7959T列車 揺れの被害者
皇紀2745年5月19日(第87日目) 国鉄中央新幹線東京駅。
ホテルを出て東京駅の地下に潜る。中央新幹線のホームはかなり遠い位置に出来上がっている。向こうの京葉線と同じくらい離れているんじゃないか。それぐらいの距離だ。中央新幹線と東京駅の各在来線との乗り換え標準時間は35分から40分。同じ駅の間でこれほどの差がある。よく同じ駅と言えるなぁと言う感想を持つのは京葉線の時と同じである。
東海道新幹線の改札口では「中央新幹線乗り場はあちらです」との表記と共に「550m」と数字が書かれている。遠いなぁ・・・。
そんな通路を通り抜け、階段を降りると改札口が現れる。その改札を通って通路と動く歩道、エスカレーターを乗継いでいくと開けた場所にでる。開業から2ヶ月。中央新幹線東京駅だ。
下からは重低音が聞こえ今まさに列車が入ってきたことを示した。
「新幹線が地下に来るって言うのも何か珍しいねぇ。」
「成田新幹線が出来たらこんな風になっていたのかもしれないなぁ・・・。」
と思ってみてみる。
チラッと駅の時刻表を見てみる。まだ列車本数はそんなに多くは無い。中央新幹線に投入された300系はまだ100系ほどの大所帯と言える勢力では無く、これから準じていき列車を増やしていく方向らしい。国鉄としては一気に列車本数を増やすのでは無く、ゆっくりと既成事実を積み上げていきたい方向らしい。
ホームに降りてみると中央新幹線用のホームがずらりと並んでいる。使っているのはまだ4つぐらいだが、列車がどんどん増えていくためかホームは6つ用意されている。まだ明かりが付いていないところを含めるとホームはまだ多いのかもしれない。
「東京の地下にまだこんなに広いところがあるなんてね・・・。」
「東京って色々と恐ろしい街だからなぁ・・・。」
ちょうど乗る列車が電光掲示板に表示される。「のぞみ803号 新大阪行き」。定期「のぞみ」とは違う、臨時「のぞみ」を選んだ。しかし、臨時とは名ばかりで「毎日運行」されている「臨時列車」となっている。その内この列車にも小さい数字が与えられるようになるのだろう。
「乗るか。」
東京→中央新幹線「のぞみ」→新大阪
東京都区内→大阪市内の乗車券往路東京駅から使用開始
東京駅を出発すると床下から独特のVVVFインバーターの音が響き始める。それは少しスピードが付いたところでドスを増す。これがなければ300系に乗っている気がしない。
「今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は「のぞみ号」新大阪行きです。」
聞き慣れた自動放送も流れる。しかし、トンネル区間であることと相まって聞こえづらい。
列車はだんだんスピードを上げていく。すると左右に大きな揺れを伴うようになる。「ちょっと壊れるんじゃないか」と思うくらいにゆらされるため、心配にさえなる。
「300系ってこんな揺れる。」
と萌がつぶやく。
「こんなに揺れたっけなぁ・・・。」
僕もこの揺れには戸惑っている。300系ってあまりにも乗り心地が悪いから、後で揺れを抑制するために車体間ダンパとかを追加装備する改造を受けている(それでも壊れるんじゃないかと思うくらいに揺れてたけど)。仮に今走っている中央新幹線の300系がその改造を受けていないのだとしたら・・・。この揺れはそのせいかもしれない。
「揺れない新幹線に慣れ親しみすぎたのかもね。」
「技術の進歩ってホント凄いわね・・・。」
列車はさらにスピードを上げる。
「あっ、俺のサンドイッチ・・・。」
どっかから悲痛な叫びも聞こえてきた。しかし、それは300系のけたたましい走行音によってほぼほぼかき消されていった。




