7948T列車 周りには配慮を
皇紀2745年5月14日(第82日目) 国鉄磐越東線郡山駅。
郡山から磐越東線のディーゼルカーに乗る。東北本線を外れると鉄道は途端に物静かになる。これが地方鉄道と幹線鉄道の大きな違いである。
郡山→磐越東線→神俣
枕崎→広尾間の最長往復切符復路郡山駅から使用再開
萌は僕とは反対側の座席に腰掛けた。隣が空いているので、僕がポンポンとそこをたたくと萌は首を横に振った。
「昨日いっぱい隣にいてあげたでしょうが。」
という。確かに、その通りなんだけどね。でもいいじゃない夫婦なんだし。そう言う意味も込めてもう一度ポンポンと座席をたたく。
「今日はこっち。隣に来たかったらナガシィが隣に来れば。まっ、ナガシィにその度量がないのは知ってるけど・・・。」
という。間違っていないだけに反論のしようもない・・・。萌の隣に行こうか行くまいか、そう考えている間に列車は途中下車する予定だった神俣駅に到着した。
枕崎→広尾間の最長往復切符復路神俣駅で途中下車
神俣駅で磐越東線から降り、僕達は歩いた。もう太陽の日差しは夏を思わせるくらい強くなっている。だが、朝晩の空気はまだ春か冬を感じさせるくらいで寒い。この時期は本当に服装に困る。どちらに合わせるべきかと考えると自ずと答えは出るが、太陽がそうはさせまいとごねているようにも感じる。
歩いている間に萌が僕の肩にコートを載せてくる。逆に僕も萌の肩にコートを載せてみる。
「これじゃあ、押しつけた意味ないじゃん。」
「お返し。」
「・・・フフフ。」
神俣から35分で鍾乳洞あぶくま洞に到着できる。少し前に龍泉洞を見たばかりだ。美しい地底湖を臨んだ後だとどうしても見劣りしてしまうかもしれない。そんな目新しいものがなくても十分楽しめる。
「萌、ここ狭くなってるよ。」
「あっ、服が壁に・・・。うーん、汚れちゃったかな・・・。」
別にぱっと見汚れてなさそうだけどなぁ・・・。そんな風に見ているとちょうどそこは胸の位置なのだ。萌が気付いたように腕で隠す。
「今、嫌らしい目で見てたでしょ。昨日散々見たでしょ、お風呂で。」
という声が鍾乳洞の中に響く。この会話聞いてる人間はどう思うんだろうなぁとも思うが。
「何口走ってるんだよ。」
と言う僕の声も響き渡る。
「あっ・・・言わせたのはナガシィでしょ。」
「・・・仮にそうだったとしても、言ったのは萌でしょ・・・。」
「・・・公衆の面前でよくも。」
「責任転嫁するな・・・。」
「やっぱりナガシィも男よねぇ。」
「何を今更。そう言う萌も女の子なんだな・・・。」
「何を今更。」
「あっ、後ろ詰まってる。」
「えっ、あっ。ごめんなさい。」
萌がどくと後ろから来ていた男性は僕達の横を通り抜けていく。「こいつら邪魔だなぁ」って目線を僕らに向けながら・・・ハハハ。
「ナガシィのせいよ。」
「僕達のせいだろ。僕だけのせいじゃないって。」
あぶくま洞からの帰りはさすがにタクシーだった。
神俣→磐越東線→小野新町
枕崎→広尾間の最長往復切符復路神俣駅から使用再開
小野新町→磐越東線→いわき
枕崎→広尾間の最長往復切符復路いわき駅で途中下車