7793T列車 L特急は死語
皇紀2745年2月16日。国鉄北陸本線金沢駅。
「ゆぅとぴあ和倉」は金沢駅から七尾線に入線し、和倉温泉を目指す。一方、ここまで牽引してきた「雷鳥」はそのまま新潟を目指して走って行く。新幹線が東海道・山陽新幹線しかない高天原には長距離昼行特急が至る所に闊歩している。
「後面展望も時間経つの早いわね。」
「そうだな。」
「これから「白山」乗ることになるけど、どうする。」
「お昼食べる時間はあるでしょ。近江市場でも行こうよ。」
「いや、さすがにその時間無くない。」
「そう・・・。」
「近江市場はここからバスで行かないといけないの。勿論こんでるから、今から言ったら「白山」の時間に間に合わないよ。」
萌が言う。
「じゃあ、どうする。」
「じゃあって。」
萌は少し見回してあるあるものを見つけた。駅弁の立ち売りである。特急列車の窓は開かないものの、まだ鉄道での旅での車内販売などはその権威を保っている。やはり、利用者がそれだけ多いからだろうか。
「すいません。お弁当ください。」
萌は手短にお弁当を二つ買ってくる。
「「白山」の食堂車でもよかったんじゃない。」
「「白山」に食堂車って付いてるっけ。」
「付いてるんじゃない。」
「コラ、憶測でものを言わない。」
「・・・別に怒んなくても。」
「分かった。じゃあ、付いてなかったらボロクソに言ってあげる。・・・やんないから安心して。」
僕の顔色見てそう言ったな。分かってるよねぇ、本当に。
「いったん出るか。」
僕はそう言っていったん金沢駅の改札の外に出ることにした。まぁ、何をするって訳じゃないけど。きんつばを買ってお弁当と一緒に車内で食べるか・・・。それなら出る必要ないか。
西大津→枕崎間の乗車券金沢駅で途中下車
時計の針が12時を指すとき、僕たちは金沢駅へと戻ってきた。ホームにあがると今度はカラフルな489系が止まっている。白地に青いラインとピンク色のラインが入る。さっきの「雷鳥」が国鉄色なら、こちらは列車名を由来にする「白山色」だ。
開いた扉から「白山」に乗り込む。車内はグレードアップしているとは言え、いつもの485系と同じだ。
金沢→北陸本線・信越本線特急「白山」→高崎
金沢駅を出発すると鉄道唱歌のチャイムが流れる。それから上野までの停車駅を流していくわけだが、この列車がいかに長距離を走っているかが分かる。金沢出発は昼だが、上野到着は日が落ちてからだ。
北陸本線を日本海川沿いに進み、直江津からは信越本線に入る。信越本線は北陸新幹線の開業で細切れ状態になっているが、こちらでは北陸新幹線がないためそんな風にはなっていない。僕からするとこの区間を久々に国鉄車両で通ることになる。
長野を通り、軽井沢を通る。軽井沢ではEF63形電気機関車が489系の前に連結される。
「萌。EF63の連結見に行く。」
「行く。」
僕たちは席を立った。列車の中央部くらいから先頭まで行くのには時間がかかる。まぁ、それでもEF63の連結には間に合うだろう。実際にそれは当たっていた。僕たちが「白山」の先頭に来たときまだEF63形は連結される前だった。見たい人間が多いのか人盛りが出来ていた。
それにしてもEF63形のシールドビームが目に刺さる。萌が「489系の運転士さん眩しくないかな。」というのが聞こえたのかハイビームと思われたライトが減光される。
「ピョーッ。」
「フィーイン。」
EF63の汽笛に489系が汽笛で答える。帰還者の近くから降りた係員が緑の旗と赤の旗の絵を付き合わせる。連結の合図だ。こちらも撮影の準備をしよう。スマホを構えた。
ゆっくり、ゆっくりと近づき連結一歩手前で再び止まる。
「ガチャン。」
という音がすると電気機関車はライトを消す。連結完了だ。すぐに489系とEF63の間にホースがつながれる。
「早いところ自分の席に戻ろう。」
「ピョーッ。」
「フィーイン。」
列車は軽井沢駅を発車する。
国鉄489系
485系をベースに碓氷峠を通過するための協調運転装置を追加された車両。それ以外に485系との違いはない。
特急「白山」
上野~金沢間を高崎・長野・直江津経由で走る特急列車。




