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MAIN TRAFFIC7 -日本一の切符2745-  作者: 浜北の「ひかり」
枕崎→広尾(往路) 九州
29/270

7808T列車 天険矢岳越え

皇紀2745年2月24日(第2日目) 国鉄(こくてつ)鹿児島本線(かごしまほんせん)川内(せんだい)駅。

 東北にもある仙台(せんだい)と九州にある川内(せんだい)。読みは同じだが字面は似ても似つかない。そんな駅から今日はスタートする。

川内(せんだい)鹿児島本線(かごしまほんせん)特急「つばめ」→八代(やつしろ)

枕崎(まくらざき)広尾(ひろお)間の最長往復切符川内(せんだい)駅から使用再開

 西鹿児島(にしかごしま)方面から鉄仮面と称して差し支えない787系が入線する。4両編成と9両編成に分かれている。これほどの長編成を組んで西鹿児島(にしかごしま)までなんかしているのか。この区間の特急利用の大きさを垣間見る。

 車内に乗り込んでみると結構な人だ。川内(せんだい)八代(やつしろ)間で自由席を選んだが・・・。

「どうする。二人で座れるとは思うけど。」

「いや、二人で座れるんなら自由でいいでしょ。」

自由席に落ち着くか。

 列車は海岸線を走る。昨日、肥薩線(ひさつせん)を通った。こちらの線路が開業するまで肥薩線(ひさつせん)鹿児島本線(かごしまほんせん)として博多(はかた)鹿児島(かごしま)間の輸送を担っていた。その理由は郡部が「海上からの戦災を回避する」という名目でなったものだが、この風景を見ていたら真っ先に破壊されるものであろう・・・。勿論、それを心配せずにくらせるここはそんなこと関係ないのかもしれない。

「特急なのにあんまり速くないわね。」

ゆったりと走っていると思われたのか787系に文句を言う。

「そんなこと言ったって速く走らないよ。」

「分かってるけどさぁ・・・。」

まぁ、九州の特急列車って言うのは大概早いからな。この辺りを走っているとき遅く感じるのは仕方のないことなのかもしれない。

 列車は水俣(みなまた)駅に停車。「九州新幹線早期開業」という横断幕と「公害!新幹線など税金の無駄!」という横断幕ある。それが仲良く並んでいる辺りかなり洒落が好きらしい。

 八代(やつしろ)駅で「つばめ」を下車。ここから再び肥薩線(ひさつせん)に乗り、吉松(よしまつ)を目指す。特急列車は「おおよど」宮崎(みやざき)行きである。時間になるとキハ185系が入線する。この車両がかなりの車両数で編成を組んでいるのはどこか違和感を覚える光景である。

八代(やつしろ)肥薩線(ひさつせん)吉都線(きっとせん)特急「おおよど」→都城(みやこのじょう)

 エンジンを唸らせ、列車は球磨川沿いを走る。眼下にはエメラルドグリーンの川面があり、飛び込みたい衝動に駆られる。まぁ、こんなのに飛び込んだら普通に死ぬなぁ・・・。ふと上を見上げると建設現場が目に入った。山の山腹にポッカリと空いた穴は何かのトンネルになるらしいが、あれが何になるのかはよく分からなかった。

 途中の人吉(ひとよし)駅で車内にいた人のうち60%以上の人が下車する。人吉(ひとよし)は九州でも有名な温泉街になるだろうし、それだけ人気のスポットなのだろう。ゆったりとした雰囲気に変わった「おおよど」は人吉(ひとよし)をそそくさと発つ。

「次は大畑(おこば)大畑(おこば)です。」

車掌のアナウンスがある。

 人吉(ひとよし)を出発し、列車は山の中へと分け入っていく。見える風景はとてもよいものに変わるが、床下からは先程よりもより強く唸るエンジンの音が聞こえる。それだけ鉄道にとって険しい山道を越えている最中なのだ。

 しばらくすると列車の右側上から線路が現れ、減速を開始する。左に山を登りながら分かれていく線路を横目に、ホームに停車した。反対側のホームでは真っ赤なキハ220形が止まっていた。

「・・・こんな駅に特急が止まるって言うのは不思議ねぇ・・・。」

萌がつぶやく。

 停車駅であるにもかかわらず誰も降りる気配がない。どんな駅でも少なからず乗降があるのだが・・・。

 誰も降りないまま「おおよど」は大畑(おこば)駅を発車。今まで進んできた方向とは逆向きに出発。しばらく走ってまた停車。再び進行方向を変えて駅を左下に見ながら通過していく。特急らしくない走り方をするものである。

 矢岳(やたけ)真幸(まさき)吉松(よしまつ)と通り吉都線(きっとせん)に入って、都城(みやこのじょう)に行く。

「うーん・・・。」

のびをしてから宮崎(みやざき)に行く「おおよど」を見送った。キハ185系はエンジンを唸らせ、宮崎(みやざき)へ向け走って行く。肥薩線(ひさつせん)吉都線(きっとせん)を走っていたときとは違う。彼のエンジンは重荷が外れたかのように軽やかに聞こえる。

「山越えお疲れ様。」

萌は出て行く列車に手を振りながら、労う。ここまで「おおよど」に乗っている人は少なかった。だいたい「にちりん」を使う人がほとんどなのだろう。ホームには大きいキャリーケースを引きずる音ももうしない。

 日はだんだんと西に傾き始めている。

枕崎(まくらざき)広尾(ひろお)間の最長往復切符往路都城(みやこのじょう)駅で途中下車


一口メモ

国鉄(こくてつ)787系

九州地方の特急車両。ロボットのような外見やグリーン個室を備えている。


国鉄(こくてつ)キハ185系気動車

四国・九州向けに開発されたディーゼルカー。路線バスにあるような設備を使うことでコストダウンを図る。なお、四国にこの車両はいない・・・なぜ・・・。


特急「つばめ」

博多(はかた)西鹿児島(にしかごしま)間の特急列車。鹿児島本線(かごしまほんせん)を走破する特急で九州地方の最新車両が優先的に投入される。


特急「おおよど」

博多(はかた)宮崎(みやざき)間を結ぶ特急列車。肥薩線(ひさつせん)を通り、宮崎(みやざき)を目指す。


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