7958T列車 TSH
皇紀2745年5月18日(第86日目) 国鉄東海道新幹線東京駅。
東京駅には何度か来たことがある。だが、東京駅に泊まったことはない。今日はこの東京駅丸の内駅舎のホテル東京ステーションホテルに泊まる。
「これ、僕達泊まってよかったかな・・・。」
フロントからその雰囲気が漂っている。僕はどこか「北斗星」の食堂車を前にしたときと同じ感覚に駆られていた。本当にここに入っていいのだろうか。そう自分に問いかけたくなる。
「グズグズしてたらいつまで経っても入れないから。ほら、入ろ。」
萌が僕の手を引いてフロントに行く。「予約してた永島ですが。」と声をかけると「お待ちしておりました」と深々とお辞儀をしてくれる。そこまでされるとこっちが申し訳なく思えてくるなぁ。今ここに来て自分の服装が気になるところだ。
チェックインが終わるとホテルマンが僕達の荷物を持ってくれた。なんとフロントから部屋まで案内してくれるというのだ。至れり尽くせりなホテルだ・・・。
ホテルマンはホテル内の開設をしながら、僕達を部屋まで連れて行ってくれる。途中、東京駅の昔の写真や通路から東京駅が一望できたことなどを解説してくれた。
「何か凄いところ来ちゃったねぇ。」
「ホントだな。丁寧なのはいいけど、こっちが疲れるなぁ・・・。」
「フフ、ホント。やっぱ私達には身の丈に合ったビジネスホテルがいいのかなぁ。」
「ハハハ。違いない。」
それにしても天井が高い。それに何処を見渡しても綺麗だ。手入れがちゃんと行き届いている。掃除するのも大変だよなぁ・・・。
「ナガシィ。私達もったいない事しちゃったかなぁ。」
「そうかぁ・・・。」
「こんなホテル滅多に止まれないよ。ナガシィもそう思うでしょ。ここ1日で出ちゃうなんて、ホントもったいないよ。」
「じゃあ、どうしろと。次は決まってるんだよ。」
「うぅう。」
頬をちょっと膨らませて見せてくる。可愛いのだが、
「次の手配やってくれるなら、いいよ。」
「・・・。」
萌は少し考えてから、
「じゃあ、いいわ。」
と言って布団に突っ伏した。
「あっ、布団も柔らかい・・・。今すぐにでも寝れちゃいそう。」
「ほう・・・。」
「ナガシィここ来る。」
僕は無言のまま萌のいる布団に腰掛けた。確かに柔らかい。
「これいいなぁ。」
「でしょ。今日は一緒に寝る。ナガシィ。」
「・・・今日もだろ・・・。」