7867T列車 鋸
皇紀2745年3月28日(第34日目) 国鉄内房線千葉駅。
千葉駅は成田方面と蘇我方面に向かって扇形に広がっている。平面にあるホームには東京方面行きの列車と電車がひっきりなしに入る。黄色帯の電車にもスか色の電車にもびっしりとスーツを着た人間がひしめいている。時折通過する特急車両の方が空いているんじゃないか。そう思って中を覗いてみるとそっちにもサラリーマンが乗っている。空席はあるが、これはこの先の停車駅で埋まって行くであろう。
「相変わらず、東京は人が多いわねぇ・・・。人に酔いそう・・・。」
萌がつぶやく。確かに、この多さは異常と言ってもいいだろう。東京一極集中はこっちでも問題のようだ。
「まぁ、酔わないところ通るから。」
千葉駅から特急列車に乗る。列車は「ビューさざなみ」館山行きだ。その時間になると明るい色で塗られた特急電車が千葉駅のホームに入ってきた。普通の通勤電車でさえ12両繋げているが、この特急は6両。入ってくるときも「短い6両編成で」とアナウンスがあった。
千葉→内房線特急「ビューさざなみ」→浜金谷
車内は6両編成と言うこともあって多少混でいる。東京からの列車が6両って言うのはどうなんだろう・・・。だが、木更津駅で状況が変わった。
「木更津駅で前に横浜方面から参ります「ビューさざなみ号」9両を繋ぎます。」
そんなに繋ぐらしい。こちらが木更津駅に入る頃には既に横浜からの列車が待っているらしく、列車は2回止まり、3回目の停車で連結した。
長くなった「ビューさざなみ号」は房総半島を南下。僕たちはその途中駅浜金谷駅で下車した。暴走半島をこんなに長い列車が走っているというのは不思議な感じがする。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路浜金谷駅で途中下車
浜金谷駅で列車を降りた人は多い。服装からして明らかに観光客ばかりだ。
「この人達も鋸山行くのかな。」
「行くんじゃいか。僕たちも行くんだし。」
「そうね。」
浜金谷駅から見える山。そこを目指す一団に混ざり、僕たちも鋸山を目指す。
鋸山は石を切り出していた山でここの遺志は早稲田大学の校舎にも使われているらしい。そんな権威ある学校に使われるぐらいだ。今もどこかに使われているのかと思ったら、とっくに出荷は停止しているらしい。今は所々に残ったその後をみるに過ぎない。
「昔はここから切り出した石を持ってったんでしょ。」
萌は階段の途中に立ち止まる。坂は急でとても石を降ろすために使っていたとは思えないくらいだ。まして、ここで働いていたのは女性達だと聞く。男でもこれは重労働だ。これと北海道での野外懲役を比べたら、どっちが楽だろう・・・。
「・・・そこ滑らせてたんだろ。」
階段の脇には石で出来た溝がある。ここが石材を麓に降ろすために使っていた場所らしい。
「でも、ある程度速度着いたらここからも飛び出しちゃうでしょ。ちゃんとスピード制御するためには上に大人数いるんじゃないの。」
「ああ・・・。それは。」
今やそれは記録でしかみることが出来ない。本当に伝えるって言うのは目に見える形・・・。それを維持するってことじゃ無いかと思うのだ。
一口メモ
国鉄255系
房総方面向け特急電車として製造された特急電車。この車両が用いられる特急列車は「ビュー○○」と名乗る。
特急「ビューさざなみ」
内房線系統の特急列車。東京~館山・安房鴨川を結んでいる。東京湾を横断する路線が出来たことで横浜からの系統も設定された。




