表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/270

7788T列車 日は高い

「それではお願いします。」

僕は窓口の駅員さんにそう言ってから、離れた。

「最初の人はすっごい嫌な顔してたわね。」

と萌が言う。

「当り前だろうなぁ。あんなもの見せられたらやる気なんて起きないだろうさ。」

心中お察しする・・・が、引き受けて貰った以上は知ったこっちゃない。とは言ったものの、これを完成させてくれたら僕が遅れる最大限の賛辞を送りたいと思っている。

 最初、見せたとき窓口の人は見るからに嫌そうな顔をした。その人は少し考えてから窓口の奥へと入っていった。それから見るからに若そうな駅員と一緒に戻ってきたところ、そっちの若い人が引き受けてくれるという流れになった。うん、まぁ頑張れ、若人・・・。

「喫茶店でも行く。」

「じゃあ、梓のお父さんがやってるところ行こうか。」

「はいはーい。」

僕は萌に付いていく形で喫茶店へと入る。喫茶店に入ると「お帰りなさいませ、ご主人様。」と若葉が声を上げる。その後に「だから、そういうお店じゃない。」と梓の声もする。

「梓、コーヒーお願い。1個はミルクと砂糖1個ずつで、もう1個はミルクと砂糖5個ずつでお願い。」

「5個っていれすぎじゃない。」

「いれすぎって事はないよ。」

「いっとくけど、どんなにミルクと砂糖注いでもカフェオレになったりしないからね。」

「・・・。」

それはその通りだよねぇ・・・(←実際にそうなると思ってた人)。

「お姉ちゃん、後は私がやるから友達と話してくれば。」

若葉が言った。

「あら、随分と優しいのね。」

「元々お姉ちゃんはここで働いてるわけじゃないんだから。お兄さんと一緒にいるときの方が生き生きしてるわよ。」

「っ・・・。」

不意を突かれたのか梓の顔が赤くなるのが僕にも分かった。

「生き生きしてるって。妹に言われちゃったねぇ。」

「・・・。」

でも、嫌な顔はしない。本当に鳥峨家のこと大好きなんだな。萌もそういうこと言われたら、どういう反応するんだろう。それはちょっと気になる・・・。一段落してから梓も僕たちの座った席に来る。

「今日はどうしてきたのかな。」

そう切り出した。

「ふふん。私達ね旅行することに決めたの。また長い奴。」

萌は自慢げに言う。あんまり自慢するようなことでも無いと思うけど。

「へぇ・・・。最長往復切符だっけ。あっちでも100日くらいずっと旅行してたわね・・・。」

「今度は100日じゃなくて136日かな。」

「ひゃ、130ッ。どんだけ。1年の3分の1以上旅行してる計算じゃない。」

「良いでしょ。」

「うーん。いいとは思うけど。また馬鹿なこと考えたわね。」

梓はあきれ顔で僕を見た。まぁ、馬鹿なことしかやってないと思っているからその顔をされることにはもう慣れたけどね。

「ハァ、私もどこか旅行したいなぁ・・・。大希どっか連れてってもらえないかな。」

「だったら今すぐホテルに連れてってやろうか。」

「何で旅行の話してて、ホテルになるのよ。言っとくけど、私エッチはしませんからね。」

会話に入ってきた鳥峨家にそう返す。

「梓ちゃんもどっか行きたいところがあるなら連れてってやるよ。どこがいい。」

「・・・。」

「私達邪魔ね、ナガシィ。」

「そうだね・・・。せっかくイチャイチャしてるんだし、邪魔しちゃ悪いね。」

「いや、良いって言って。そんな気遣わなくても。イチャイチャなら後でいくらでも出来るから。」

「・・・。」

「・・・130日も旅行してどうするの。」

「楽しんでくるのよ。ナガシィと・・・ね。」

「ああ・・・。」

不意打ちは卑怯だぞ・・・。

「日本全国好きな人と一緒にまわる。素敵だと思わない。」

「羨ましいなぁ・・・。」

「だから、梓ちゃんはどこか行きたいのかって。」

「・・・どこだと思う。因みに場所じゃないし、答えなんて教えてあげないけどね。」

「後で○○の刑だな。いっぱいいかしてやる。」

「アハハハ・・・。」

まだ日は高いぞ・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ