17話 マリド伯爵2
消し忘れがあって恥ずかしい
私は……マスターの店から出た後
すぐ屋敷に向かい玄関を開けた
「お帰りなさいませ。今日はお早いお帰りですね」
使用人のメイドの一人が挨拶をしてくる。
「あぁ、少しリーシャと話したい事が出来てね、今からすぐに妻の部屋に行く。少し使うからマスターキーを取ってきてくれ」
「かしこまりました。」
そう言いメイドは自室の鍵箱から鍵を取ってきてくれた
「どうぞ。」
「あぁ、ありがとう」
はやる気持ちを抑え冷静を装い鍵を受け取り妻の部屋に向かい、妻の部屋の前に立ち
「……」
ガチャリと鍵を開け、思いきり扉を開けた……
そこには裸の妻リーシャと裸のリールがベッドの上で抱き合っていた……そして急に開いたドアの方向を見て口を開けて私の姿を見て、目を見開いていた
一瞬頭の中が真っ白になった……そしてそれは怒りの感情へと変わる。
「……これは……どう言う事かね?」
「なん……だって今日は酒場で……えっ……違っ……」
「……」
「私は襲われているの!助けて!アナタ!」
「っ!?奥様が誘ってきたのが始まりでしょう!何言ってるのですか!」
「いいえ!!それは違います!!私は襲われたのです!!悪いのはリールです!!」
と妻と……いや、妻だった者と男が言い争いを始めている。
その光景を目にしながら私は口を開いた
「……君とは離婚だ……商人の娘として家に嫁いできて五年間、今までご苦労だった、親には私から連絡しておこう。そしてリール君、お勤めご苦労であった、明日から君に暇をやろう。荷物をまとめて出ていってくれたまえ」
「「っ…!?」」
何か抗議する声が聞こえてくるが私はその声を聞かずに扉を閉め、自室に向かい、挨拶も聞かずにすぐ部屋に居る執事にリールと妻以外の屋敷に居る者達を集める様に頼んだ。
「……今日娘の病気を治せるかもしれない薬の情報を得た、このメモに書いてある材料と手順で作ってくれたまえ」
と使用人のまとめ役にメモを渡した。
使用人や部下達の歓喜の声が聞こえる。
それを無視して私は言葉を続けた
「そして、明日よりリーシャと離婚する。またリールは明日より暇を与える。だからあいつらを明日見送ってやれ、あいつらは私に隠れて三年もの間浮気をしていたらしい。今日部屋に行ってみたら裸の二人がベッドの上に居た。」
そう言うと歓喜の声からザワつきの声になった
「話は以上だ……集まってくれてありが「アナタ!!」」
話を終わらせようとすると扉を開けてリーシャが入ってきて大きな声で
「アナタ!!あれは誤解なの!!本当に愛してるのはアナタ!!」
と使用人達の目も気にせず喚き始めた
「……」
「……」
「本当なの!信じて!!私の事、愛してるでしょ!?」
「はぁ……本当に君は……許す訳無いだろう。あぁ、これで私は使用人にすら負けた男って他の貴族に笑われるんだな、君はマリドの名に泥を塗った、そんな君を許すとでも……?」
「っ……!?そんな」
「話は以上だ、解散しろ。リーシャ、君は荷造りしろ、明日手紙と共に親の元に送り返す。」
「そんな……そんな……だって……スケジュール把握してバレないって……」
そう言いながらリーシャは膝から崩れ落ちた。
妻と別れたはずなのに心がとてもスッキリした。情報屋ムーン、ありがとう。