7904T列車 愛の国
皇紀2745年4月22日(第60日目) 国鉄広尾線広尾駅。
今日から復路の旅をスタートする。広尾駅の駅舎ではディーゼルカーが止まっている。特急型気動車キハ261系だ。これは昨日見た帯広から特急に変化する列車。広尾線内は普通列車のため自由席に乗る分には特急料金がかからない。この列車の出発時間が近づいてくるとどこからともなく人が乗り込んでくる。
広尾→広尾線快速(帯広から特急)「スーパーとかち」→愛国
枕崎→広尾間の最長往復切符復路広尾駅から使用開始
「フィッフュー。」
エンジンを振るわせ、広尾駅を出発する。
十勝平野の真ん中を「ガタン、ゴトン」と軽快な音を立てて走る。エンジンも快調に回っているようでとても調子がいい。そして、駅に停まる度に学生が乗り込んでくる。車内はあっという間に身動きが取れないほど学生で埋まった。通学のために特急車両に乗れるって言うのはどこか羨ましく思うが、彼らにとっては普通の日常に過ぎない。うらやましがるほど彼らはなんとも思っていないだろう・・・。
更別、中札内と止まると学生の入れ替わりが発生する。しかし、通路から学生がいなくなることはない。
「ちょっとデッキいっとこうか。」
萌を誘い、デッキに行った。デッキも学生があふれている。扉の脇に座り込んで教科書を読んでいる子もいれば、スマホをいじっている子もいる。指定席車に行けば、やはり空いている。
「指定料金払っちゃう。」
萌の言葉に僕は頷いた。
車掌に指定料金を払った座席に腰掛け、そして愛国駅で降りた。
枕崎→広尾間の最長往復切符復路愛国駅で途中下車
復路最初の途中下車はやはりここだろう。帯広方面に向かう学生を満載して発車する「スーパーとかち」を見送る。駅員に最長往復切符を見せるとちょっとぎょっとされた。こんな切符でここに来る人間いないのだろう。
「何処にでもある北海道の駅って感じね。」
最初の感想を萌が代弁した。確かに、見た目は何処にでもある北海道の駅だ。この「愛国」駅の由来はこの地域を開拓した「愛国青年団」になる。北海道らしい地名の方だと思う。
駅舎の隣には幸福行きの硬券がモニュメントとして飾ってあった。
「これからここ行くんでしょ。」
萌が「幸福」を指さした。
「私達は別に行く必要ないんじゃない。」
と言う。
「いいだろ。これからも幸福にって事で。」
そう言うと萌は少し嬉しそうな顔をした。
「早いところ幸福行きの切符かっとこうか。次の列車まで時間あるようでないし。」
駅舎の中に入って窓口に行く。直接愛国→幸福行きの切符を注文するとさっきのモニュメントと同じ硬券が出てきた。結構買う人がいるのかな。
帯広から来る普通列車を愛国駅で待ち、それで幸福駅に向かうことにした。
愛国→広尾線→幸福
愛国→幸福行きの乗車券愛国駅から使用開始
一口メモ
国鉄広尾線愛国駅
広尾線起爆剤の一つ。愛国→幸福行きの乗車券は一大ブームを起こした。