7780T列車 輪廻転生高天原
目を開けると一人の女性がのぞき込んでいた。どこの誰かは分からないものの、自分よりも落ち着いている雰囲気だ。着込んでいる服が洋装ではなく、和装っぽいところを除けば、ごく見慣れた日本人らしい。頭のはちまきには日の丸が入っていた。
「お目覚めだな。」
女性は言う。
「あっ・・・。」
「S10485652。お目覚めだ。移送先は浜松県・・・。」
自分が何か言うよりも先に、女はどこかに連絡を付ける。それが終わったかと思うとこちらを振り向き、目線を合わせてくる。
「よかったな、これからは高天原での人生を謳歌するといい。ここはいわば楽園みたいなもんだ。」
そう言ってくれた。
「お前をこれから帝都に送る。そっちで私の部下がいる。そっちで指示に従ってくれ給え。」
何が何だかよく分からないまま決まっていく。
「あっ、そうそう。行く前にこれの質問に答えてくれ。ここでは歳は取らない。ここで選択したものがここでのお前のあるべき姿になる。次に現世に戻るときまでそれは変えられないから、後悔のない選択をするんだな。」
「えっ。」
その神にはこう書かれていた。
「死亡年齢92歳。転生年齢 歳。」
歳を書き込めばいいのか。隣に書いてある死亡年齢って言うのが気になるけど・・・。転生が空欄だから、何歳に転生したいか選べばいいのか。選択肢はない。
「因みに君の配偶者は17歳だ。」
自分はそれに促されるように転生年齢の欄に17歳と書き込んだ。
「えっ、これって異世界転生もので、何かの悪と戦うとかそういう・・・。」
「何を馬鹿なこと言ってる。戦うのは私の仕事だ。あんたみたいな柔な人間連れてけんよ。とにかく、帝都中央からは急行に乗って浜松で降りてくれ。」
「・・・新幹線は・・・。」
「最近来る奴はおかしな事を聞くなぁ・・・。弾丸列車の切符なんざ、100年かかってもまわってこんよ。」
彼女が指を鳴らすと辺りは光に包まれた。次に目をかけたとき目の前にはレンガ造りの丸の内東京駅舎がそびえていた。




