7824T列車 ヒルネ
皇紀2745年3月7日(第13日目) 国鉄山陽本線岡山駅。
浜松→東海道本線・山陽本線・呉線寝台特急「あき」→呉
岡山駅を出発すると寝台特急「あき」の車内はにわかに騒がしくなる。
「皆様おはようございます。ただいまよりベッドの解体をいたします。お客様のご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。」
と言う声が車内に聞こえた。
乗っている車両は24系24形の3段寝台を備えている。3段の真ん中に当たる中断寝台を解体し、下段寝台を座席にするのだ。しばらく待っていると僕たちの順番になり、同じく格にいる僕たちと女性1人は通路で寝台が解体されるのを待った。
「凄いねぇ・・・。」
僕たちは手慣れた作業に度肝を抜かれる。5分も経たないうちに中断寝台はなくなり、下段寝台は座席に変わった。
僕たちはそこに腰掛ける。寝台だった部分に座るって言うのはどこか不思議な感じだ。それにしても・・・。
(前に座ってる女の人が気になる。)
前に座っている女の人は長い刀を持っている。だけならまだ気にならないのだが、上半身さらしだけしか付けてないんですが・・・。下はちゃんと袴をはいてるけど。今、3月だよ。ちょっとずつ暖かくなってきているとは言え寒くないの、その格好。
「あんまりいやらしい目で見ない。」
萌は僕にだけ聞こえる声で言う。
「私は別に気にはしないぞ。」
萌の声さえ前の女の人には聞こえていたらしい。
「何か。色々とごめんなさい。」
「何を謝っている。本当に行動に移すことが問題なだけだ。思うだけなら問題ではない。」
それは確かにその通りなのだが・・・。
「貴方はどちらまで。」
萌が聞く。
「私は呉で降りる。そっちは。」
「私達も呉で降りるんです。」
「ほう、それは何かの縁だな。しっかし、呉に何の用だ。見たところ軍人じゃなさそうだが。」
「まぁ。呉の近くから四国に行こうと思っていて。」
「なるほど。それでか。」
「そっちは呉には何の用で。」
萌が聞くと、
「仕事だ。」
と一言だけ帰ってきた。呉は軍港の街だし、女の人が仕事・・・。別に普通のことではあるけど、呉に仕事に行くってだけで何か・・・ねぇ。
三原→浜松間の乗車券(かえり)三原駅到着に伴い使用終了
枕崎→広尾間の最長往復切符往路三原駅から使用再開
三原駅に到着したことで最長往復切符のしようが再開される。海沿いの呉線を走る。外を見ているとどこか軍艦でも見えるかなと外を眺めていたが、
「あんまり外を見ていると憲兵に疑われるぞ。」
と忠告された。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路仁方駅通過に伴い途中下車
仁方→呉間の乗車券(ゆき)仁方駅通過に伴い使用開始、呉駅到着に伴い途中下車
呉駅に到着。14両もつないだ寝台特急からはどっと客が降りた。「あき」はここまでの利用がとても多いようだ。パッと見た限り軍人が多いように見受けられる。僕たちと一緒にヒルネしていた人も改札口の方へと向かっている。
「僕たちも行こうか。」
「ピョーッ。」
EF65形の甲高い汽笛が呉の街にこだました。




