7962T列車 新参者は黙っとれ
皇紀2745年5月20日(第88日目) 箱根登山鉄道鉄道線箱根湯本駅。
箱根湯本は鉄道における箱根の玄関と言える場所と僕は認識している。ここは普通鉄道と登山用の鉄道車両が入り乱れる。ここで見ると普段から大きいと思っている普通鉄道の車両がさらに大きく見える。
隣にはこぢんまりとしたオレンジ色の鉄道車両が止まっている。2両編成でいかにも古そうなもの。僕からしてみれば初めて乗る車両と言うことになる。箱根登山鉄道と言えばやはりイメージはこの車両だ。
箱根湯本~強羅間約9キロ。高低差約440メートルを登る。
片開きの小さいドアから車内に入る。結構圧迫感のある車内だが、座席に座ってみると案外大きいかもしれない。そういう錯覚に陥る。
箱根湯本→箱根登山鉄道鉄道線→強羅
箱根湯本→強羅間の乗車券使用開始
箱根湯本を出発すると列車はそろりそろりと坂に挑む。というのも箱根湯本~小涌谷間には最大勾配80‰の坂が存在している。日本においては国鉄最大勾配の碓氷峠をもしのぐものだ。ここに普通の鉄道と同じように挑むのだから運転が慎重になるのは当然だ。
「キキキィキ・・・。」
車輪とレールがすれる音が下から響く。
「古い電車なのに頑張って登ってるわね。」
「これ「変わって」って言われても買われないよなぁ・・・。」
ちょっと落語の一説を思い出していた。
「変わってなんて言わないから。」
その通りだな、はい。
80‰の坂にゆっくりゆっくり挑む。深い緑の中に顔を突っ込んでいく電車の前に現れる急カーブ。そこをギシギシと音を立ててゆっくり曲がる。だが、カーブの半径が狭く本来出している速度以上にスピードを出しているようにも見える。
「結構怖い走り方するなぁ・・・。」
「その分、ちゃんと脱線しないようになってるから。」
「いや、それは分かるんだけどねぇ。」
安全と目の前に展開される光景には必ずしも同じとは限らないのかもしれない。
その内登山鉄道の電車は線路の終わりにやって来る。しかし、これはスイッチバックだ。ここから列車の進行方向が変わる。この鉄道本当に人間の様々な知恵を生かして通したって事がよく分かる。だが、それ以上に。
「よくこんな所に鉄道通したよなぁ。」
「本当よねぇ。」
終点の強羅までそういう場所をよく通った。
この先はケーブルカーとロープウェイを乗継いで芦ノ湖まで行くことが出来る。




