8045T列車 乗車券+特急料金+グリーン料金+個室料金=高い
皇紀2745年7月5日(第134日目) 国鉄山陽新幹線博多駅。
「うう・・・頭痛い・・・。」
頭をさすりながら、つぶやく。特急「フェニックス」のグリーン個室に乗ったはいいものの起きるときに頭をぶつけたのだ。ゴツッといい音がしたと思ったが、それで完全に目が覚めてしまった。
「ナガシィ、もうちょっと離れて寝てくれないから。」
「あれで離れて寝ろって無理だよ。床にでも寝なきゃ。」
「うん、だから床で寝てっていったじゃん。」
「だから、なんで僕は床・・・。」
さて、終わったことを言っても仕方がない。朝ご飯に豚骨ラーメンを食べて、新幹線に乗っていくことにしよう。
山陽新幹線のホームには2階建て車両を連結した100系新幹線が止まっている。方向幕には赤文字が珍しく見える。昔、赤い文字を使った方向幕の列車は東京~博多間を最速達で走る「ひかり号」にのみ与えられた称号だった。
(これも「のぞみ」の博多乗り入れで消えていくんだろうなぁ・・・。)
この運命だけは変えられまい。
さて、前回100系新幹線に乗ったときは浜松駅から2階のグリーン席に座った。今回は1階席に降りる。通路を見ると左側に扉が撞いている。この扉一つ一つが個室になっている。
「おお。これ凄い。」
先に部屋に入った萌の声が聞こえる。僕も続いて車内に入ったが、感想はそのくらいしか出てこない。
「本当に凄いなぁ・・・。」
夜を越えてきた787系のグリーンこそいつを何倍にもパワーアップしたようなボリュームだ。2人用だから、それほど広くは無いのに・・・。
「私奥いっていい。」
「いいよ。」
「わぁ、シートもふかふか。これなら何時間でも乗ってられそう。」
「・・・。」
確かに。これは何時間でも乗っていられる。
「やっぱり、高いお金払うだけの価値あるわね。こういうの乗れるってだけでも羨ましいなぁ・・・。」
昔の人が「ひかり」と言えば100系新幹線だった理由がなんとなく分かる。こんなものを見せつけられるわけだからなぁ。
「今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は「ひかり号」東京行きです。」
いつの間にか博多駅を発ったらしい。
博多→山陽新幹線・東海道新幹線「ひかり」→東京
それに続いて停車駅の案内も入る。小倉・広島・岡山・新神戸・新大阪・京都・名古屋・新横浜だけだ。「ひかり」全盛の時代だから速いなぁ・・・。それに新幹線であるにもかかわらずプライベートな空間が確保されている。ここに乗るには「人数分の運賃+人数分の特急料金-520円+人数分のグリーン料金+個室料金」ととても高いお金を払わないと乗ることは出来ないが、それだけの価値がある空間を提供してくれる。ちょっとやそっと騒いだぐらいなら問題ないだろう。
「ナガシィ。」
「ちょっと遊ぼう。」
「何して遊ぶつもりだよ。ていうか、寝させて。」
「あんまり「フェニックス」の中で寝れなかったの。」
「うん・・・。」
「じゃあ、ちょっと眠ってからね。」
ふかふかのシートが僕達を眠りに誘った。




