53話 罪悪感
俺が罪花を保護して数カ月たった。
罪花は一日目は暗かったが、すぐ元気になり、俺にこの世界について色々聞いてきた。
スキルの方も順調でサクヤ曰く後一週間程で覚えられるそうだ、俺は罪花に魔法を教える事にした。サクヤ曰く堕天使の魔力は暴走しやすいらしいから偽装魔法以外はあまり教えない方が良いと言っていたが……俺が魔法を使う度にチラチラ見てくるんだよな……
俺は罪花の部屋の前に行き声をかけながら扉をノックした。
「白夜だ、言いたい事があるから開けてくれ」
「白夜か、少し待っておれ」
と言う声が帰ってきた。その数分後、左目に眼帯をしたゴスロリ姿の罪花が扉を開けてくれた。
「白夜、我に何か用か?」
「あぁ、今日は罪花に魔法を教えようと思ってな」
「魔法!」
そう言うと罪花は目を輝かせた。
「あぁ、今まで教えてなかったが、そろそろ良いと思ってな、俺の部屋で教えるから部屋に来てくれ」
「分かった!」
そうして俺達は部屋に向かい、部屋に入った。
そして俺はベッドに座り、罪花は椅子に座った。
そして俺は話し始めた。
「さて、まずは……基礎の無魔法……ライトから教えるか……」
「うむ!」
「あー……まず、体の力を集めるイメージをして、“光れ ライト”って言ってくれ」
「分かったぞ……“光れ ライト”」
罪花は詠唱をしたが何も起きなかった。
「……何も起きぬぞ?」
「これを後」
『罪花様なら58回ですね』
「……58回続けてくれ、そしたら取得できる。」
「……地味……ね、本当に魔法が使える様になるの?」
罪花が俺に疑問をぶつけてきた。
「まぁ、スキルなんて基本地味だぞ?」
「白夜の持っている魔王魔法とかもか?」
「あーあれは……魔物の召喚以外は何と言うか……地味だな」
「魔物なんて召喚できるの……?」
「あぁ、知能のある魔物とかも召喚できるぞ、勇者の時だってそいつに任せて魔王役をして貰ったんだ」
「……勇者って転生者なのよね?」
「あぁ、そうだな」
「……その勇者はその魔王の魔物を倒せたの?」
「……あー……いや……」
「……我なら倒せてないのに英雄にされてるなんて、罪悪感で死にそうだわ、可哀想に……」
「そ、そうか……」
俺は黙ってしまった。
すると罪花が
「……魔法取得の練習をするわ」
と気まずかったのか俺にそう言った。
そう言われ俺は少し考えた。
(……サクヤ、勇者は今、どんな状況だ?)
『皆に英雄扱いされ、毎日かなり精神的に追い詰められ軽度の鬱状態ですね』
(……もしかして、俺のせいか?)
『……いえ、国が全てを隠し偽物の英雄を作り上げているせいです。白夜様は悪くありません……』
(……いや、俺も魔王を作った本人だ……悪い事したな……どうにか出来ないかな……)
俺は勇者に罪悪感を抱いた……
『……白夜様がそう思うのでしたら、罪花さんの保護を終えた後、ムーンとして勇者に対ジャックスキルの情報を売り、勇者を鍛えてジャックともう一度戦わせるのはどうでしょうか?ジャックに勝てば英雄として精神的に回復すると思います。勇者は王城に居ますが王城への侵入ルートも私は知っています。』
(……それがいいな……ありがとうサクヤ)
『いえ』
そんな事を考えていたら。
「白夜!手から白いのが出た!」
と罪花が言ってきた。
罪花の手を見ると白い光が出ていた。
「おっ、それがライトだ、おめでとう」
「やった!我は魔法を使える様になった!」
とテンションを高めて罪花が話しかけてくる。
「ああ、良かったな、何か使ってみたい魔法は無いか?教えるぞ」
「次は闇魔法を教えて!」
と食い気味に罪花が言ってきた。
「あ、あぁ……」
俺は罪花に闇魔法を教えながらその一日を終えた。