29話 王都三日目朝
俺は目を覚ました。
(今日はここの宿屋の飯を食べてみるか……)
昨日、一昨日と夕飯抜きと食料創造魔法で出したものしか食べてなかった……
俺は下の階に行き、宿屋ルーカスの強面オジサンのルーカスさんに朝食を頼み、お金を払い、食堂の椅子に座って待っていた。
こじんまりした宿屋だが……飯がうまく、サービスはいい(サクヤ曰く)と聞いてやってきたが……食べて無かったな……
(ルーカスさんが作るみたいだが……どうなんだろう?)
そう考え待っていると
「出来たぞ……」
とルーカスさんが食事を出してきた。
食事の献立は 小さめのステーキ 生の葉野菜のサラダ 黒パンだった……
(……この世界の生野菜って大丈夫なのか?)
『どの農家の人達も聖魔法“クリーン”を使って菌や寄生虫を殺しているので大丈夫です。……神様の一人がお供え物でお腹を壊して以来信託を使い全国に広めたみたいですよ……』
(神様でもお腹壊すのか……)
『えぇ……徹夜してて免疫が落ちていたそうです……』
サクヤと雑談しながら俺はご飯を食べてみた。
(ステーキはいい感じの柔らかさと塩加減若干ピリ辛く、サラダも美味しくとてもいい料理だった……あの強面のオジサンがこれを……)
『そうですよ……あの人、昔から母親に褒められた料理が好きでずっと練習して居るのですよ』
(そうか……顔は怖いが良い人なんだな)
俺は食事を食べ終わり、部屋に戻り椅子に座ってサクヤに話しかけた。
(美味かった……昨日も食べておけばよかった……)
『良かったですね。……昨日はスキル取得で部屋に籠りっぱなしでしたから食べれなくて残念でしたね……』
(あぁ……)
『それと、食事をしている間にマリド伯爵が王都に着き、勇者を衛兵に引き渡しました。勇者は今取り調べ、マリド伯爵は事情聴取をされています。』
(そうか……勇者君は処刑でもされるのかな?)
『されませんよ、勇者は特殊な職業で職業 勇者を見たら処刑ではなく王族や貴族に報告が行きます。そして一日程留置所に入れられた後……王族辺りが迎えに行くでしょう……勇者の現れは魔王の現れと言われているので……どんな勇者でも国は処刑するに出来ませんね……』
(……今って魔王って居るのか?)
『……居ませんね……あれは言わば神工勇者ですから……魔王と共に現れる勇者ではありませんので……』
(そうか……この情報を国に売ったらどう思う?)
『まず信用がないので信じてもらえませんね、それに、勇者はそうだとこの世界では信じられていますから、一人の情報屋が話しても……』
(そうか、ありがとう)
『いえ……あっ、今マリド伯爵が事情聴取を終えて貴族の挨拶に行くみたいです。誰に伝えるのか観察しますか?』
(あぁ、頼んだ……しっかり良い人に伝えてくれるといいんだが……)