7969T列車 夜行王国
皇紀2745年5月22日(第90日目) 国鉄東海道本線富士駅。
夜の東海道はもう始まっていた。寝台特急と貨物列車が旅客列車に混じって運行される。電光掲示板にでる「長崎・佐世保」、「西鹿児島」、「南宮崎」、「博多」など遙か彼方の行き先は僕達からしてみれば新線そのものである。僕らの時代にあんな遠くまで行く列車はほぼ新幹線以外存在していないからだ。
「もうちょっとで寝台特急「さくら」が来るよ。」
と萌が教えてくれる。
しばらく駅で待っているとEF66形電気機関車にひかれた青色の客車がホームに入ってくる。富士から乗り込んでいく人間も少しいる。
「僕達もこれで長崎とか行ってみたいよねぇ。」
「長崎に入ってないけど、「はやぶさ」には乗ったでしょ。まぁ、分からなくもないけど。」
「でしょ。でも、浜松にいたらなかなか乗らないよねぇ。」
「九州特急に乗るには東京か九州にいないとね。」
「・・・そうねぇ・・・。」
「ピョーッ。」
汽笛一声列車は富士駅を出発する。ゆっくりと14両の青い客車がホームから離れていった。その後をすぐ追うように静岡行きの普通列車が出発していく。6両編成の車内は席が全部埋まるくらいだ。
「あれで帰ってもいいんじゃない。」
「いいだろ。夜の東海道はほとんど乗ったことないんだからさ。」
「だからって大垣夜行待たなくてもいいじゃない。」
「・・・その前の急行の方が良い。」
「でも、そっちも座席車だったよねぇ。」
「うん。」
「ただ、料金がかかるかかかんないかの違いかぁ・・・。」
萌はため息をつきながら、遠くを見た。
「料金払って乗っちゃおう。でないと体が持たない。」
「じゃあ、切符買ってくるからちょっと待ってて。」
僕は荷物をも得に預けて、一人みどりの窓口に行った。
枕崎→広尾間の最長往復切符復路富士駅で途中下車
みどりの窓口に行くと今日東京を発つ急行「長良」の切符を買い求める。夜遅い急行列車だが、名古屋へは翌朝の新幹線よりも速く着くためか利用者が多い。窓側は全部埋まっているとの返答があった。仕方がないので、通路側を2つ押さえた。
僕は「長良」の切符を持ってホームに戻った。
「どうだった。」
「通路側しか空いてなかったよ。それでも大丈夫でしょ。」
「ああ、仕方ないわよねぇ・・・。これなら自由席の方が良かったかな。」
「いやぁ、地獄絵図だからやめた方が良いと思うぞ。」
来た「長良」の自由席は通路にまで寝ている客のいる状態だったと言うことをここに添えておこう。
富士→東海道本線急行「長良」→浜松
枕崎→広尾間の最長往復切符復路掛川駅停車に伴い途中下車
掛川→浜松間の運賃浜松駅で下車時運賃精算の上乗車
新浜松→遠州鉄道西鹿島線→芝本
新浜松→芝本間の乗車券使用開始および使用終了




