7796T列車 時間との勝負
皇紀2745年2月17日 国鉄羽越本線村上駅。
「いなほ」はそろり、そろりと村上駅に入る。あれから強風の中を縫うように走ってきている。遅れも通常の時間から1時間近く遅れている。
「酒田まで行ってくれるかな。」
「うーん・・・。」
ちらりと車内を見回す。結構な乗車率だ。秋田まで行かないにしても酒田まで行ってくれないと念じている。念じてもどうにもならないときはどうにもならないけどね。
酒田が近づいてくる頃にはさらに遅れが拡大し、もう少しで特急料金払い戻しの2時間になろうとしていた。しかし、ここまで来ると問題は別の所へ移っていく。乗継ぐ陸羽西線のことだ。
「萌、どう。」
「うん・・・。やっぱり列車ないや。」
「・・・。」
どうするかなぁ・・・。特急「いなほ」は酒田の手前余目に停車しない。陸羽西線はそこから分岐するため、僕たちの持っている切符も余目までになっている。しかし、余目を「稲穂」が通過することによって、僕たちは酒田まで行くことが出来る。もちろん、酒田の改札の外へお金を払わない限り出ることは出来ない。
そして、今余目を「いなほ」が通過する。
西大津→枕崎間の乗車券余目通過に伴い余目で途中下車
余目→酒田間特例適用の上便宜乗車
「酒田の外出る。」
「どうしようかなぁ・・・。」
何も決まっていない。
「ところで陸羽西線次何時。」
「15時10分。」
チラッと時計を見る。約2時間遅れと言うことで14時10分・・・。14時ちょうどの快速列車はもう行ってしまったため、乗ることは出来ない。
「1時間かぁ・・・。」
「1時間くらいならホームで待てるよね。」
「あの雪の中待つの。」
「ストーブぐらいあるでしょ。」
「・・・。」
変な期待をしないことにしよう。
酒田駅に「いなほ」が止まり、車内から多くの人がホームへと出た。ここから先秋田まで進むかどうか分からないと言われた以上、車内でも諦めムードを感じた。下側が青色に塗装されている車体は凍てついている。
「ここまで頑張ってくれてたんだね。」
萌が「いなほ」を労う。後ろを見てみたいなぁ・・・。恐らくそこには大量の雪が付着した485系の顔があるのだろう。それを見てから、陸羽西線の列車を待ち、新庄で陸羽東線鳴子温泉駅まで行く。まだまだこの先は長そうである。
酒田→陸羽西線→新庄
新庄→陸羽東線→鳴子温泉
余目→酒田間特例適用の上便宜乗車
西大津→枕崎間の乗車券余目停車に伴い使用再開
西大津→枕崎間の乗車券鳴子温泉駅で途中下車




