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出会い

 灼熱の太陽の下、河川敷に設けられた少し小さめの敷地で行われることといったらそう野球である。

 私、さなみは、中学生の女の子だが親が監督している関係で男の子と混じって野球をしている。

 野球に関しては、観る方はプロ野球選手はかっこいいし好きではあるがプレーする方はからっきしである。

 そして、今日の相手は、強いらしいがそんなことは、もうどうでもいいと思っている私がいる。

 

 (だいたい男しかいないスポーツでどうやったら私が勝てるのよ)

 

 そんなことを思いながらも私のチームは、笑っちゃうことに野球の試合が出来るギリギリの9人なので、試合には、やる気がなくても出なくてはいけない。

 親の強制で入ったのは、いいがまさか私を入れて9人だったとは......

 

「さなみは、今日8番ライトだ。頼むからまたこの試合でやめるとか言わないでくれよ。」


 「今日だって、学校の友達と遊ぶ約束あって本当は、来たくなかったのに! 」


 「そんなこと言わんでくれ、試合出来なかったら他の選手の父兄になんと言われるか......。そうだ今月のお小遣いをアップするから許して!」


 「まあそれだったら」


 最近父兄からの苦情が多いらしく試合を欠場しようものならやめる人が出かねないらしい。

 9人しかいないのにとても笑えない。

 こんな様な泣き崩し的なやりとりを毎回している。

 そんなやりとりの後、いつも通り試合前のキャッチボールをやっていると、チームのみんなの視線がやたらと相手のブルペンに向いていた。


 「おいおいまじかよ。」


 そんな声がチームから漏れていたので、私も見てみると背が低く足も細かった。

 すると、投球練習を終えて、こちらに近づくにつれて、あることに私は気付く。

 そう私と同じ中学生の女の子だったのだ。

 

 「そんな、今日のチームは、強いんじゃなかったの? 」


 「いや、俺も監督からそう聞いてたけど。」


 チームメイトが困惑しているのが目に見えてわかったが、どうしようもない。

 そうこうしているうちに試合が始まるとやっぱりあの女の子が先発のピッチャーだった。

 投球練習を始めたが同い年の男の子に比べればやはり球は、速くない。

 強いて言うならコントロールが良いくらいか。

 とても強いチームの先発投手とは、思えない。


 「舐められてんな。」


 「まあ、9人ぎりぎりの俺らじゃ仕方ないよ。」


 「女の子ピッチャーなら今日打てるかも! 」


 そんな声がチームからあがっているなか試合が私たちの先攻で始まったが...... 。


 「バコッ! 」

 「カスッ! 」


 1人また1人とどんどん抑えられていく。

 誰も相手チームの女の子の球をジャストミートすることが出来ない。

 そして、気づくと私の打席になってしまった。

 

 (打てそうなスピードなのになんで打てないんだろう? なんなら私が打って人生初ヒットをお見舞いしてやろう! )


 そして、初球をフルスイングしようと心に決め、タイミングを合わせて振りに行くとそんなに速くない球に力が入り過ぎたのか、ボールの下を振ってしまった。

 

 (いけない、いけない、次は、力を抜いて当てることに集中してみよう! )


 相手の女の子が不敵な笑みを浮かべたように見えたが気にせず構えると身体の近くを通る球を投げてきた。

 これだと、当てることに集中したスイングでは、緩い打球になってしまう。

 だが、スイング止めることも切り替えることもなかなかの力が入りので高難易度だ。

 案の定そのまま振ってしまい打球は、ピッチャーの女の子の方に転がっていってアウトになってしまった。

 次の打席も同じようにこちらの意図を察したようなピッチングで打ち取られてしまった。

 そんなこんなで、女の子の巧みな投球術の前に私のチームの男共も沈黙し、気づいたら私たちのチームは、ノーヒットで負けていた。

 この時、私は、悔しいというよりその女の子を見てこう思ったのだ。


 "かっこいい!"


 "ビリっとくるものがあった。"

 "こんな風になりたい。"


 こんな、男の子をバタバタ倒していく様にカッコ良さを感じたのだ。

 野球でこんな気持ちになるとは、思わなかった。

 試合が終わると試合後の反省会を真っ先に抜けた。


 「おい、さなみどこ行くんだ! 」


 遠くからそんな声が聞こえたが無視して行く。

 その女の子に声を掛けようと相手チームのロッカーまで行くとスパイクを履き替えている途中だった。

 

 「凄いピッチングだったね。同い年の女の子として、感動しちゃった。」


 そう声を掛けるとキラキラした目でこちらを見ては、私の手を握ると興奮したように口を開いた。


 「僕も同じ女の子がいて、お話がしたいと思っていたの、どう? 僕と一緒に次の週末出掛けない? 」


 あれ。一人称僕なの?まあそれは、気にせずにスルーをしておこう。


 「えっ? なにをするの?」


 「それは、来てのお楽しみさ。」


 「その前に連絡先僕と交換しないとね。それで僕の名前は、あかりよろしく。」


 「あははは、そうだねスマホ取ってくるね。」


 これは、私の野球人生が変わった瞬間。

 そして、私が野球にハマる物語。

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