7808T列車 天険矢岳越え
皇紀2745年2月24日(第2日目) 国鉄鹿児島本線川内駅。
東北にもある仙台と九州にある川内。読みは同じだが字面は似ても似つかない。そんな駅から今日はスタートする。
川内→鹿児島本線特急「つばめ」→八代
枕崎→広尾間の最長往復切符川内駅から使用再開
西鹿児島方面から鉄仮面と称して差し支えない787系が入線する。4両編成と9両編成に分かれている。これほどの長編成を組んで西鹿児島までなんかしているのか。この区間の特急利用の大きさを垣間見る。
車内に乗り込んでみると結構な人だ。川内→八代間で自由席を選んだが・・・。
「どうする。二人で座れるとは思うけど。」
「いや、二人で座れるんなら自由でいいでしょ。」
自由席に落ち着くか。
列車は海岸線を走る。昨日、肥薩線を通った。こちらの線路が開業するまで肥薩線が鹿児島本線として博多~鹿児島間の輸送を担っていた。その理由は郡部が「海上からの戦災を回避する」という名目でなったものだが、この風景を見ていたら真っ先に破壊されるものであろう・・・。勿論、それを心配せずにくらせるここはそんなこと関係ないのかもしれない。
「特急なのにあんまり速くないわね。」
ゆったりと走っていると思われたのか787系に文句を言う。
「そんなこと言ったって速く走らないよ。」
「分かってるけどさぁ・・・。」
まぁ、九州の特急列車って言うのは大概早いからな。この辺りを走っているとき遅く感じるのは仕方のないことなのかもしれない。
列車は水俣駅に停車。「九州新幹線早期開業」という横断幕と「公害!新幹線など税金の無駄!」という横断幕ある。それが仲良く並んでいる辺りかなり洒落が好きらしい。
八代駅で「つばめ」を下車。ここから再び肥薩線に乗り、吉松を目指す。特急列車は「おおよど」宮崎行きである。時間になるとキハ185系が入線する。この車両がかなりの車両数で編成を組んでいるのはどこか違和感を覚える光景である。
八代→肥薩線・吉都線特急「おおよど」→都城
エンジンを唸らせ、列車は球磨川沿いを走る。眼下にはエメラルドグリーンの川面があり、飛び込みたい衝動に駆られる。まぁ、こんなのに飛び込んだら普通に死ぬなぁ・・・。ふと上を見上げると建設現場が目に入った。山の山腹にポッカリと空いた穴は何かのトンネルになるらしいが、あれが何になるのかはよく分からなかった。
途中の人吉駅で車内にいた人のうち60%以上の人が下車する。人吉は九州でも有名な温泉街になるだろうし、それだけ人気のスポットなのだろう。ゆったりとした雰囲気に変わった「おおよど」は人吉をそそくさと発つ。
「次は大畑、大畑です。」
車掌のアナウンスがある。
人吉を出発し、列車は山の中へと分け入っていく。見える風景はとてもよいものに変わるが、床下からは先程よりもより強く唸るエンジンの音が聞こえる。それだけ鉄道にとって険しい山道を越えている最中なのだ。
しばらくすると列車の右側上から線路が現れ、減速を開始する。左に山を登りながら分かれていく線路を横目に、ホームに停車した。反対側のホームでは真っ赤なキハ220形が止まっていた。
「・・・こんな駅に特急が止まるって言うのは不思議ねぇ・・・。」
萌がつぶやく。
停車駅であるにもかかわらず誰も降りる気配がない。どんな駅でも少なからず乗降があるのだが・・・。
誰も降りないまま「おおよど」は大畑駅を発車。今まで進んできた方向とは逆向きに出発。しばらく走ってまた停車。再び進行方向を変えて駅を左下に見ながら通過していく。特急らしくない走り方をするものである。
矢岳、真幸、吉松と通り吉都線に入って、都城に行く。
「うーん・・・。」
のびをしてから宮崎に行く「おおよど」を見送った。キハ185系はエンジンを唸らせ、宮崎へ向け走って行く。肥薩線や吉都線を走っていたときとは違う。彼のエンジンは重荷が外れたかのように軽やかに聞こえる。
「山越えお疲れ様。」
萌は出て行く列車に手を振りながら、労う。ここまで「おおよど」に乗っている人は少なかった。だいたい「にちりん」を使う人がほとんどなのだろう。ホームには大きいキャリーケースを引きずる音ももうしない。
日はだんだんと西に傾き始めている。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路都城駅で途中下車
一口メモ
国鉄787系
九州地方の特急車両。ロボットのような外見やグリーン個室を備えている。
国鉄キハ185系気動車
四国・九州向けに開発されたディーゼルカー。路線バスにあるような設備を使うことでコストダウンを図る。なお、四国にこの車両はいない・・・なぜ・・・。
特急「つばめ」
博多~西鹿児島間の特急列車。鹿児島本線を走破する特急で九州地方の最新車両が優先的に投入される。
特急「おおよど」
博多~宮崎間を結ぶ特急列車。肥薩線を通り、宮崎を目指す。




