7929T列車 ここに眠る人が増える前に
皇紀2745年5月4日(第72日目) 国鉄青函航路函館駅。
函館山ロープウェイ乗り場を素通りして、少しきつい坂を上る。函館護国神社を目指すように歩いて行くと「青函連絡線海難者殉難碑」の文字が見えてくる。
「・・・。」
慰霊碑と正対する。辺りは静まりかえっている。遠くから「ボーッ」ッと船の汽笛が聞こえてくる。
「こっちは今でも動いてるからね。これって向こうよりも多かったりするのかな。」
「多くないことを祈ろう。洞爺丸と堅田でさえ洒落じゃない人数死んでるんだし・・・。」
「それもそうね。」
僕達は殉難碑に手を合わせた。
「青函トンネル今掘ってるのよね。」
「掘ってる最中か、貫通したかのどっちかだな。少なくとも完成はしてないんだろうし。」
「早いところ完成したら、連絡船もなくなってもっと安全に北海道いけるようになるのにねぇ。」
「・・・。」
まぁ、それはそうだな。
「でも、さっき函館駅前で「青函トンネルは2本も掘って、私達の税金を食いつぶすものを作っている」って言ってる団体いたけどなぁ・・・。」
「あれは、新幹線には乗らない人たちだから関係ないでしょ。」
「そりゃあねぇ・・・。だけど、ああ言うのって知らない人を巻き込まないといけないからああ言ってるだけだとは思うけどね。こういうのしってていってるんなら、ただの間抜けだけど。」
「・・・。」
「まっ、ちょっと登山でもするか。萌。」
「はい、はい。」
殉難碑から函館山の山頂までは歩いて登頂することが出来る。所要時間は40分程度を出ているけど、日の入りまでにはまだ時間があるし1時間くらいかけて登ってもいいな。
山頂に登った頃、辺りは人でいっぱいになっていた。所々僕達はゴールデンウィークだってことを忘れていたのかもしれない。
「んっ。」
「凄い人だもん・・・。はぐれ無いように手繋いでもいいよね。」
「・・・勝手にしろ。」
「フフ。ありがとう。あっ、見てみて。あすこ。連絡船が入ってきてるよ。」
萌が指さす先に連絡船が何隻か見える。函館に入港しようとする連絡船はくるっと反転して、船尾から港に突っ込む。
「連絡船も忙しそうだな。」
「そうでしょうねぇ。飛行機乗れなかった人は皆こっちに流れてきてるんだろうし。」
「あっ、考えてみればそうか。」
「・・・どうする。深夜便にも乗る。そうすればちょっとは人少ないんじゃない。」
「どうだろうなぁ・・・。」
「・・・やっぱ無理かな。」
「いや、かけては見よう。」
函館山で日没を待つ。まもなく函館の地形と人類の営みが生み出す夜景が展開され始める。
「これ見終わったら何処行く。夜中だから、観光地とかはいれるところは軒並みはいれないと思うけど。」
「・・・仕方ないし、外から見るだけでもよくない。」
「じゃあ、ロープウェイ待つ時間でも使って考えるか。」
函館を発つ時間は深夜1時をまわる便。それを狙うことにした。
十字街→函館市交通局→函館駅前
十字街→函館駅前間の運賃函館駅前で下車時運賃精算の上乗車
函館→青函航路→青森
枕崎→広尾間の最長往復切符復路函館駅から使用再開