を良く観てみると、私やリリちゃんの風の刃で倒しているのと

違って再生していないことが分かった。

 最近小説なんかでよく出て来るヒュドラという怪物がいる。ヒュドラは九つの首を持

つ大蛇で、不死身である。しかし切り落とした首の傷口を炎で焼くと、再生することは

なかった。という有名な伝説がある。このマナカズラーのツルやツタや根も同じで、お

そらく焼けた部分は再生しないのだろう。

 私はリリちゃんに声を掛ける。

「火で燃やせば再生しないみたいだよ。火の魔術は使える?」

「はい。任せて下さい!」

リリちゃんはそう言うと、「火玉よ! 舞い踊れ!」と唱え、ツルやツタ、根を燃やし

ていく。

 私は魔術銃にセットされている魔術石を切り替え、火の魔術石をセットした。そして

ステッキからも火の玉を放つ。

 暫く迎撃しているとマナカズラーの攻撃は少なっていった。潮時だと思った私は、

ショルダーバッグの紐に結んでおいた小さな巾着袋を解き、アデルに放り投げる。

「これを本体に入れて!」

アデルは巾着袋をキャッチすると「分かった!」と言い、マナカズラーの本体へ飛んで

行く。

 ツルや根がアデルに伸びるが、私はそれを魔術銃で撃ち、アデルの行く手を確保する。

 やがてアデルはマナカズラーの本体、壷型の植物の上に辿り着き、小さな巾着袋を中

へ入れた。するとマナカズラーは金色に輝き出す。これでマナ暴走を防げるはずだ。

 こうなれば最早勝ったも同然。早速アデルはマナカズラーの本体に噛み付き、引き千

切った。本体は破け、中から緑色に輝く光が溢れ出て来る。

 この緑の光がマナエネルギーで、おそらくマナカズラーの中で凝縮されているから視

覚で捉えることができているが、普段は見ることが出来ない自然エネルギーのような物

だ。

 その緑色の光が辺りに広がり、黒かった草や木は色を取り戻していく。

 アデルは更にマナカズラーを爪で引き裂いた。マナカズラーの姿は見るも無残な程に

なり、ツルやツタや根も完全に動かなくなった。それと同時に辺りは緑で溢れていく。

 迎撃が必要なくなった私達は手を止めると、リリちゃんが辺りを見渡し言う。

「……終わったんでしょうか?」

こちらに戻ってきたアデルが言う。

「ああ。もうマナを吸い上げられることもないだろう」

 私も辺りを確認する。火の魔術を使ったが、火が燃え広がることがなくて良かった。

 アデルが私の肩に留まる。

「思ったより大したことなかったな」

リリちゃんは満面の笑みで喜んだ。

「やりましたね! 掴まった時は駄目かと思いましたけど、これで里の不作も何とか

なりそうですね!」

 マナカズラーの脅威は去った。しかし本当にこれで終わりなのだろうか? 私はなん

となく嫌な予感を感じ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ