7912T列車 北へ延びろ
皇紀2745年4月26日(第64日目) 国鉄白糠線白糠駅。
日本には多くの鉄道ネットワークが敷かれている。それは時速200キロ以上で走る新幹線からゴトゴトのんびり走るローカル線まで幅広い。その中でも北海道は歴史の浅い鉄路が多い。
昨日着いた白糠駅にも札幌~帯広・釧路・根室を結ぶ一大幹線根室本線とローカル線が発着している。今日はまず、そちらに目をくれていこうと思う。その為に今日もホテルの朝食にはありつけない。その代わりに白糠線にありつくことになる。
「駅弁お願いします。」
僕達は駅弁を買って6時30分発の白糠線の列車に乗り込む。普通列車の筈だが、使われている車両は急行「摩周」でお世話になったキハ56形。この列車には車掌も乗り込んでいる。赤字路線の割にはちゃんと乗ってるんだな・・・。僕はそんな目で車掌の後ろ姿を見送った。
「一番前の車両しか乗れないんだって。」
「えっ、どうして。」
「回送扱いなんだってね。」
「・・・。」
白糠→白糠線→北進
白糠→北進間の乗車券使用開始
列車はゆっくりと白糠のホームを離れた。列車はすぐさま茶路川に沿い始める。少し川面が遠く感じる。白糠線は北海道の中でも新しい路線の一つ。トンネルや高架橋を多用して、直線的に駆け抜けている。
そんな路線で、使う車両は急行形と豪華な普通列車の車内にいる人は僕達を入れて6人。ぱっと見は全員鉄道ファンに見え、白糠線の乗客は実質0人・・・。
「・・・。」
「可哀想になるくらい人が乗ってないわね。」
「ホントだな・・・。」
列車は酪農地帯の真ん中にポツンと止まる。ちょっと窓から顔を出してみると僕らの乗っている車両だけホームに入っている。それ以外の車両は全部ホームの外だ。これは1両以外全部回送扱いになる事も裏付ける。
「成る程なぁ・・・。」
列車はこの後も酪農地帯のど真ん中を駆け抜けていく。ちょっとずつ人家が増えた頃思い出したように駅に止まるを繰り返す。50分くらい進んで、白糠線の終点北進駅に到着した。
白糠→北進間の乗車券使用終了
「おお。何も無い。」
辺りは枯れた木々があるだけだ。長い時間日陰になっているであろう場所にはまだ雪も残っている。しかし、それ以外は本当に何も無い。この辺りは集落もあるはずなのだが・・・。
「こんな所から足寄まで線路延ばす計画だったんでしょ。」
萌はそう言ったが、
「だったじゃないかもな・・・。」
僕はあるものを見つけた。「えっ、何で。」と萌が言うのでそっちを指さす。指の先には車止めがあるが、その先に線路が続いているのが分かる。
「もしかしたら、こっちは本当につながるかもしれないな・・・。」
「でも、呼子線とかの例もあるし。」
「あれは・・・ねぇ・・・。」
こっちは白糠線の線路がちゃんと足寄に伸びることを期待したい。
折り返しの列車は7時30分。それに合わせて北進駅にはどこからともなく学生が北。全員で2人・・・。
列車はここまで運んできた乗客全員と2人の学生を乗せて北進駅を後にした。その後、上茶路、縫別と駅に停まる度に学生を増やした。それらも白糠駅で全部吐き出し、根室本線に入ると身軽になったかのように足を速めた。
「こんな路線でも役に立ってるんだな・・・。」
「まぁ、どんなのでもね。」
萌はそう言いながら僕を見る。
「まるで僕が普段は何の役にも立ってないみたいじゃないか。」
「あっ、心外だった。」
「萌なぁ・・・。」
「ウソウソ。ちゃんと役に立ってるよ。いてくれるだけで。」
「・・・ふぅん。」
北進→白糠線・根室本線快速→釧路
北進→白糠間の乗車券使用開始
枕崎→広尾間の最長往復切符復路白糠駅から使用再開
枕崎→広尾間の最長往復切符復路釧路駅で途中下車
一口メモ
国鉄白糠線
根室本線白糠駅~白糠線北進間を結ぶ鉄道線。十勝二俣地区への鉄道アクセス、さらにその先足寄・士幌を経由し、新得につながる根室本線の短絡線として計画された路線。現在も計画は進行中ではあるが、帯広の経済圏を無視できないため、短絡線としての役割は果たせそうにない・・・。