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エルフの隠れ里

 木の根で出来た門を潜ると、再び一本道に戻った。

 先に進もうとすると私の少し先、視線の高さ辺りに何かが飛んでいるのが見えた。注

意深く観察すると、それは小さな女の子で、背中に羽根の生えた妖精さんだということ

が分かった。

 私が妖精さんに気付くと、話し掛けてきた。

「どうやら本当にシルフォードに用があるみたいね。でも駄目よ。ここからは通さない

わ」

 妖精さんは臨戦態勢を取る。その態度を見てアデルが言った。

「アイツ食っていいか?」

「いや、流石にやめておこうよ」

それにその必要はない様だ。なぜなら、道の奥側から誰かが歩いて来るのが見えたから

だ。

 道の奥から歩いて来た人物は金髪で白い服を着た女性だった。そしてその女性は耳が

長い。つまり彼女はエルフということだ。

 奥側から歩いてきたエルフさんは妖精さんの近くまで来ると、妖精さんをハタいた。

妖精さんの「イタッ!」と言うと、エルフさんが言う。

「何を暴れている」

「……ッツー。痛いな! 何するのよパルマ!」

 妖精さんは頭を押さえながら振り返り、抗議した。パルマと言われたエルフさんは平

然とした表情で答える。

「何かあったら報告しろと言ったろう? ネルフィー」

パルマさんは続けて、こちらを見て言う。

「で、そちらは?」

ネルフィーと呼ばれた妖精さんが答える。

「アルフォードを訪ねて来たみたいだけど、どうせそんなこと言いながら私達を誘拐し

て、奴隷市に売り飛ばす気なんだわ」

 パルマさんはその話を聞き、「本当か?」と言う様な視線を私とアデルの方に向けた。

私はショルダーバッグからアルフォードさん宛の荷物を取り出し、パルマさんに見せた。

「アークラード王国の首都ロマリオの中央書店さんからの依頼で、シルフォードさんに

お荷物をお届けに来たんですけど……」

パルマさんは私の見せた荷物を少しの間注意深く観察すると、再びネルフィーさんの頭

をハタいた。

「イタッ! 何すんだよ!」

「どう見ても荷物を届けに来てくれた魔女さんだな。そもそもこんな目立つ格好で誘拐

なんかするはずないだろ」

「ッツー! そんなこと言って、この前も誘拐されたじゃないか!」

「その犯人なら捕まったぞ。犯人はロマリオの貴族だったらしい。誘拐された妖精はど

うなったかは知らないがな」

 アークラードの貴族が妖精誘拐の犯人? それってもしかして……。

「すいません。その犯人って、ヨルダン侯爵って方じゃないですか?」

パルマさんが答える。

「? そうだが、何故知っている」

 私はロマリオであったことと、ヨルダン侯爵の隠し部屋にいた妖精をイザベラさんに

預けたことを伝えた。

「そうか、そんなことがあったのか。ならばお前を信じよう。シルフォードの所まで案

内するから、付いて来い」

ネルフィーさんは反論した。

「お……おい。そんなに簡単に信用していいの?」

「問題ないだろう。後はシルフォードに任せる。ネルフィーは持ち場に戻れ」

 私はパルマさんの後を付いて行った。ネルフィーさんの視線を背中に感じながら。


 パルマさんの後を付いて行くと、途中で森の雰囲気が変わった。先程までは自然が豊

かな感じだったのに、途中から枯れかけた木や植物が目立ち始めた。

 辺りを観察していると、目の前を歩くパルマさんが言う。

「ところで貴女、名前は?」

「セレスティアといいます」

「私はパルマ。この村の警備隊の者だ」

 彼女は自己紹介の後、続けて言う。

「セレスティア、この森をどう思う?」

彼女が言っているのは迷いの森のことではなく、おそらく途中から雰囲気が変わったこ

とを言っているのだろう。私は正直に答えた。

「なんだか気味が悪いと言うか……意図的にマナが吸われている気配がします」

「……そうか。やはりそうか。セレスティアは優秀な魔女の様だ」

「えっ、いや……」

 そう、私は何か違和感の様なものを感じていた。この迷いの森に入った時は溢れる様

な、この森が枯れるようなことがない程の十分なマナを感じていた。しかし今いる場所

は、マナが非常に気薄だ。だがマナが全くないわけではない。そこで私は、『マナが意

図的に吸い取られているのではないか?』という結論に至ったのである。と言っても詳

しく調べてみない事には、まだ仮説止まりなのだが……。

 暫く歩くと木造の建物群が見えて来た。しかし活気は殆どなく、唯一すれ違ったエル

フのお爺さんに頭を下げたが、全く持って無反応だった。パルマさんにも同じ様な感じ

だったので、私が人間だからという理由ではないだろう。

 理由はすぐにわかった。それは建物群を抜けて畑が見えて来たからである。

 畑の一部が乾燥し、作業をしているエルフの男性が持っている野菜は痩せ細っている。

 パルマさんがその男性に声を掛けた。

「やはり駄目か?」

「パルマか……。ああ。野菜の殆どは痩せ細り、これじゃあ村の人達に行き渡らない。

シルフォードさんがなんとかすると言っていたが、いつになるやら……」

「分かった。私から彼に訊いてみよう」

「ああ……頼む」

彼はそういうと、畑作業に戻って行った。パルマさんはこちらを振り返り、言う。

「シルフォードの家はもうすぐだ。行こう」

私は首を縦に振って、彼女に続いた。

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