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MAIN TRAFFIC7 -日本一の切符2745-  作者: 浜北の「ひかり」
枕崎→広尾(往路) 北海道
120/270

7899T列車 屍の折り重なる隧道

皇紀2745年4月20日(第58日目) 国鉄(こくてつ)石北本線(せきほくほんせん)北見(きたみ)駅。

北見(きたみ)石北本線(せきほくほんせん)遠軽(えんがる)

枕崎(まくらざき)広尾(ひろお)間の最長往復切符往路北見(きたみ)駅から使用再開

 高架の北見(きたみ)駅から普通列車に乗り込んだ。最長往復切符はこのまま旭川(あさひかわ)へと続いて行く。そちらに急ぎで行くのであれば普通列車の次にやってくる特急「オホーツク」の方が早い。普通列車を選択したのはあえてだ。

 乗客は朝早いということもあって少ない。だが、発車時間が近づいてくるとどこからともなく乗客が現れ、思い思いにボックスシートに腰かけていった。発車するころにはすべてのボックスシートが乗客で埋まるほどだった。昨日と同じで萌は僕の隣に来たが、相変わらず僕たちの前のシートに乗客は座らない。

 北見(きたみ)駅から出発して、留辺蘂(るべしべ)に到着。乗り込んだ学生のほとんどはここで降り、また学生が乗り込んできた。この人たちは遠軽(えんがる)にでも行くのかな。そんなことを思っていると学生に交じって大きい荷物を下げた人も乗り込んできた。

「あの人はどう考えても撮り鉄って感じじゃない。」

と萌が言う。

確かに、そういうオーラはあるな・・・。

 金華(かねはま)に停車してから、列車は峠越えにかかる。キハ40形は息を切らしながら坂道を上っているようだ。

「ピョーッ。」

しばらく進むと列車のスピードはさらに落ちた。そして、ついにトンネルにちょっと入ったところで止まってしまった。

「これってちょっとまずいんじゃない。」

確かに、これはちょっとまずい事態だ。もちろん、それはここが何にもない駅間ならの話だが・・・。運転士さんは今までいた運転台を離れ、後ろにある運転台に向かった。

「別に、まずいわけじゃなさそうだな。」

運転台から「ジリリ、キンコン、キンコン。」と音がしてから列車は逆方向に進み始める。

「あっ、スイッチバックか。」

「ああ。そうだな。」

ということは、さっき僕たちが止まったトンネルは・・・。

「列車行き違いのためしばらく停車いたします。発車までしばらくお待ちください。」

そういうアナウンスが車内に流れた。学生は思い思いにこの時間を過ごしている。そういえば、さっき乗り込んできた撮り鉄らしき人はここについてから姿が見えない。いったいどこに消えたというのだろう。ちょっと考えてみたら、その答えはすぐに分かった。

 さっきの人はここで降りたのだ。もちろん、この行為は特例と言えるだろう。

「ポッ。」

僕たちの眼下を札幌(さっぽろ)行きの「オホーツク」が行く。この辺りは特急列車でさえあまりスピードが出ていない。それだけきつい坂を上っているということなのだろう。

「おまたせいたしました。信号が青になり次第発車します。」

 信号が青になったのか、キハ40形はエンジンをふかした。さっき止まったトンネルに再び突入するが、今度は止まることはない。一気に登りにかかる。

「・・・。」

ちょっと寒気がする。

 トンネルを出るのに1分もかからない。トンネルを出ると寒気も消えた。

「どうかした。」

萌が僕の細かい変化に気付いたらしい。

「ああ。いや、なんでも。」

「そう・・・。どっか悪いなら言ってよね。」

「ハハハ。そうだな。」

 さっきのトンネルは心霊スポットとよく言われる常紋トンネルだ。さっき感じた寒気はこのトンネル建設のために亡くなった人々の怨念だろうか・・・。

(それを僕たち利用者に向けて何になる・・・。)

ここでなくなった人たちがどんな心境であの世へ旅立っていったのかは想像することさえできない。ただ、ここに眠っている人たちが安らかであることを願うだけだ。

枕崎(まくらざき)広尾(ひろお)間の最長往復切符往路遠軽(えんがる)駅で途中下車


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