7806T列車 真・最長往復切符
皇紀2745年2月23日(第1日目) 国鉄指宿枕崎線枕崎駅。
旅館を出て枕崎駅へと向かう。改札に行くと駅員に最長往復切符を見せた。よく見慣れた切符になっているのか、枕崎の駅員は何をいうでもなくその切符に判子をいれた。入鋏という。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路使用開始
「何もなかったわね。」
萌が言う。
「見慣れてるんだろ。」
僕が答えた。
ホームには既にディーゼルカーが止まっている。キハ200系2両編成だ。真っ赤なディーゼルカーは南国風土の九州に似合う。また駅には横長のタンクを持った貨車5両が止まっている。「帝国陸軍軍令部」の文字が見えるため知覧の飛行場に石油を届けに行く便なのだろう。先頭にはDD13形がいる。今度は旅客用のホームに目を向ける。枕崎の駅名標はさび付いている。こういう部分はちゃんと整備しておいた方がいいと思うのだけど・・・。
「じゃ、広尾まで行きましょう。」
「そう簡単じゃないけどね。」
エンジンを唸らせ枕崎のホームを離れる。始まったのだ、最長往復切符の旅が。
枕崎→指宿枕崎線→西鹿児島
途中の駅に停まりながら客を拾っていく。2両編成のディーゼルカーの車内はだんだんと人が増えていく。西頴娃に着く頃には立ち客が出るくらいになった。まぁ、座る席って言うのはまだ残っているのだけど・・・。
「あの人さっきから座んないけど、これって例の。」
「ああ。あれだろ。既に人の座っているボックスは満席と見なすって奴・・・。」
地方の鉄道にはそういう風潮があるらしい。長いこと大阪の近くで住んでいたからそういう考え方はなかなかねぇ・・・。まぁ、ここら辺の人たちは長距離乗り通したりすることはないだろうからそれでも大丈夫だとは思うが。
開聞岳の北側を通り過ぎ、昨日通った日本最南端の駅西大山駅に停車。山川駅、指宿駅からはさらに人が乗り込む。さすがに2両だけではまかないきれないのではと思ったら、その前にさらに2両キハ200系が連結されるようだった。それにしても・・・。
「揺れるなぁ・・・。」
「心がピョンピョンするんだ。
「しません・・・。」
萌一体何言ってんだか・・・。急に心がピョンピョンするんだとか・・・。
枕崎から列車に乗り続けること3時間。西鹿児島駅に到着する。
「うん、久々の西鹿児島。」
「先にお昼ご飯にする。」
僕は萌に聞いた。
「この先って特急列車だっけ。」
「ああ。別に特急で行かなくてもいいよ。後続の普通列車でも大隅線に行く快速でもいいよ。」
「・・・じゃあ、「にちりん」で悠々行く。」
「あっ、次の「にちりん」次止まるの都城だ。」
「ちゃんと時刻表読みなよ。」
降りるしかなさそうだ。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路西鹿児島駅で途中下車
一口メモ
国鉄キハ200形気動車
九州地方で運用される2両編成のディーゼルカー。青、赤、黄色とカラフルである。この車両をベースにした1両のキハ220形もある。




