スラット
今日は、さなみが夏休みの補習で学校にきていた。
決して成績が悪いわけではない。
最近なにかと話題の感染症にかかりその欠席分を埋めるための補習だ。
同じクラスの中でも成績は、上位の方のさなみだが、勉強が好きというわけではない。
「補習やだなぁ。」
こんな言葉がポロッと出た瞬間に先生が挨拶をしながら入ってきた。
やばい、今の言葉聞かれたか?とおもっていたら案の定だった。
「そうか、さなみ勉強やりたくないかぁ
でもな、どうせやらないといけないなら楽し まなくては、お前もそう思うだろめぐみ。」
学年合同で行われている補習なのでもちろん他のクラスも混ざっているが流石に聞いたことある名前だった。
なぜならめぐみさんは、うちの学校でいつも1番を取るくらい頭がよく、テストが終わるたびに昇降口に張り出された順位表でその名前をみる。
私と同じ感染症での補習組であることは、間違いないがどこか虚な表情で先生の言葉に頷く横顔を私は、見逃さなかった。
いや見逃せなかった。
「はい。」
そんな軽い返事で終わった先生とめぐみとの会話は、気まずい雰囲気になってしまったので1時間目の数学よ補習がすぐに開始された。
学年一位の座は、伊達ではなく、キレキレな答えを連発するめぐみだったたが、やはりどこか元気がなかった。
そんななか表情が変わったのは、次の理科の授業であったのは、さなみきは、すぐにわかった。
先生が野球好きで運動のはたらきの授業だといつも野球に例えて教えてくれるのだ。
「物体には、地球に存在する限り重力というものがあるから力を加えなければ地面に落ちるようになっている。投手の球も浮き上がってくる豪速球投手と評されるようなやつでも実際には、ボールは、落ちているんだ。」
これについては、初耳でびっくりだ。
かつては、火の玉ボールとかいう凄まじい豪速球投手がいてその球は、ピンポン球のように浮き上がっていた。と聞いてYouTubeで観たが画面上では、少なくとも浮き上がっているように見えたからだ。
「その理論を打ち砕くべく新たに考案されたのが相手打者の方向に回転軸が向いた銃弾の様なスピンをするジャイロボールというやつだ。」
ここで誰かが小さな声で
「えっ、それって、、」
「おっ、知ってる奴がいるのか。ジャイロボールは、漫画でも有名になって練習したやつも多かったというが実際に投げてみるとただのカットボールにしかならなかったんだ。これは、ボールが球体であることや縫い目による空気抵抗の変化シームシフトウェイクというらしいがそれが関係してるらしい。」
野球のボールに伝わる力というのは、慣性の法則、作用反作用の法則、自由落下等いろいろなはたらきを担っているので勉強を教える側としては、都合がいいらしい。
そしてこのジャイロボールは、カットボールになるってことは、逆につかえるのでは?と思うのだがどうだろうか。
と思っているとさっきまで暗そうだっためぐみが少し興奮気味に話し始めた。
「今、そのジャイロボールは、スラットという変化球として使われることが多いですよ。」
さなみは、驚いた。
このガリ勉少女からジャイロボール?スラット?という単語が発せられたこと。
先生も同じ様なリアクションで虚を突かれた形となり口をパクパクしている。
するとめぐみは、続けて、
「スピードが落ちない分変化球としては、優秀で従来のカットボールよりも曲がってスライダーよりも速いハイブリッドな球になるんです。その分ストレートタイミングで打てるので他の変化球との兼ね合いも必要ですが。」
ここまでしゃべってやっとめぐみに対して呆気に取られたみんなの雰囲気を感じ取ったのかめぐみは、顔を赤くして席を立ち上がり、
「と、トイレに行ってきます。」
と言って教室から出ていってしまった。
ちょうど補習の時間も終了の時間だっのでそのままお開きとなったがめぐみがなぜあんなに野球に詳しかったのかさなみが気になり探してみるもそのまま帰ってしまったらしく会えなかった。
クラスも違うためこのまま会うことがないのかもしれないなと思うさなみだったが運命は、この2人を引き合わせることになるとは、この時誰も知らなかった。




