65話 サマリ=ナマリ
〜サマリ=ナマリ視点〜
僕は今ハルバード侯爵家の応接室にいる……
僕は座りながらとても緊張していた……
対面の席には当主のハルバード侯爵様が居る……
(僕が一人でここに来るのは二度目だな……あの時は父上がハルバード侯爵に非礼を働いた事を謝りに来た時だったけ……)
緊張をほぐす為にそんな事を思い出しているとハルバード侯爵が口を開いた。
「さて……私が何故、君を今日、屋敷に招いたか説明しよう。」
その途端、僕は身構えた……何を言われるのだろうか……まさか何か非礼を働いたのだろうか……そんな事だったら僕はどうしたらいいんだ……
ハルバード侯爵は話を続ける。
「数カ月前、複数の貴族と結託し、我が領地に呪具使い達を送り込み、我が領地へ攻撃をしてきた。そして調べていく内に計画したのは君の父上……ナマリ男爵だと言う事が分かった。だから私は君の家、ナマリ家を潰そうと思うんだ」
その言葉を聞いた途端、頭の中が真っ白になった……
「父上が……ハルバード侯爵家に非礼を……?」
思わずそんな呟きが漏れてきてしまった……
「あぁ、前の非礼は小さい事だし、君の顔に免じて許したが……今回のはそうも行かない、領民すら巻き込んだ事だ、今回はしっかりと裏も取れている、処刑は逃れられないだろう」
父上が……処刑……?
あぁ……ついにこんな日が来たのか……父上は確かにろくでもない男だった……気に食わない庶民が入れば罪を捏ち上げ処刑し、綺麗な女の人が入れば裏で誘拐し、何度か告発しようとする度に全てもみ消され……世継ぎだからと口封じはされずに揉み消すだけで済んでいたが……ついに……
そんな事を考えているとハルバード侯爵は話を続けた
「今回君を呼んだのは、その前に君はナマリ家の名を捨て、縁を切ってもらおうと思ったからなんだ」
名を捨て……縁を……切る……?
「君はあんな父親から産まれたとは思えないくらい素直で良い子だ、父親の悪い所を何度も伝えようとする正義感もある、名を捨てない場合、恐らく君も処刑されるだろう……だから今、名を捨ててほしい、準備は私が進めてある。君はこの紙に名前を書き、血を垂らすだけでいい」
そう言い、ハルバード侯爵は一枚の紙をテーブルに出してきた。
その紙を見た途端、僕はハッとして
「……考えさせてください」
と言ってしまった……
ハルバード侯爵は
「分かった、時間はある、考えてくれ、ちなみに名を捨てた後は兵士団の仕事を紹介しようと思っている。」
と言われた。
僕は考えていた……
名を捨てるのは別にいい……僕から捨てたいくらいだったから……
母上は早くに死に、父上に育てられ……ずっと父上の悪い所を見て、父上みたくなりたくないと育ってきたが……家では告発しようとして以来、露骨に父が僕を避けるようになったけなぁ……
名を捨てても職はあるらしいが……働くか……一応屋敷で剣術は習っていたし……剣術スキルも持ってるけど……
そう言えば……父上の息のかかっていない使用人達はどうなるんだろうか……あの人達は僕に優しくしてくれていた……あの人達も捕まるのだろうか……もし無関係なあの人達が巻き込まれる場合……僕だけ逃げても良いのだろうか……
そう考え僕は口を開き
「……使用人とかは……どうなるのですか?」
とハルバード侯爵に質問をした
「……使用人か……今回の件に絡んでいる奴らは処刑されるだろうが、何も知らない人達は助けるつもりだよ」
ハルバード侯爵はそう言ってくれた……その言葉を聞いて僕は安心した。
そして僕は気合を入れる為、立ち上がり
「……分かりました、僕、サマリ=ナマリは今日からナマリの名を捨て、ただのサマリとして生きていきます。」
と言った。
今日から僕はただのサマリだ




