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MAIN TRAFFIC7 -日本一の切符2745-  作者: 浜北の「ひかり」
枕崎→広尾(復路) 北海道
139/270

7918T列車 自虐セールス

皇紀2745年4月29日(第67日目) 国鉄(こくてつ)美幸線(びこうせん)美深(びふか)駅。

美深(びふか)美幸線(びこうせん)仁宇布(にうぷ)

美深(びふか)仁宇布(にうぷ)間の乗車券往路美深(びふか)駅より使用開始

 切り欠きホームに止まっているキハ54形はゆっくりと美深(びふか)駅にホームを離れていった。列車は宗谷本線(そうやほんせん)と別れ、左に舵を切っていく。あっという間に美深(びふか)の街は後ろに過ぎ去り、景色は原野に切り替わった。乗客は僕ら2人だけだ。

「誰も乗ってないね。」

「普段からこんな具合なんだろうなぁ・・・。」

「・・・。」

 美幸線(びこうせん)は3駅だけだ。東美深(ひがしびふか)辺渓(ぺんけ)、終点仁宇布(にうぷ)だ。この内仁宇布(にうぷ)以外の駅は臨時乗降場のような駅で車両1両も入らないホームが待っている。

「さっきから駅以外何にも無いような所止まってるよねぇ・・・。」

美幸線(びこうせん)の沿線は無人地帯って言われてるからなぁ・・・。」

「それは石勝線(せきしょうせん)も同じでしょう。」

石勝線(せきしょうせん)はまだ特急が通るから無人地帯でも訳が違う。」

「うっ・・・。」

鉄道において路線収支って言うものはそう言うところで明暗が分かれる。通過需要一つとっても、その路線存続を大きく左右する。ぱっと見たが見渡す限り山の中。こんなところを通る美幸線(びこうせん)白糠線(しらぬかせん)と一二を争う赤字線なのは最早仕方のないことだ。

 30分ほど恥じると前の景色が開け、列車は仁宇布(にうぷ)に止まった。鉄道からは数件の集落をみるだけである。ここが美幸線(びこうせん)現在の終点だ。

美深(びふか)仁宇布(にうぷ)間の乗車券往路仁宇布(にうぷ)駅到着に伴い使用終了

 僕達しか乗せてこなかった列車を降り、駅舎を通り抜ける。駅員はこの駅にも配置されているらしく改札口で僕達を迎えてくれた。

 外に出て、駅舎の方を振り返ってみる。

「日本一の赤字線美幸線(びこうせん)の終点仁宇布(にうぷ)にようこそ。」

横断幕にはバカデカい文字で書いてあった。

「言ってて虚しくならないのかな。」

「さぁ、ここまでしないと客が来ないからなぁ・・・。」

自虐もしないと乗りに来ない。まぁ、したところでここに来る人間が1日5往復美幸線(びこうせん)を利用してくれるとは限らないが・・・。

美幸線(びこうせん)って赤字なんだっけ。」

「あれをみて赤字じゃ無いと思う方が、無理があると思うぞ。」

美深(びふか)から乗った列車は乗客2人。つまり実質0人だ。黒字の方がおかしい。

「それもそうよねぇ・・・。」

「さて、僕達も戻ろうか。次の列車逃すとここで半日過ごさないといけなくなるし。」

「うん。」

 人がそんなに住んでいない集落でも列車の出発時刻が近づけば1人、2人と学生が来る。僕達もそれに混じって改札口を通り抜けようとする。

「ちょっと・・・。」

萌が僕の服を少し引っ張った。

「なぁに。」

「松山湿原って言うところこの近くにあるんだって。」

「また湿原かぁ・・・。」

北海道に来て何度湿原に行っているのだろうなぁ・・・。そして、そのポスターにも「日本一の赤字線美幸線(びこうせん)を使って秘境松山湿原へ行こう」と書いてある。ここでも自虐ネタを使うか・・・。

「ここから8キロかぁ・・・。行けないことはないけど・・・。まだ入山できそうにないねぇ。」

「秘境なんだし、今度はここ来てみようよ。美幸線(びこうせん)でさ。せっかくここまで推してるんだもん。」

「・・・松山湿原に行くのと、そこに行くために美幸線(びこうせん)が役に立つかは別問題だぞ。」

「うん・・・そうね。」

帰りの乗客も2桁には届かなかった。

仁宇布(にうぷ)美幸線(びこうせん)美深(びふか)

美深(びふか)仁宇布(にうぷ)間の乗車券復路使用開始および使用終了


一口メモ

国鉄(こくてつ)美幸線(びこうせん)

宗谷本線(そうやほんせん)美深(びふか)駅~美幸線(びこうせん)仁宇布(にうぷ)間を結ぶ鉄道線。将来的に興浜北線(こうひんほくせん)北見枝幸(きたみえさし)駅までつながり、北見枝幸(きたみえさし)を中心とするオホーツク海側の地域から道央圏を短絡する役割を担う計画で現在大絶賛延伸工事中。全線に渡り無人地帯が広がる。なお、市長が東京に出向いてこの路線の「赤字」を使って集客を図っている。


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