7837T列車 失敗、芸備夜行
皇紀2745年3月12日(第18日目) 国鉄木次線油木駅。
「千鳥ライナー」は拷問器具である。その結論は変わらない。さっきから全く寝れてないのだけれども。この車内にはそういう人しかいないようだ。辺りを見回してみるとしきりに体を動かし、上手く寝れるポジションを探している人が多い。
「・・・。」
「ナガシィ・・・。」
「なぁに。」
「これ絶対失敗だって。」
「・・・だな・・・。」
下からは上り勾配に挑むキハ127系の力強いエンジン音。そして、傾きもしない転換クロスシート。これに夜通し乗ると言うことがどれほどの拷問か・・・。チラッと次の停車駅を見る。「次は備後落合」と表示している。これも何度見たかな・・・。
しばらくすると列車は何の前触れも無く止まった。ドア横に付いているボタンが緑色に光る。上の表示は「備後落合」とローマ字で「BINGO-OCHIAI」と交互に表示するようになった。
「萌。」
「ほえ。」
「着いた。」
「今何時。」
「3時ちょいまえ・・・。」
「・・・この時間に降りるのかぁ・・・。」
僕たちは余り回りに迷惑がかからないように荷物をまとめて、外に降りた。備後落合は山間と言うこともあってかなり寒い。線路には雪がつもっているが、こんな中でも沢山の係員が動いている。
芸備線の東城方面がにわかに明るくなり、列車が入線する。接近放送もなく入ってきた列車はここで「千鳥ライナー」と連結するようだ。種別は「帝釈ライナー」となっている。こちらも「千鳥ライナー」と同じ拷問器具らしい。
「ねぇ、私そろそろ心が折れそう。」
「この列車だけで心折りに来たね。」
「本当ねぇ・・・。」
「こっちの鉄道利用者って何倍もメンタル強くないとつとまらんなぁ・・・。」
「・・・。」
備後落合で7両編成となった「千鳥ライナー」と「帝釈ライナー」は闇夜の中へと消えていった。彼らが過ぎ去ると辺りは駅員の声しか響かなくなる。
「寒いし、目覚めるし。早く「帝釈」来ないかなぁ。」
「「帝釈」・・・早く来て欲しいねぇ・・・。」
しばらく待っていると山の中がにわかに明るくなる。快速「帝釈ライナー」と「千鳥ライナー」の入線だ。
「もう乗りたくない・・・。」
「分かる・・・。」
時間はただいま3時50分・・・。シートには白目をむいた18キッパーが・・・。そして、少ない停車時間を気分転換にゾンビのようにホームに湧く。
「もうこんなの乗りたくない・・・。」
「これは・・・。失敗だったな・・・。」
夜行列車ってこんな過酷じゃ無かったと思った。
備後落合→芸備線快速「帝釈ライナー」→新見
枕崎→広尾間の最長往復切符往路備中神代通過に伴い途中下車
備中神代→新見間特例適用の上便宜乗車
一口メモ
快速「帝釈ライナー」
広島~新見間を走破する快速列車。一部夜行の設定もある。広島~備後落合間では快速「千鳥ライナー」との併結運転を行う。




