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MAIN TRAFFIC7 -日本一の切符2745-  作者: 浜北の「ひかり」
枕崎→広尾(復路) 北海道
128/270

7907T列車 YOUはどうしてここに。

皇紀2745年4月23日(第61日目) 国鉄(こくてつ)根室本線(ねむろほんせん)新得(しんとく)駅。

 新得(しんとく)駅でお蕎麦をすすった。それから10分ほど歩いて町役場まで行った。レンタカーを借りるためだ。さすがに当日行っても予約は取れないとホームページに書いてあったので、あらかじめ電話しておいたのだ。乗る車はよくあるハイブリッド車だ。

「ナガシィ、運転する。」

「ヤダ。」

「はい、はい。」

萌が運転席に乗り込み、エンジンをかけた。ハイブリッドと言うこともありエンジン音は小さい。

 車で国道38号線を走らせる。北海道の道路はまず制限速度表示がない。これは制限速度が時速60キロであることを示している。決してそれ以上のスピードで走っていいというわけではない。

「道も広いし、ついつい飛ばし気味になっちゃうなぁ・・・。」

萌はそんなことを言いながら、車を走らせる。目的地は後で鉄道でも通る根室本線(ねむろほんせん)落合(おちあい)駅である。

 車で20分ほど行ったところで一旦国道38号線から外れた。道を逸れて少し奥に入っていくと場所が開け、青色の客車が姿を現した。

「本当にあるんだ・・・。」

僕はその姿に感動さえ覚えた。

 車を降りて、その青い客車に近づいてみる。窓から車内を覗くと細いベッドが並んでいた。ベッドの幅は52cm。昔はこれで寝ていたのか・・・。落ちやしないか心配になる。この客車は20系寝台客車。今日本中を闊歩する寝台特急の始祖であり、これを用いた「あさかぜ」を「走るホテル」と言わしめた車両だ。

「ナガシィ、どう。中分かる。」

「うん。分かるよ。こっちおいで。」

萌もその声に促されて窓に顔を付けて、中を覗く。

「へぇ。普通にしっかりしたベッドじゃない。出も、やっぱり狭いかな。これで寝泊まりはしたくないかも。」

と言う。

「今は14系、24系が全盛でいいですねぇ。」

「本当・・・。」

 一歩引いて、ホームを歩く。前には9600形蒸気機関車が連結されている。20系と9600形はこれまた現実には無かった組み合わせだ。

 僕達はここでしか見れない組み合わせをスマホに納めてから、車に乗り込み、狩勝峠越えにかかった。昔は鉄道車両もこの峠に挑んでいた。道路と鉄道は通るところが違うが、さながら同じ光景を目に出来る。助手席から狩勝峠の絶景を見てみたかったもののあまり天気がよろしくない。

「あんまり綺麗に見えないねぇ。」

「天気ばかりは仕方ないよ。」

「短気の子にでもなろうかしら。」

「は・・・。」

 右に左に身を捩りながら高度を上げる国道38号線。十勝から石狩にさしかかる辺りで狩り勝ち展望台という駐車スペースに車を置いた。展望台と言うだけあって天気がよければ、ここから絶景を見ることが出来るのであろう。

「残念ねぇ・・・。せっかくここまで来たのに。」

「天気ばかりはねぇ・・・。ちょっと日本三大車窓の一つはちゃんと見ておきたかったけどなぁ・・・。」

「うーん・・・。ちょっとこれはねぇ・・・。」

「いいことしか書かないのは教科書だけじゃないって事だな。」

「何納得してるのよ。」

「別に。納得はしてないって。」

「それよりもどうする。こっから落合(おちあい)に行ってもこのままだと思うわよ。」

「・・・もしかしたら石狩は天気がいいかもしれないけどね。」

「それでも、三大車窓は見れないままよ。」

「・・・うーん。それは・・・。」

「じゃんけんで決める。」

「萌の方が圧倒的有利じゃん・・・。」

「私はまだどっちを選択するとは言ってませんよーだ。」

「はいはい。」

結局、落合(おちあい)まで車を飛ばすこととなった。新得(しんとく)落合(おちあい)間は往復で4時間ほどかかった。根室本線(ねむろほんせん)の列車は運悪く特急を逃し、普通列車で狩勝峠を越えることとなった。しかし、根室本線(ねむろほんせん)新得(しんとく)からすぐにトンネルに入る。集落の消えた新内(にいない)周辺を通る必要がないから仕方のないことだが・・・。

新得(しんとく)根室本線(ねむろほんせん)富良野(ふらの)

枕崎(まくらざき)広尾(ひろお)間の最長往復切符復路富良野(ふらの)駅で途中下車


一口メモ

国鉄(こくてつ)旧根室本線(ねむろほんせん)新内(にいない)

落合(おちあい)新得(しんとく)間に儲けられていた駅。根室本線(ねむろほんせん)の新線切り替えに伴い廃止されている。駅周辺には集落があったものの、現在はそれらも消えている。駅跡には9600形蒸気機関車と20系客車3両が保存されている。


国鉄(こくてつ)20系客車

通称「走るホテル」。寝台特急の始祖である。3段寝台にエアコンを完備する最新型の車両として君臨したが、新型寝台客車14系、24系の台頭により現在は一線から退いた。数量が日本各地で保存されている。


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