7836T列車 走る拷問器具
皇紀2745年3月11日(第17日目) 国鉄山陰本線米子駅。
夜が完全に更けるまで米子周辺で時間を潰す。山陰歴史観を拝観し、晩ご飯を済ませてから、米子駅へと戻る。それでもまだ時間がある。
「まぁ、さっきも聞いたけど本当にここまで来ちゃってよかった。」
「よかったと思うよ。」
萌の問いに僕は即答した。と言うよりもそうなるだろう・・・。昨日、三次駅で下車した人間は青春18きっぷを駅員に見せていた。僕たちがこれから乗る列車は長距離快速列車のため利用が集中すると思ったのだ。
「ふぅん。その選択間違ってたらどうして貰おうかな。」
「えっ、罰ゲームあるの。」
「フフフ。それは冗談。」
「・・・。」
ディーゼルエンジンの音を響かせ、特急「スーパーおき」小郡行きと「スーパーくにびき」益田行きが停車。反対向きには特急「やくも」岡山行きが停車する。それに混じって3両編成のディーゼルカーが米子駅ホームに入ってきた。「千鳥ライナー 広島」の文字が躍る。しかし、3扉の転換クロスシート車両で広島まで行くのかと思うと先が思いやられる。これは東海道本線の夜行快速「ムーンライトながら」よりも苦行を強いられるのは間違いない。
萌は入ってきた列車を見てチラッと僕の顔を見る。僕もそれに合わせて萌の顔を見た。
「ハ・・・ハハ・・・.これってマジ。」
「これは降りたらゲッソリしそうだな。ハハハ・・・。」
米子→山陰本線・木次線快速「千鳥ライナー」→備後落合
米子→宍道間の乗車券使用開始
ミュージックホーンを奏で、米子駅を出発。3両編成の車内には見るからに鉄道ファンであふれている。全員転換クロスシートを向かい合わせにし、前の座席に足を載って、くつろぎ始めている。しかし、車内はそれだけじゃない。少なからず地元の利用もあるようで最初からその利用の仕方はどうかとは思うが・・・。
安来、松江、宍道と止まると結構客が減る。「千鳥ライナー」は山陰地区では遅い時間に運行される列車の一つという認識らしい。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路宍道駅から使用再開
「・・・。」
「・・・。」
「ナガシィ。」
萌が小さい声で話しかけてくる。
「何。」
「腰痛くなってきた。」
「・・・。」
「ねぇ、何か喋って。」
「喋れるほどね・・・あれなの。」
「あれって何。」
「あれは、あれだよ。」
「あれはあれじゃ分かんないよ。」
「これ絶対色々と無理・・・。」
「多分無理。」
結論「千鳥ライナー」は拷問器具。
一口メモ
快速「千鳥ライナー」
芸備線・木次線を経由して広島~米子間を走破する快速列車。一部夜行の設定もある。広島~備後落合間で快速「帝釈ライナー」との併結も行う。




