回想
すみません、今回から朝にしようと思っていたのですが急遽兎さんを挟むことにしました。
ちょっとだけ大事な気がしないでもないです。
まどろっこしくて申し訳ないです...(;・ω・)
虫の声ひとつ聞こえない、静まり返った森の中。
ある小さな執務室に、彼ーーナビラビはいた。
「これで...25人目ですか」
嬉しそうにも、切なそうにもとれる声色。
彼は手帳のようなものを左手に、ペンを右手に持ち、五つ目となる正の字を書き終えた。
確かめるようにもう一度ページを眺めると 手帳を閉じ、近くのベッドに飛び込んで仰向けになる。
そして微睡んだ意識の中、目を閉じ胸に手を当て、もう何度目になるかも分からない回想を始めた。
ーーーーー
木も一本も生えていない見渡す限りの草原。
そこに彼はいた。
唯一あった木の切り株を中心に何をするでもなく走り回る。
しばらくすると飽きて放り出すものの、他にする事は思いつかない。
もう一度走ってみる。
今度は一目散になって、息が切れ切れになるまで走った。
でも、何も起きなかった。
そうしているうちに長い月日が経った。
芝生しか無かった草原にはいつの間にか大きな木が何本もそびえ立っていた。
ーそう、そこは、昔の迷いの森だった。
しかし 現在とは違い まだ木は低く、昼であれば陽の光を十分森の中に透過させている。
その中心、前と変わらず成長していない切り株の上。
彼は何故か服を来てそこに座っていた。
「なんだろう、これは...?」
何度もここで眠り、起きてきたのにこんな事は初めてだった。
首を傾げながら少し窮屈そうに身を縮める。
今までずっと体に触れていた外気が無くなったことで、急に感覚が鈍くなったように感じた。
...それにしても矢張りすることが無い。
変なことがあったとはいえここには誰もいないし、何も無い。
いつもと何も変わらない。
そうして彼がもはや日課となった切り株の周りのランニングをしようとした時だった。
...一人の少女が、森の入り口に立っていた。
少女は不安そうに辺りを見回しながらフラフラとした足取りで歩いていた。
「...っ」
どこか放っておけないその雰囲気に引かれ、近づいて声をかけようとする。
だが、こんな時どう言えばいいかなど、誰かと話したことすら無い彼には分からない、筈だった。
ーー不思議なことに、その時の彼には なにを言うべきかが手に取るように分かったのだ。
歓迎するように片手を曲げて腰に添え、
軽く頭を下げる。
自身を奮い立たたせるように少し笑うと、頭に浮かんだ言葉を発した。
「ようこそ、一人目の訪問者様。」
......そして理解する。
自分は彼女を導くために存在しているのだと。
ーーーーー
あれからどのくらい経っただろうか。
この森には定期的に新しい人が迷い込むようになった。
色んな人の、色んな行く末を見てきた。
手で空に大きな丸い円を描く。
さっきまで執務室の天井がうつっていたそこには、気持ち良さそうにすやすやと眠る少女の姿がある。
......彼女は、どんな結末を見せてくれるのだろうか。
心底楽しみで仕方がない、といった風にくすりと笑うと、
彼は 意識を手放した。
はい、ということで今度こそ少女の朝編です!
できれば今日明日には投稿しようと思います。
あと余談なのですが、ブクマと評価、本当にありがとうございますっっ!
まだなろうのシステムに疎く、よく分かっていないのですがめっちゃ嬉しいです!
...ということで!笑
また次回〜ノシ