7889T列車 羽幌線
皇紀2745年4月15日(第53日目) 国鉄羽幌線留萌駅。
駅舎に最も近いホームでは4両編成の特急列車がエンジンを振るわせていた。これは札幌行きの特急「スーパーオロロン」。昨日、岩見沢からここまでお世話になった特急列車である。元は「るもい」と言う名前だったが、特急列車化に際し今の名前に変わったのだ。なお、「オロロン」とはウミガラスの鳴き声を由来とするものである。
「フィッフューッ。」
「ポーッ。」
汽笛一声、列車は煙を吹き出し深川へと向け走り出した。
「僕たちはあっちに行こうか。」
特急列車がはけてから、反対側のホームに止まる3両のディーゼルカーを指さした。羽幌線幌延行きだ。
留萌→羽幌線→幌延
枕崎→広尾間の最長往復切符往路留萌駅から使用再開
留萌を出発すると列車は崖に張り付くように走る。左側には日本海が広がっている。函館本線を走っていたときよりも狭い場所に線路を通しているのだ。
「景色はいいんだけどねぇ・・・。」
「うん・・・。」
「よくこんな所に鉄道通したわよねぇ。」
「北海道ってそう言うところだから。」
小平で留萌行きの普通列車とすれ違い、こちらはさらに北を目指す。古丹別を通るためにいったん海岸線から離れたかと思うと苫前で再び海岸線に戻ってくる。羽幌駅で乗客の多くが降車。3両のディーゼルカーもここで2両が切り離され1両だけになってしまった。
「長閑だねぇ。」
「そうだな・・・。」
僕たちの会話もそれほど多くない。まるで列車のペースに合わせているかのように・・・。
「この列車って何時出発だっけ。」
「うーん、何時だっけなぁ・・・。」
調べてみるとこの列車は30分もの間羽幌駅に停まっていることになっていた。なんとものんびりした列車だ。ふと外に目をやると石炭を満載した貨物列車が留萌方面へ向かっていった。この辺りも羽幌炭鉱があるからなぁ・・・。
「んっ。」
ちょうど貨物列車の向こうに垂れ幕が見えた。「祝 名羽線開業」と書かれているが、赤色の「祝」と「開業」の文字は色落ちしている。あんな状態になるまで横断幕を残しているとはよほど開業が嬉しかったのだろうか。
「嬉しかったんだろうねぇ・・・。」
僕がそうつぶやくと萌が反応する。それに僕は「あれ」と言いながら、垂れ幕を指さす。
「買えるときはあれにでも乗ろうよ。」
「えっ、ああ。乗る前提。」
「何。いいじゃない。別に。」
「まぁ、いいか。」
ちょっと考えてみるか。
「まだ20分くらい時間あるし、いったん降りてセイコーマートでお昼ご飯買っとかない。」
「あっ、いいねえ。じゃあ、行こう。」
財布、携帯、切符を持って羽幌駅の改札を出る。目線を上げると羽幌線・名羽線の時刻表が載っている。羽幌線は赤文字で示された特急もあるのに対し、名羽線は普通列車しか無い上にスカスカだ。今は10時になろうとしているが、次の列車は12時28分発曙行きになっている。
(朱鞠内行きは・・・。)
と思い、探してみるとそれは6時18分発、17時32分発の2本だけだ。
(まぁ、そう言うところ走ってるしなぁ・・・。)
この時僕は名羽線に底無しのつまらなさを感じた。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路羽幌駅で途中下車
一口メモ
国鉄名羽線
羽幌線羽幌駅~深名線朱鞠内駅を結ぶ鉄道線。この路線は市民団体の活動が大きく開業に影響した路線であり、それは羽幌駅に色あせるまで掲げられた垂れ幕からも垣間見ることが出来る。が、旅客収入は国鉄全路線屈指の赤字となっている。