7877T列車 変態急行列車「陸中」
皇紀2745年4月2日(第39日目) 国鉄東北本線一ノ関駅。
気仙沼→大船渡線急行「さかり」→一ノ関
一ノ関→東北本線・釜石線・山田線急行「陸中」→盛岡
急行「さかり」は前に別の急行列車を連結した。僕たちは荷物をまとめて、「くりこま」の車内を通り抜けて先頭に連結されている急行「陸中」に乗り換える。大体のボックス席が埋まっており、僕たちはいったん別れて座るしかなかった。
水沢駅で自由席の一部が空く。僕たちはここで隣同士に座ることが出来た。
北上を出発し、次の花巻に到着する手前アナウンスは珍妙なことを言い始める。
「ご乗車ありがとうございました、まもなく花巻。花巻です。次の花巻駅では急行「陸中号」秋田行きの切り離しを行います。盛岡、秋田方面お急ぎのお客様後ろに連結されております急行「くりこま号」、「さかり号」へお乗り換えください。」
「なんか変なこと言い始めたわよ。」
「いいじゃん。「陸中」は急いで秋田まで行ってくれないんだから。」
と僕はながす。
花巻駅で「くりこま」・「さかり」と切り離され列車は釜石線に入線し進路を東に取る。この列車の終点秋田は花巻よりも西側にあるのに、変な方向へ走っていくもんだ。
「これ秋田行きなのに東に走ってくって言うのはどこからどう考えてもおかしいわよねぇ。」
「こんな頭のおかしいこと毎日やってるんだから、どうにかなるよなぁ。」
「ハハハ。本当。」
列車内は花巻駅で乗客が入れ替わった。土沢、宮守、遠野で乗客の乗り降りがある。結構激しく入れ替わる車内に、濱名機からずっと座っている僕たちを時折「この人何処まで行くんだ」みたいな目線を向けてくる人もいる。しかし、その人達の中でも僕たちが盛岡まで行くことを当てる人はいまい。
釜石駅で僕たちを除いた全員が降りた・・・。
「ねぇ、ナガシィ。」
「何。」
「私が座ってたボックス席には一ノ関よりも前から座ってた人がいるんだけど。」
チラッと北上→水沢間でも絵が座っていたボックス席を見てみる。確かに誰か座っているようだ。
「あの人一ノ関よりも前からこの列車にのってるの。」
「多分ね。」
「・・・。」
あの人も大きいお友達かな。ちょっと注意してみることにしよう。
釜石駅から列車は山田線に入る。リアス式海岸の三陸をトンネルでぶち抜く。時折通過する駅の周りは建てられそうな所に家を詰め込んだような感じで街が広がっている。
車内の乗客は宮古駅に着くまでの間にさっきマークした人と僕たち以外の全員がまた入れ替わる。この列車を仙台~秋田まで利用する人はいない。秋田に行くだけなら、「陸中」にのらないほうがはるかに早いからだ。
「あの人まだ座ってる。」
「うん、さっきから降りてないからな。」
「何処まで行くか、賭けない。」
「賭けてどうするんだよ。」
「えー、面白そうじゃん。」
「あんまり他人で面白がるなよ。」
茂市駅に停車し、乗客を抱え込み盛岡までひとっ走り。僕たちはようやっと盛岡でこの列車とお別れする。さすがに長いこと列車にのりすぎた。盛岡で晩ご飯を済ませて、そのまま泊まるかと話したが、今日の内に仙岩峠を越えることに落ち着いた。だが・・・、
「その前に駅弁買ってからにしよう。」
駅弁片手に田沢湖線の特急「こまち」に乗り込んだ。
盛岡→田沢湖線特急「こまち」→大曲
枕崎→広尾間の最長往復切符往路大曲駅で途中下車
一口メモ
急行「陸中」
仙台~秋田間を東北本線・釜石線・山田線・東北本線・花輪線・奥羽本線経由で走行する「急いで行かない」急行列車。花巻~盛岡間以外は他の急行列車を必ず連結し、みちのく急行変態ネットワークの主力を担う迷列車としてその名を轟かせている。なお、通しで乗車する大きいお友達が毎日一人はいる。




