7893T列車 普通は各駅には停まらない
皇紀2745年4月17日(第55日目) 国鉄名寄本線興部駅。
興部駅はこの地方で最も大きな駅である。鉄道線は名寄本線と稚内方面へ向かって延びようとしている興浜南線が延びている。3つあるホームには全てに列車が止まっており、エンジンをブルブル震わせていた。一番駅舎に近いホームには特急「スーパー紋別」札幌行きが止まっている。僕達は跨線橋を渡って、2番線に止まっている普通遠軽行きに乗り込んだ。
興部→名寄本線→中湧別
枕崎→広尾間の最長往復切符往路興部駅より使用再開
「アレッ。ナガシィ。」
萌が何かに気付いて僕を呼んだ。僕が萌の方を見ると萌はしきりに外を指さした。そちらを見ると緑色のディーゼルカーが止まっている。見た目からしてキハ22形のようだが・・・。
「何だろう。あれ。」
「さぁ。僕にも分かんない。」
ちょっとスマホをだして調べてみると「興部ライダーハウス」というのが出てきた。名寄本線のこの辺りには貨物は走っていない。使わない貨物ホームを小規模改造して、使わなくなったキハ22形を置いているのだそうだ。中はカーペッド敷きになっていて、自由に使えるらしい。
「あれ泊まってみるのもいいかもなぁ・・・。」
「ええ。私はヤダ。泊まるならナガシィだけにして。」
「・・・言うと思った。」
列車は興部の街を通り過ぎ原野へと足を踏み入れた。僕は前に行って列車の行く手を見ていた。すると集落が現れ、まもなく木の板が線路の脇を通り過ぎる。見るからにあれは駅だった。
(普通列車じゃ無かったっけ。)
と思ったが、北海道の普通列車はこれが普通だ。
二駅通過して列車は沙留に停車。この駅からは学生が乗り込んできた。空いていたボックス席はほぼ全て埋まった。萌は周りを見て僕の隣にやってきたが、僕達が座っている前のシートに腰掛ける学生はいなかった。渚滑、潮見町に止まってもそれは同じで、紋別で大半の学生が降りていった。
「また空いたね。」
そう言って、萌は僕の前の席に腰掛け直した。
名寄本線は海岸に沿って走る。オホーツク海には白波が立つ。しばらく走ると名寄本線は海岸線を離れた。左側に家屋が多くなり右側から線路が2本合流すると中湧別に到着する。
ここからは湧網線の列車に乗り換え、網走を目指す。
「網走行くだけなら、これに遠軽まで乗って、遠軽から特急「オホーツク」に乗り換えたほうが速いんだけどねぇ。」
「そう言うきっぷじゃ無いから仕方ないねぇ・・・。」
「この間どうする。」
「駅前で何かあるんじゃ無いかな。」
「中湧別だぞ・・・。」
「何も無い言ってたら、何も無いって。」
「・・・。」
枕崎→広尾間の最長往復切符往路中湧別駅で途中下車
結局、駅のすぐ近くにある温泉に入ることに落ち着いた。
一口メモ
国鉄名寄本線
宗谷本線名寄駅~石北本線遠軽駅間を興部・紋別・中湧別経由で結ぶ鉄道線。石北本線開業前は旭川~北見・網走間を結ぶ最重要路線として機能していた歴史を持つ。