7860T列車 自由とは
皇紀2745年3月24日(第30日目) 遠州鉄道西鹿島線芝本駅。
起きてみるともうお昼前になっている。さすがにちょいと張り切りすぎたかな。横で寝ている萌を見てみる。相変わらず可愛い顔してるよ、本当。
「あっ、ナガシィおはよう。」
「おはよう。とりあえず、早く服着て。」
萌は「お気に召さない」とか言ってたけど昼くらい目のやり場に困らない格好してくれ。
萌が服を着て出てきてくれたら、朝ご飯を食べてから出掛ける。まぁ、出掛けるところは例の喫茶店くらいしかないんだけど。行ってみると「臨時休業」の札が下がっていた。萌は話を通してあるらしいけど、それにしても梓ちゃんのご両親フリーダムすぎない・・・。まぁ、他人だからとやかく言うつもり無いけど。
「あら、二人とも遅かったじゃない。」
入店すると梓の声が聞こえた。
「おっ。待ってたよ。二人とも。」
と磯部が言う。僕の入る余地はないな・・・。まぁ、女子会になったらいつもこうなるからなぁ。
「いつもの通りだな。」
鳥峨家が僕の前に座った。
「本当だな。」
「それにしても広島からずっと旅してきたんだろ。体おかしくならないか。」
「もう、おかしいから色々諦めてるよ。」
「ハハハ。」
僕たちの会話はすぐに終わるからなぁ。後は思い思いに時間を潰すようになる。
「あれ、美萌ちゃんと夏紀ちゃんはどうしたの。」
「美萌も夏紀も今日はどうしても外せないんだって。何処に行ったのかは聞いてないけど、二人とも向こうの旦那に会いに行ったんじゃないかな。」
「何でまた。二人とも旦那とは一緒に暮らさないって言って独り身になった人たちじゃん。」
萌の声が聞こえる。ていうか、萌もその可能性はらんでるってことか。何か怖。
「んー。ほら、あれだら。元々旦那がいると何かと不自由じゃん。だから、こっちで自由に暮らそうと思ったけど、リア充爆発させてる二人がいてバカ羨ましくなったんだら。旦那との連絡手段はあるんだし、向こうほど合うのは難しくないと思うしね。」
と磯部が言う。
「リア充爆発させてるって。それは私達のことと梓達のこと言ってるの。」
「二人の身近にいるリア充が他にいる。まっ、二人には旦那の処分なんて考えられないだろうけどね。」
と言ってから笑う。
「私だって考えてるわよ。変態を処分する方法。」
と梓。
「えー、梓ちゃん俺のことはゴミ扱いかよ。ウチのバカ可愛い嫁さんはそんな酷いこと言うわけ無いと思ったのになぁ。」
聞き耳を立てていた鳥峨家が会話に入った。すると梓は席を立って、鳥峨家の隣に座る。
「あら、時間考えずに襲いかかってくるド変態には良い帰結だと思うけど。」
「こいつ。後で覚えとけ。」
「フフって、コラッ。」
「処分するって言ったお返し。」
「もう。他人もいるのにそう言うのは無し。」
お互い軽口を言い合ってるなぁ。
「ねぇ、萌。」
「なぁに。」
「萌も僕を処分する方法でも考えてる。」
「えぇ。ナガシィのこと処分したらナガシィが困るでしょ。」
まぁ、確かに。
「えっ。」
気付いたら萌も僕の隣に来ている。
「私はこうしてるだけでも幸せだよ。」
「あーあ。二人とも旦那にベッタリなんだもん。妬いちゃうなぁ。」
「綾だって男作れば良いじゃん。」
「・・・私はこっちで自由に生きるって決めたの。子供にも旦那にも振り回されない。そういう生き方をこっちでするって決めたからよ。旦那を今になって探すような二人とは違うわ。」
僕には本心に聞こえたけど、どうなんだろうなぁ・・・。




