7890T列車 リアル森のクマさん
留萌→羽幌線→幌延
枕崎→広尾間の最長往復切符往路羽幌駅から使用再開
近くのセイコーマートでお昼ご飯を買って戻るとちょうどいい時間であった。1両になったディーゼルカーはエンジンを吹かして、羽幌のホームをゆっくりと離れていった。沖合に浮かぶ2つの島を眺めながら、列車はひたすら北へと進んでいく。しかし、幸もずっと海を眺めているのはなんとも暇である。
ふとお肉のいいにおいが僕の鼻に届いた。
「あっ、萌。」
「いいじゃない。冷めたら美味しくないし。」
萌だけ先にホットシェフを食べていた。別に咎めるつもりはないのだが、こうも美味しいものを見せつけられると食べずにはいられなくなる。
「僕のもちょうだい。」
「はい、はい。ちょっと待ってて。」
そう言うと萌はビニール袋の中から赤色のケースをだした。テープを取ると5個唐揚げが顔を覗かせる。セイコーマートのホットシェフで売られているこういう食べ物はとても美味しい。北海道では必需品だ。
それを食べ終わると適度に眠気が襲ってきた。列車の揺れに身を任せて、眠りに就く。次に起きたときには列車は原野の中を快調に飛ばしていた。多少街が見えてくると列車は幌延に到着する。
幌延からは宗谷本線に乗り換える。ここまでひたすら普通列車でコトコト移動してきたが、ここから先は樺太方面への一大幹線として機能する路線となる。特急列車も走り、次の接続便はちょうど特急「スーパー宗谷」稚内行きである。
幌延→宗谷本線特急「スーパー宗谷」→豊富
枕崎→広尾間の最長往復切符往路豊富駅で途中下車
幌延と豊富の間の駅に特急は停車しない。いくら自由席に乗ったとは言え、次の駅で特急列車から下車するというのはなんとも馬鹿げた、そして贅沢な使い方だと思う。
豊富で下車したのはサロベツ原野に行くためだった。僕たちは駅前でレンタサイクルを借りて、7キロの道のりを行こうと思った。
「うー・・・。さすがに自転車で行くのは寒いねぇ・・・。」
「そうだなぁ・・・。これは失敗したかも・・・。」
豊富の街を過ぎれば、後は見渡す限り自然が広がっている。ただまっすぐ道が延びているだけだ。
「こういう時、クマさん出てきたらどうしよう。」
「・・・怖いこと言うなぁ・・・。」
「ナガシィ食べられたら、私は大丈夫かな。」
「それで平静でいられる萌の神経を疑いたいよ。」
「嘘、嘘。さすがにそんなことされたら私も精神どうにかなりそうだから。」
「それにしても、7キロ自転車で移動するってちょっと無謀だったんじゃない。」
「ちょっとで済めばいいけどねぇ・・・。」
今思ってみれば、もうちょっと時期をずらして訪れるべきだった。僕たちはただ、自然のど真ん中をサイクリングしただけに近かった。ただ、この先に広がっている広大な湿原に思いをはせている。その時間はとても楽しかったものだ。
豊富→宗谷本線→南稚内
枕崎→広尾間の最長往復切符往路南稚内駅で途中下車




