7878T列車 幻想をぶち壊せ
皇紀2745年4月3日(第40日目) 国鉄奥羽本線大曲駅。
大曲駅は奥羽本線の列車が来ていた。特急「つばさ」上野行きらしい。こんな所から上野まで走って行くのは一体何時間の長丁場になるのだろうか。一度でもいいからその長丁場を経験してみたいものだが。
「「つばさ」が発車しちゃいますよ。見送っちゃっていいんですか。ナガシィ。」
「何。「つばさ」乗りたかった。」
僕は萌の体に手を置いて聞いた。
「別に。それに私達ガウンから着替えていかないといけないでしょ。今からそんな時間ありませんよ。」
「朝食も食べてないしな。」
「そうね。」
ホテルで朝食を済ませて、大曲駅に行った。
出迎えてくれたのは東北地方で広く活躍している701系だ。ハリボテだの走るンですだの言われるが、これでもこの辺りの重要な足として機能しているんだからここの人たちにとって断じてハリボテではない。そういう評判はこの車両が走っている周辺のものではないからな。
大曲→奥羽本線→横手
枕崎→広尾間の最長往復切符往路大曲駅から使用再開
枕崎→広尾間の最長往復切符往路横手駅で途中下車
701系が横手に到着すると客の多くがここで降りた。僕たちもそれに混じって降りる。横手では市役所に向かうことにした。もちろん、ここに住んでいない僕たちは市役所になんて言ったってやることはない。だが、ここは違う。見るものがある。
僕たちは貧弱な耐寒耐雪装備から半纏を貸して貰った。
「ナガシィ、ここ。この冷凍庫の中だよ。」
かまくらと書いてある。とにかく、開けて入ってみようか。冷凍庫は2重の扉となっており、1つめの扉が開いただけで寒さが伝わってくる。1つめの扉を完全に閉めてから、2つめの扉を開ける。中から大量の冷気が僕たちを包んだ。
「寒ッ。」
「くっついていい。」
「何で。」
「その方が暖かいから。」
「・・・。」
中には雪の家がある。かまくらってやつだが、本物をみるのは久しぶりだ。
「これって行き積み上げてから、中くりぬくんだよなぁ。」
「よく作るわよねぇ。私、この通りに行きを積み上げていくのかと思ってた。」
「ハハハ。それは僕も同じ。でも、考えてみたら、そのやり方じゃあ行きが崩れてくるからどうしてだろうなぁって思ってたんだよねぇ。」
「ああ、分かる。」
だが・・・。
「うっ、くっついてても寒い。」
「ちょっと離れて貰っていい。」
「何で。」
「その・・・。何だ。胸が。」
「別に当たってたっていいでしょ。ナガシィは嬉しいだろうし。」
「嬉しいってなぁ・・・。」
「それはそれとして、かまくらの中が暖かいって言うのは幻想なのよねぇ。」
「それ前にも言ったろ。」
「あれ、言ってないと思ったけど。・・・ねぇ、お昼ご飯に横手やきそばでも買ってく。次は特急でいいし。」
「米沢まで一気に行っちゃうのか。」
「何なら秋田まで一気に行ってもいいわよ。お楽しみは復路って事で。」
「はい、はい。」
横手→奥羽本線特急「つばさ」→米沢
枕崎→広尾間の最長往復切符往路米沢駅で途中下車




