7885T列車 山線経由
皇紀2745年4月13日(第51日目) 国鉄胆振線壮瞥駅。
壮瞥の漢字を見るととても一発で覚えられるものじゃないと感じる。北海道から千島、樺太にかけて使用されているものは大体が当て字。漢字からは想像も付かない読み方をするのは一般的とさえ言える。これはまだ想像できるだけマシなのかもしれない・・・。
この町は洞爺湖の近くにある。温泉地もあり観光の拠点ともなるところだ。実際、僕たちを含め観光客は少なからずいる。しかし、ほぼその地位は洞爺に譲っているらしい。ここに来る列車もそれを物語っているようだ。ホームには1両伊達紋別行きのディーゼルカーが止まっている。そちらからやって来るディーゼルカーを待っているのだろう。
壮瞥→胆振線→倶知安
枕崎→広尾間の最長往復切符往路壮瞥駅から使用再開
列車は壮瞥駅を出ると果樹園を眺めながら街を抜ける。ふと萌が持っているパンフレットが気になった。
「壮瞥って雪合戦の国際大会が開催されるんだって。今年も開催決定って書いてあるよ。」
「雪合戦の世界大会ねぇ・・・。」
まぁ、枕投げの公式大会もあるくらいだ。今更、たかが雪合戦とバカに出来るようなものでもあるまい。
山へ分け入り、再び山が開けたと思うと喜茂別に停車する。しかし、喜茂別の駅は街から少々離れた位置にある。
「鉄道って嫌われてるのかな。」
とのつぶやきに、
「得体の知れないものは人間怖いものさ。」
と語った。鉄道の敷設は政治家や地形だけに左右されただけじゃない。そこに住んでいる住民にも忌み嫌われれば通らないものだ。まぁ、ここは果たしてそうなのか。その答えを知る術はない。
雲に隠れた羊蹄山を眺めながら、列車は倶知安に停車。ここから函館本線に乗り換える。ちょうど接続がいい小樽行きの普通列車に乗り換える。
倶知安→函館本線→余市
小沢駅で岩内線と別れ、さらに普通列車は函館行きの特急「北海」を待つ。それにしても変ね連結をしているものだ。前方に789系という電車。後方にキハ261系という気動車が連なっている。
「変な連結やってるなぁ・・・。」
「あんなことって出来るの。」
「一応、キハ261系は電車並の性能持ってるからなぁ。重荷あの為にだけど。」
というか、789系が走ってるってことは通称山線と呼ばれる函館本線倶知安経由も電化されているんだな。
僕たちは途中の余市駅で降りた。
枕崎→広尾間の最長往復切符往路余市駅で途中下車
余市というのはウィスキーの産地でもある。辺りはリンゴなどの果樹園が広がっており、分かりやすい。せっかく余市で降りたことだし、ニッカウィスキーの蒸留場でも見ていこう。
「ナガシィはアルコールダメだし、リンゴジュースでいいよね。」
そう言ってから、萌がコップ1杯リンゴジュースを持ってくる。
「リンゴって言うと青森県のイメージだけどなぁ。」
そう言いながら、一口飲んでみる。
「あっ、美味しい。」
「気に入った。」
「これは何杯でも飲めるね。」
「あんまり飲み過ぎてトイレ行きたくならないようにね。」
「それは萌にも言えることでしょ。」
「フフ、私はいいの。」
そう言い、萌はワインをあおる。
「呑みすぎるなよ。」
「私は梓とは違うんです。」
「・・・。」
まぁ、そうだな。梓とはねぇ。
もう一度リンゴジュースのためだけによってみるか。そんな考えも頭をよぎった。
余市→函館本線→小樽
枕崎→広尾間の最長往復切符往路小樽駅で途中下車




