7900T列車 逃げるが勝ち
皇紀2745年4月20日(第58日目) 国鉄石北本線遠軽駅。
瞰望岩から遠軽の街を見下ろす。鉄道線は遠軽駅に向かってY字状に集まってくる。こちらは石北本線で左にそれていくのが網走方面、右にそれていくのは旭川方面である。
「それにしてもここ柵とかないから怖いよねぇ。」
「ある意味、これが一番の危険防止かもしれないな。これで度胸試ししようっていうのは本物のバカだと思うし。」
瞰望岩は本当にただの岩である。高さは78メートルもあり、岩の淵には柵なんてものはない。あすこからの落下は死を意味する。生物の生存本能にかけた唯一の対抗手段と言えるかもしれない。
駅の方向を見てみると奥に向かって真っすぐ線路が伸びている。あれは名寄からここまで伸びてきた名寄本線だ。終点はここ遠軽である。当然、あの線路を進んでいけば少し前に立ち寄った中湧別駅がある。今まで何度もとおってきた道であるが、短絡できるのに短絡しないのはとても馬鹿げていると今でさえ感じている。
「そろそろ「オホーツク」が来るんじゃない。」
「ああ。それはもうちょっと大丈夫。」
名寄本線からキハ40形が走ってくる。それが3番線に入る。そろそろいかないとまずいかな。
「早いところ行っこうか。」
「えーっ。ねぇ、どっち。さっきはもうちょっと大丈夫って言ったのに。」
「ああ、さっきのなしで。」
「えー、何それ。まぁ、いいや。行くなら行こう。」
「アハハ・・・。ごめん。」
遠軽駅に行ったところで各地から特急列車が集まってくる。まず、網走方面から特急「オホーツク」、次に中湧別方面から特急「サロマ」が1番線に、その間に旭川方面から「サロマ」、「オホーツク」が2番線に入線する。僕たちは1番線に入った特急「オホーツク」に乗り込んだ。
「オホーツク」はここから「サロマ」と併結し、札幌を目指す。
遠軽→石北本線特急「オホーツク」→旭川
「オホーツク」は丸瀬布、白滝と停車して峠越えにかかる。最も遅く開業した札幌~網走間を結ぶ路線。キハ183系に積まれたエンジンもうなりを上げて、車体を押し上げていく。
外に目をやると辺りは雪に閉ざされていった。このあたりもまだ春は遠いらしい。
「こんなところに鉄道通そうって昔の人は良く思ったよね。」
「本当だよ。ましてここはねぇ・・・。」
「ところでナガシィ。」
「んっ・・・。」
「さっきの普通列車で止まったトンネルってまさかとは思うけど。」
これはいったいどういう逃げ方が最善だろうか・・・。だが、黙っていても萌はすぐに答えにたどり着くだろう。考えている時間は僕にはない・・・。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路旭川駅で途中下車




