7891T列車 エセ飛行場前?
皇紀2745年4月16日(第54日目) 国鉄天北線南稚内駅。
南稚内駅から南へは2本の鉄路が延びている。幌延周りの宗谷本線と浜頓別周りの天北線だ。昨日僕たちは幌延を回って上ってきた。最長往復切符はここから浜頓別を回って、名寄方面へと抜けていく。
南稚内のホームでは特急「スーパー宗谷」札幌行きが出て行ったすぐ後に僕達が乗る天北線経由のディーゼルカーが入線する。キハ54形3両が連なっており、先頭から「名寄行き(宗谷本線経由)」、「羽幌行き(羽幌線経由)」、「名寄行き(天北線経由)」となっている。一番後ろの車両に乗らないと僕たちが行きたい方向に列車が行ってくれないのは初見殺しもいいところだ。
南稚内→天北線・宗谷本線→名寄
枕崎→広尾間の最長往復切符往路南稚内から使用再開
声問を通り過ぎると天北線は山の中へと分け入る。天北線は宗谷岬の方向へ走っていくが、宗谷岬からかなり離れた場所を通って、鬼志別へと抜けていく。峠にさしかかるとキハ54はエンジンを唸らせた。スピードはそれほど高くは無く、息を切らしながら上っていると言った方がいい。それが無くなると「やっとだ」とどこからともなく聞こえてきた気分だ。
鬼志別、猿払に停車すると少ない乗客が降り、南稚内から乗っていた人はぼく達だけになった。
浅茅野を出発すると次の駅は飛行場前となっている。
「次の飛行場前が「飛行場が無いのに、飛行場前ってなってた駅」だよ。」
と教えた。
しかし、飛行場前に着いてみるとホームの向こう側は中がうかがえないように木で覆われていた。短い木のホームには「飛行場前」と書かれており、ここがそれなのは間違いないのだが・・・。はて、こんな風になっていたっけ。
「飛行場前ってこうなってるの。」
萌が僕に聞いてきたが、
「いや、僕の知ってる飛行場前とは違うきが・・・。」
列車はそんな疑問など知ったことかと言わんばかりに飛行場前を発った。
「あの駅って飛行場無いのよね。」
「うん・・・。」
「明らかに何かあると思うんだけど。」
「何かあったねぇ・・・。でも、何があるんだよ。」
「そりゃ、その名の通り飛行場でしょ。それ以外何があるの。」
「あんな何も無いところにか。」
かなり酷いとは思ったが、あの辺りの印象は本当にそんな感じだ。
「空港って結構街から離れてるの多いでしょ。静岡空港だって山の中よ。」
「・・・。」
言われてみれば・・・。
外を見ていると空を緑色の航空機が飛んでいた。動態に大きな日の丸が着いている。3機大きな飛行機が続いたかと思うと、それに付き従うように小さい飛行機が飛んでいった。窓を開けて後ろの方向を見るとさっきの木で覆われた空間の中へと飛行機は消えていった。
「本当に飛行場あるみたいだな。」
と僕はつぶやいた。出来れば、何もない飛行場前を見てみたかったと思ったのだ・・・。
一口メモ
国鉄天北線飛行場前駅
この飛行場前駅は飛行場前に無いことで有名である。しかし、こちらでは帝国陸軍浅茅野第一飛行場があり、北方防空の要となっている。




