7790T列車 始まりは迷鉄
皇紀2745年2月15日 遠州鉄道浜松本線新浜松駅。
やはり普通に枕崎に行くのは能が無い。と言うわけで僕たちは遠州鉄道のホームにいた。向こうでは遠鉄は縦に延びる鉄道線しか無かったものだから、横に延びる鉄道線があると言うだけでも新鮮である。さらにこちらに止まっているのは名鉄2200系。本当に無茶苦茶だなこれ・・・。
「ここから名鉄特急に乗れるって言うのも新鮮よね。」
「ああ。」
白い車体に赤いラインが入った車両は12両の長編成を組んでいる。内ミューチケットがなければ乗れない特別車は4両。追加料金無しで乗れる車両は軒並み混雑しており、ここから豊橋方面に行く需要は大きいらしい。
「ハァ、私もどこか旅行行きたいなぁ・・・。」
というのは梓だ。
「じゃあ、行こうか。ホテ・・・。イテッ」
鳥峨家がそう言いかけると梓は耳を思いっきり抓り、
「何でそう近場で済まそうとするかなぁ、しかもホテルって・・・。萌ちゃん、気を付けてね。」
「・・・。」
「・・・う・・・うん。気を付けて行ってくるよ。ナガシィと一緒にね。」
「ごめんね。わざわざ見送りに来て貰って。」
「良いの。気にしないで。友達がこれから長期の旅行にでるってなったら色々と心配だからね。」
梓が言う。
「あ・・・梓ちゃん・・・。そろそろ。」
「私をホテル以外に連れて行く気になった。」
意地悪そうな顔しながら、言うねぇ。
「ナガシィ、そろそろ。」
「あっ、うん。じゃあ、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
鳥峨家と梓に見送られて、僕たちは名鉄特急の中へと入った。
特別車も結構埋まっている。乗車率50%と言ったところか・・・。
「この列車は名鉄線直通快速特急岐阜方面名電大垣行きです。この列車の1号車、2号車、7号車、8号車はミューチケットの必要な特別車となっております。ご乗車の際はご注意ください。」
「切符はちゃんと持ってますよ。」
萌が車掌に答えた。
「発車いたします。ドアにご注意ください。」
新浜松→遠州鉄道浜松本線・名古屋鉄道名古屋本線「快速特急」→名電大垣
新浜松→名電大垣間の乗車券使用開始
そういいしばらくするとドアが閉まったのか列車はゆっくりを新浜松駅を後にした。列車左側には在来線と新幹線が見える。ちょうど100系新幹線が新大阪方面に向かっていった。
「端から見たら凄い光景だよね。」
萌に言葉に
「100系が浜松駅を元気よく通過する時代にこっちはいないからね・・・。」
と返した。これからこういう突っ込みは絶えないことを覚悟した方が良いのかもしれない。
列車は舘山寺温泉を通過し、浜名湖の北側をかすめるようにして通る。三ヶ日に停車するとまた多くの人が乗り込んでくる。特別車も盛況で70%ほどの乗車率になる。次の停車駅は名電豊橋駅。国鉄の豊橋駅からは離れているらしく、豊橋が近づいてもいつまで経っても国鉄線と一緒にならないことにはビックリする。
豊橋から先は国鉄とのデットヒート区間となる。名鉄2200系も時速120キロで快調に飛ばし、東海道本線の快速に負けまいと努力しているのが床下から伝わってくる。
頼もしい音に身を任せているとふと眠くなってきた・・・。
次に目が覚めたとき左側には多くの線路が入り乱れていた。名古屋が近いらしい。もう少しで名古屋と言うとき、名鉄線は高度を下げ地下へと入る。明るくなった先にあるのは現世では有名な名鉄名古屋駅である。
「狭そうだな・・・。」
明かりの前に繰り広げられる光景にどこか安心した。これだけ見たら迷鉄らしい・・・。
だが、次の名古屋鉄道が迷鉄たる所以となる枇杷島分岐点は大きく高度を上げ、新幹線も一またぎした。名鉄とは違う鉄道に乗っているようだ・・・。事実そうなんだろう。
名古屋を超えて30分ほどで名鉄岐阜駅に停車。大半がこの駅で下車し、終点の名電大垣に行く人間は少なかった。
新浜松→名電大垣間の乗車券使用終了
「んっ・・・。んー。新幹線の方が良かったかなぁ・・・。」
大垣の手前で萌が言う。
「それ、最初に言って・・・。」
一口メモ
名鉄特急
名古屋鉄道が運行する特急列車。名古屋圏を中心に幅広いネットワークを形成している他、運行するほぼ全列車に座席指定車「ミューシート」が連結されている。
名古屋鉄道2200系
中部国際空港向けに開発した2000系「ミュースカイ」をベースに製造した汎用特急向け車両。最高速度120km/hに対応する。最大12両編成を組み、名鉄特急の幅広いネットワークを支えている。




